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【転職理由】面接でどう伝えるか?

本稿の想定読者

・転職理由の伝え方に悩んでいる方
・転職理由よりも志望動機の伝え方に悩んでいる方(このタイプの方は危ない)
・転職理由を面接の中で聞かれると、そもそも知らなかった方
・特に、転職理由が「人間関係」ないし「年収」のいずれかのみの方

である。

逆に、本稿を読まずとも、よい転職理由が伝えられる方は
・転職の目的が明確であり、志望動機との整合性が取れる方

である。

序文

「こんな(言っちゃいけなさそうな)転職理由、面接でどう伝えればいいのか…」と、悩む方は、かなり多い。かなり、である。

例えばそれは、転職理由が「人間関係」だったり、「年収アップ」だったり、「ハラスメント」だったり、「会社が不正行為をしている/不正を強いられる」等、「世間ウケしなさそうな理由」である時に。(と考えると、転職を考えている方に、こういう理由は結構多いということが分かる。ちなみに、会社不正が転職理由であるケースもリアルに存在する、それなりの頻度で)
転職理由が、「人間関係しかない」「年収しかない」という方は、困っている。何故ならば、その対処法は「別の転職理由を言おう」とwebサイトでは謳われているし、転職エージェントに相談しても大抵はそう回答される。
で、「別の理由を探して、面接で伝える」方は更に困ることになる。なぜか。それは、①深く突っ込まれた時に結局、現職の状況について触れざるを得ず、人間関係について言ってしまい、気まずい思いをする、かつ、落ちる ②「志望動機との整合性」が取りづらくなる。そして、実はもう一つ大きな理由があるが、それは後述する。
上記のように、転職理由を「やり過ごす」ことは難易度が高いのである。

また、同時に
「転職理由?そんなん簡単でしょ」と思っている方に対して深堀りをしていくと、意外と回答に詰まってしまうことが多い。

このケースの厄介なところは、「面接に行って初めて気付く=気付いた時には手遅れ→転職理由が微妙」となり、お見送りになってしまうこともある。
ちなみに、筆者の過去の経験上、転職理由で悩まない方は、「志望動機をどう伝えるべきか」で悩んでいる。つまり、転職理由で悩まずに志望動機で悩んでいる方は、実は転職理由に問題がある。
そもそも転職理由と志望動機は裏表の関係にあるようなところがある。現職に不満があるから人は転職を考えるのであって、起点は転職理由のほうなのである。ということは、転職理由無くして、志望動機は存在し得ない。
その意味では、転職理由のほうが圧倒的に大事である。しかし、転職理由の伝え方を体系的にまとめたものは、「具体的な言い方」を伝えるまとめサイトならある。しかし、転職理由はまとめサイトでは網羅できない程に個別性が高く、キレイじゃないことも頻繁にある。そして、「転職理由をどう伝えるべきか、その考え方」は意外と世の中に出ていないものだと実感した。
伝え方を困っている方が多い転職理由についてnoteをしたためることは、価値があるのではないか。だから、筆を執ることにした。

以下にまず結論と具体例を示し、その後で背景の説明をしていく。

転職理由の伝え方

「結論」
「自分にはこういう価値観があるが」
「こういう状況からそれが叶わず」
「だから転職する」

転職理由の伝え方事例その①

より主体的に仕事を進めることが求められる環境で働き、自分を成長させたいと思い転職を決意しました。私は自分で考えて様々に周囲と連携しながら仕事を進めたいという価値観がありますが、現職では指示されたことのみ淡々とやればよいと上司から言われております。上司と相談し提案もしましたが受け入れられることはありませんでした。そのため、より主体的に仕事を進められる環境で就業したいと考えて転職を決意しました。


転職理由の伝え方事例その②

現職で5年ほど働いていますが、制度上年収がこれ以上は上がらないことを知りました。現在年収は300万ですが、結婚するにあたり、せめて350万にしたい。そのために転職を決意しました。


さて、上記の解説の前に、
転職理由を聞く側の目的を明らかにしよう。

面接官が転職理由を聞く理由

理由は二つ。

(1)同じ理由で転職しちゃうリスクのチェック
そもそも転職理由というのは、重いものである。何故ならば、「現職を辞めたい程に、嫌なコト」が、転職理由だからである。裏を返せば、その転職理由が面接官の会社=志願先の会社でも発生しそうならば、応募者は辞める可能性が極めて高い。だからこそ、自社で起こりうる転職理由ではないかどうか、確認するのである。


(2)「自責思考のレベルが合うかどうか」のチェック
※自責思考そのものの解説は以下の稿に譲る。

自責思考のレベルが合うかどうか、とはどういう意味なのか。具体例で見てみよう。

例えば、「現職では自分でターゲティング顧客を決められない。もっと自己裁量を持って営業をしたい」という転職理由の方がいたとしよう。これは、自責の転職理由か?他責の転職理由か?

