見出し画像

【 Care’s World case 10 今、この瞬間を楽しみ、自立へのキッカケをつくる 〜 CILひかり 上妻 龍一さん 〜 / -後編- 】

前編では、脳神経内科病棟に入院されていた時の葛藤や

病院を飛び出し、一人暮らしを始めた経緯等について伺いました。

後編では、その変遷を経た今の心境ついて深掘りしていきます。

前編はこちら

Care’s Worldについてはこちらから。


CILひかり  HP

♢聞き手:山之内 せり奈( 看護師 / 結庵-むすびあん-)
♢話し手:上妻 龍一(CILひかり)
♢撮影・執筆・編集:上 泰寿( Care’s World / ケアの編集者 )
♢インタビュー場所:CILひかり

※ 今回の取材は、龍一さんのヘルパー(CILひかり所属)に同席していただき、インタビューの内容を通訳してもらいながら取材を行った。龍一さんは症状として、通常の声の大きさでの会話が難しいため、マイクと拡声器を装着してもらった。

自立した日々を楽しまないと

龍一:『ひかり』は重度な障害があっても「地域で生活をしたい」「新しいことに挑戦したい」と思っている方を支援する団体です。たとえば、何気ないことかもしれないけど「ちょっとお出かけをしたい」「外食や買い物に行きたい」と思った時に、ヘルパーさんに依頼してそのサポートをしたりとか。

メンバーの中には僕のような当事者も所属しているので「叶えたいことに対して、どう実現できるか?」を当事者目線で過去の経験や知見を活かしながら相談業務にあたっています。

世の中では健常者・障害者と区分けされて呼ばれていると思いますが、団体の中では健常者スタッフ・当事者スタッフ(障害者=当事者)と呼び合っています。通常の事業所との違いでいえば、当事者が「“やりたい”と思ったタイミングで、想いを叶えられるようにサポートすること」かなと。

龍一さんのお仕事の様子 パソコン作業
専用機器ワンキーマウスを使用し、パソコン作業を進める

龍一:僕自身もやりたいことがたくさんあります。一人暮らしを始めて「旅行をしたい」と思ったのですが、当事者である僕らは金銭面で負担が大きいという壁に当たりました。同行してくれるヘルパーさんの旅費も発生するからです。そういうことを考えていたら、実現に向けた一歩を踏み出せなくて…。

でも、最近思うようになったのが「楽しまないと、もったいない」ということ。当事者の相談業務にあたっていると「自立したい」と思っている人たちが興味を持ってくれたり「自立って、楽しそうだな」と感じてもらうには、まず自立した僕らがそういうふうに感じていないといけないと思うんです。

一人だとできないことも多いですが、その中でも旅行にしろ、他のことにしろ、工夫することで実現できることがあると思います。まだまだ自立してから経験が浅いので、勉強中の日々です。

事務所にはひかりの活動の写真が10年以上にわたって貼られている
ひかり 事務所

選択肢を知ってもらい、次の一歩を

龍一:僕のように気管切開をして呼吸器を装着しながら、地域で一人暮らししている人はあまりいないと思います。似たような症状で自立を考えていても「地域で一人暮らしなんて…」と思い、一歩踏み出せないケースも多いはずです。

だからこそ、一人暮らしをしながら、誰かのサポートを受けつつ仕事もする人の存在を知ってほしい。そうすることで、少しでも自立の可能性を見出してほしいから。コロナ渦の名残が残っているからか、積極的に当事者に会いに病院へ行くのは難しいのですが、どうアプローチして知ってもらうかを模索している段階です。

僕自身も『ひかり』の先輩たちが病院を出入りする様子を見て「こういうことができるんだ!」と選択肢を知り、一歩を踏み出せました。今年は講演会にお声かけいただき、人前で自分のことを話す機会があります。とても緊張していますが、大役をこなせるように頑張りたいです。

龍一:実は、人見知りで自分から積極的に人の話を聴くことが苦手な部分があります。力不足も痛感しているので、相談者のお役に立てているか自信がありません。

それでも、相談者が安心してお話ができるように、しっかり聴くことは心がけています。そうすることで「少しでも楽になってもらえたら」「日々の楽しみを見出してほしい」と思っています。

以前の僕は人に嫌われたくない気持ちが根底にあり、我慢することが多かったです。その中で、いろんな人に話を聴いてもらい、選択肢を教えてもらったから今があります。先輩や仲間たちから教えてもらっている段階ですが、僕もそういうキッカケをつくれるようにしていきたいです。

Care’s World メンバー・山之内が以前勤めていた病院に龍一さんが入院されていたそうで、付き合いは長いのだとか

(終わり)

(前編はこちら

●基本情報
屋号: CILひかり
URL: https://cil-hikari.com

●編集後記
私が新人の頃に配属された病棟でりゅうちゃんと出会いました。りゅうちゃんは聞き上手で、スタッフの愚痴やプライベートの話をたくさん聞いてくれていました。私もいっぱいお世話になったな~。今回のインタビューでお話を伺い、りゅうちゃんのお仕事は入院している時と一緒だなとほっこり♬聞き上手なりゅうちゃんに救われる当事者、ご家族の方は多いんだろうな。りゅうちゃんの『生きている!』という言葉も響きました。楽しいことも、悩むこともあるけど、人間らしく生きている証。私も大切に日々を生きようと思いました。りゅうちゃん、またゆっくりお話しようね。ありがとう☆(山之内)

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
【お問合せ先】
ご質問・ご要望は下記へお問い合わせください
Care's World事務局
E-mail: cares.world1518@gmail.com [玉井・山之内・上]

情報が流れていくSNSではなく、
「届けたい人にちゃんと届く」ために
メルマガ形式で記事をお届けしています。
メルマガ登録ご希望の方はこちらから

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?