【 Care’s World case 10 今、この瞬間を楽しみ、自立へのキッカケをつくる 〜 CILひかり 上妻 龍一さん 〜 / -後編- 】
前編では、脳神経内科病棟に入院されていた時の葛藤や
病院を飛び出し、一人暮らしを始めた経緯等について伺いました。
後編では、その変遷を経た今の心境ついて深掘りしていきます。
前編はこちら。
Care’s Worldについてはこちらから。
自立した日々を楽しまないと
龍一:『ひかり』は重度な障害があっても「地域で生活をしたい」「新しいことに挑戦したい」と思っている方を支援する団体です。たとえば、何気ないことかもしれないけど「ちょっとお出かけをしたい」「外食や買い物に行きたい」と思った時に、ヘルパーさんに依頼してそのサポートをしたりとか。
メンバーの中には僕のような当事者も所属しているので「叶えたいことに対して、どう実現できるか?」を当事者目線で過去の経験や知見を活かしながら相談業務にあたっています。
世の中では健常者・障害者と区分けされて呼ばれていると思いますが、団体の中では健常者スタッフ・当事者スタッフ(障害者=当事者)と呼び合っています。通常の事業所との違いでいえば、当事者が「“やりたい”と思ったタイミングで、想いを叶えられるようにサポートすること」かなと。
龍一:僕自身もやりたいことがたくさんあります。一人暮らしを始めて「旅行をしたい」と思ったのですが、当事者である僕らは金銭面で負担が大きいという壁に当たりました。同行してくれるヘルパーさんの旅費も発生するからです。そういうことを考えていたら、実現に向けた一歩を踏み出せなくて…。
でも、最近思うようになったのが「楽しまないと、もったいない」ということ。当事者の相談業務にあたっていると「自立したい」と思っている人たちが興味を持ってくれたり「自立って、楽しそうだな」と感じてもらうには、まず自立した僕らがそういうふうに感じていないといけないと思うんです。
一人だとできないことも多いですが、その中でも旅行にしろ、他のことにしろ、工夫することで実現できることがあると思います。まだまだ自立してから経験が浅いので、勉強中の日々です。
選択肢を知ってもらい、次の一歩を
龍一:僕のように気管切開をして呼吸器を装着しながら、地域で一人暮らししている人はあまりいないと思います。似たような症状で自立を考えていても「地域で一人暮らしなんて…」と思い、一歩踏み出せないケースも多いはずです。
だからこそ、一人暮らしをしながら、誰かのサポートを受けつつ仕事もする人の存在を知ってほしい。そうすることで、少しでも自立の可能性を見出してほしいから。コロナ渦の名残が残っているからか、積極的に当事者に会いに病院へ行くのは難しいのですが、どうアプローチして知ってもらうかを模索している段階です。
僕自身も『ひかり』の先輩たちが病院を出入りする様子を見て「こういうことができるんだ!」と選択肢を知り、一歩を踏み出せました。今年は講演会にお声かけいただき、人前で自分のことを話す機会があります。とても緊張していますが、大役をこなせるように頑張りたいです。
龍一:実は、人見知りで自分から積極的に人の話を聴くことが苦手な部分があります。力不足も痛感しているので、相談者のお役に立てているか自信がありません。
それでも、相談者が安心してお話ができるように、しっかり聴くことは心がけています。そうすることで「少しでも楽になってもらえたら」「日々の楽しみを見出してほしい」と思っています。
以前の僕は人に嫌われたくない気持ちが根底にあり、我慢することが多かったです。その中で、いろんな人に話を聴いてもらい、選択肢を教えてもらったから今があります。先輩や仲間たちから教えてもらっている段階ですが、僕もそういうキッカケをつくれるようにしていきたいです。
(終わり)
(前編はこちら)
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