ケアファインダーが提案する、子どもを守るための新たな情報共有のあり方
シッターが子どもへのわいせつ容疑で逮捕された事件を受け、ケアファインダーは、行政機関と積極的な意見交換を行っています。ベビーシッターマッチングサイトに関するガイドラインや規制、マッチングサイト運営者の責任や安全予防策はもちろん、業界全体で同様の事件を防ぐために行うべきことなど、私たちが議論しなければならない課題は多くあると言えるでしょう。
しかしながら、マッチングサイトを運営する個々の企業や保育事業社を超えた取り組みについて議論する必要性も感じています。
現在一つの解決策として多くの人々が協議しているのが、日本の事業者らが簡単にシッターの犯罪歴の調査ができる「犯罪歴データベース」の公開です。私たちも、アメリカやイギリス、オーストラリアなどで実際に利用されているような犯罪歴のチェックシステムは、日本でも必要だと考えています。しかし、行政機関との議論や調査を続ける中で、同様のシステムを日本で構築するためには莫大な時間がかかるほか、異なる行政機関に働きかけ、抜本的な法改正などが必要なことが判明してきました。
シッターをめぐる現在の状況
現在、個人で活動するすべてのベビーシッターと保育士は、都道府県に届出を提出し、登録する必要があります。これは厚生労働省が所管する児童福祉法により定められています。保育士がなんらかの事件を起こした場合、基本的にはその保育士が所在する都道府県に報告がいく仕組みとなっています。しかし保育士が転居した場合などでは、転居先の都道府県で再度保育士として仕事を続けられる可能性があります。私たちの懸念点は、都道府県間でスムーズで十分な情報共有が行われているかという点です。
ベビーシッターの場合、居住地の都道府県に認可外保育施設の設置者として届け出ることが必要ですが、こちらも同様に、都道府県間やマッチングサイト間での情報共有のギャップが存在していると考えています。ベビーシッターが転居した場合、転居元ではシッター業の廃止届を提出しますが、転居先では新たに設置届を提出できるため、その間の事故やトラブルなどの情報は引き継がれず、共有されません。
調査を重ねた結果、私たちは現状のシステムには多くの問題があることに気がつきました。その多くは事故や事件、犯罪者に関する情報が十分に共有されていないため、発生しています。都道府県間での情報共有のほか、ベビーシッターマッチングサイトの運営者や保育業界も含めた子どもと関わる事業者間での情報共有も必要とされています。現状のシステムでは、第三者である企業などが犯罪歴のあるベビーシッターや保育士などの情報を本人や家族、報道以外の情報から入手することは不可能なのです。その結果、犯罪歴のある人物は、子どもと関わる他の仕事を継続できたり、新たに子どもと関わる仕事に就ける可能性があるのです。
ケアファインダーからの提案
上記で示したような報告・届出体制の課題や、法律に関わる問題、都道府県という枠組みを超えた問題を解決するために、私たちは異なる提案をしたいと思います。子どもの仕事に関わるひとりずつの承諾を得た上で、その方達の情報を管理する「セントラルデータベース」を構築し、トラブルなどの情報を集中管理できるようにします。もちろん、どのような情報を提供し、照会できるかは別途定義する必要があると考えています。組織(マッチングサイトや保育事業者、学校など)はデータベースにアクセスすることで、それぞれの犯罪歴などを照会できるようになります。また、各個人の登録者からの情報開示の承諾は、永久的な効力を持つものとします。
このようなセントラルデータベースに子どもと関わる事業者がアクセスすることで、雇用しようとする人物の小児性犯罪歴などを事前に照会できます。開示する情報は、小児性犯罪歴や子どもに関わる犯罪歴のみに限定することも可能でしょう。このような取り組みの導入によって、子どもに関わる犯罪歴のある人物が子どもと接触することを徹底的に防ぎ、その人物らは子どもと関連のない分野で仕事に就き、更生することが可能となるでしょう。
このようなセントラルデータベースの構築は個人の情報を管理する国が手がけることが良いと思われますが、国から委託を受けた企業やNPOなどが管理することも現実的、かつ効率的ではないでしょうか。このアイディアを実現可能なものにするためには、今、多くの皆さんからの賛同と協力が必要なのです。