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保険♯25: 「通勤労災」

今回は「通勤労災」について見ていきましょう。

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「通勤労災(通勤災害)」: 労働者が通勤中に被った負傷、疾病、障害、または死亡のことを指します。これは労働者災害補償保険法(労災保険法)に基づいており、業務中の災害(業務災害)と並んで、労働者を保護するための重要な制度です。

「通勤」の定義

労災保険法における「通勤」とは、以下の移動を合理的な経路および方法で行うことを指します。

  1. 住居と就業場所との間の往復: 自宅から会社、または会社から自宅への通常の往復。

  2. 単身赴任先住居と帰省先住居との間の移動: 単身赴任者が自宅と赴任先の間を移動する場合。

  3. 就業場所から他の就業場所への移動: 複数の就業場所を持つ労働者が、ある就業場所から別の就業場所へ移動する場合。

ここで重要なのは、「合理的な経路および方法」という点です。通常利用する経路や手段であれば、多少の迂回は認められますが、著しく遠回りしたり、通勤とは関係のない目的で寄り道した場合は、「通勤」とはみなされないことがあります。

「通勤」とみなされない場合

原則として、通勤経路を逸脱したり、中断した場合は、その後の移動は「通勤」とはみなされません。ただし、以下のような日常生活上必要な行為をやむを得ない事由により最小限度の範囲で行う場合は、例外的に「通勤」とみなされます。

  • 日用品の購入

  • 病院への通院

  • 食事など

例えば、帰宅途中に夕食をとるために飲食店に立ち寄り、その後事故に遭った場合でも、通常の経路であれば通勤災害として認められる可能性があります。しかし、食事後に映画館に寄ってから帰宅途中に事故に遭った場合は、映画鑑賞は日常生活上必要な行為とはみなされないため、通勤災害とは認められない可能性が高いです。

通勤災害の種類

通勤中に起こりうる災害には、以下のようなものがあります。

  • 交通事故(自動車、バイク、自転車、歩行中など)

  • 公共交通機関の事故(電車、バスなど)

  • 転倒、転落事故

  • その他、通勤に付随して発生した事故

通勤災害と認められた場合

通勤災害と認められた場合、労災保険から各種の給付を受けることができます。主な給付には以下のようなものがあります。

  • 療養(補償)給付: 治療費、入院費などの給付。

  • 休業(補償)給付: 休業中の賃金の一部を補償する給付。

  • 障害(補償)給付: 後遺障害が残った場合に支給される給付。

  • 遺族(補償)給付: 死亡した場合に遺族に支給される給付。

  • 葬祭料(葬祭給付): 葬儀費用を支給する給付。

通勤災害の手続き

通勤災害が発生した場合、以下の手順で手続きを行います。

  1. 事業主に報告: まずは勤務先に災害の状況を報告します。

  2. 労働基準監督署に申請: 必要な書類を揃えて、事業所の所在地を管轄する労働基準監督署に労災保険給付の申請を行います。

具体的な手続きや必要書類については、労働基準監督署に問い合わせるか、厚生労働省のウェブサイトなどで確認することをおすすめします。

まとめ

通勤労災は、労働者の生活と安全を守るための重要な制度です。通勤中の事故や災害に遭った場合は、泣き寝入りせずに、労災保険の給付を受けることを検討しましょう。不明な点があれば、労働基準監督署や弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。

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