「会社の仕組みや上司の意向でそうなっているのであれば、確かにしょうがないよね。他責にした転職理由ではない。自責で考えて動いている方だね」と評価する人もいるかもしれない。
一方で、「そもそも、自己裁量を持たせてもらえるための努力が足りないのでは?他責にした転職理由だ。自責の範囲が狭い」と評価する人もいるかもしれない。

つまりは、何を自責と捉え、何を他責と捉えるかは、人によって微妙に異なる。かつ、会社の価値観(文化)に大いに左右される。転職理由には、それが透けて出ており、自責レベルが測りやすいのだ。

ではなぜ自責レベルが合っているかどうかを見るのか。それは「仕事における価値観の一致がないと、一緒に働いても、お互い苦労するから」である。価値観が違うことが面接段階でわかっているのに入社しても、長続きはしない。
ある課題解決を、自責で頑張っている人の隣で、他責にして解決しようとしない人がいる…なんていう組織は、すぐに腐っていく。優秀な人が辞める原因になる。
だからこそ、転職理由から見える「その方が他責にしていること」をみることで、自責レベルが揃っているかどうかを測るのである。

さて、伝え方事例の解説をしよう。

転職理由の伝え方事例その①の解説

①を読んだ時、「これ立派な転職理由やんこんなしっかりした動機あるなら素晴らしいやん」って思ったそこの貴方。①は実は「人間関係で悩んでいる」という転職理由を、ちょびっとだけ、言い換えたものに過ぎない。それでも、少しの工夫を施すだけで、「立派な転職理由」に見える。

その工夫を、具体例を用いて示そう。
人間関係で悩むということを構造化してみると
・価値観の不一致が存在
・その価値観の不一致により、不利益(パワハラ等)を被っている

の二つがある。
人間関係で悩んでいることが転職理由の人。その多くは、後者の不利益部分にフォーカスしており、前者を明らかにしていない。
その不利益を生じさせた「価値観の違い」を明示化するだけで、転職理由を作ることは可能である。

①では、
自分の価値観…自ら仕事の進め方を考えて実行するようにしたい
上司の価値観…言われたことを言われたとおりにやっていればよい
不利益…提案を受け入れられない(もしくは、拒絶される、怒鳴られるなどとあるかもしれない)
というのが構造なので、それをそのまま伝えるのである。

ここでポイントになるのは「自分の価値観」を伝えて、その後に、「相対する価値観=会社・上司の価値観」を伝える、という「順番」である。
人間とは不思議なもので、「ポジティブ→ネガティブ(→ポジティブ)」の順番は受け入れやすい。ネガティブから話さないようにしよう。

転職理由の伝え方事例その②の解説

「『年収が転職理由』だとしても、それは伝えるな」というのが転職エージェントや転職情報サイトの通説である。そりゃそうだ、「お金が欲しい、恵んでください」と言ってるようなものである。そんな自分本意の理由では、「では当社にぜひ!」とはならない。
しかし、筆者は過去の転職支援の経験上、年収を転職理由としても受かると知っている。厳密には、「年収を転職理由としても受かるバックグラウンドの持ち主」がいる。それは「社会通念上合理的な理由で、年収アップを望む場合」である。

少し具体化すると
・求職者が結婚等、共感性の高い理由で年収アップを必要としている。
・会社の仕組み上、年収がアップしない

という二つが揃っていることである。
それが、転職理由の伝え方事例その②で記載した内容である。
当然、結婚だって自己都合の極みといえばそうである。しかし、一家の大黒柱として家庭を支えるその覚悟は、面接官の共感性を呼ぶ(加えて、その覚悟が「中途半端に仕事を投げ出すことはないだろう」という印象にもなり、ポジティブにはたらく)。

ちなみに、転職理由ではないが、「お金が欲しい、だから恵んでください」における、最強のイメージは以下の動画である。冒頭〜7分ほどに志願者が「お金が欲しい」理由が述べられている。

ここまで共感性できるバックグラウンドはなかなかにないと思う。しかし、ここまででなくても、現に年収アップが転職理由でも受かることはある。

逆に言えば。
共感性の薄い「年収をあげたい」は、面接官に悪印象。悪印象でしか、ない。
「同級生と比較して低いから、上げたい」「仕事量に見合ってないから、あげたい」という本音をもし伝えたら。あなたが面接官だったらどう思うだろうか。「よし、共感した、当社にぜひおいでよ」となるだろうか。
本稿をここまで読み進めてくれているリテラシーの高い貴方ならお分かりいただけると思うが、それこそ「自分本位の転職理由」であり、人の共感を呼べるようなシロモノにはならない。

転職理由で「本音を言わない」人が困る理由

それは、「伝え方がわからない」とか「別の理由を言ってしどろもどろになる」ということ…以上に、「自分が次の会社でやっていけるかどうかが、面接を経てもわからない」ことだ。

どういうことか。例えば、「人間関係」や「年収」を転職理由として伝えたときのことを考えてみよう。もし、それが理由でお見送りになったり、人間関係や年収を理由として伝えたときに面接官が怪訝な顔をしたりしたら、それは何を意味するのか。簡単である。「人間関係の悩みや、年収懸念が発生する職場である可能性が高い」のである。
もちろんその前提として、上記①②のような、相手が受け入れやすい伝え方をしていることは条件ではある。その上で、本音の転職理由が「受け入れられるかどうか」というのは、選考に受かるかどうかよりも重要なはずである。なぜならば、もし受け入れられたら、人間関係の悩みや年収懸念などが発生する可能性は低く、もし受け入れられないのであれば、発生する可能性が高いのである。
もし貴方が転職希望者だとして、同じ理由が発生する職場に転職したいと思うだろうか?確かに、よっぽど魅力的な企業であればそのリスクを冒してでも入りたいという猛者はいるかもしれないが、本来自分がどうしても受け入れられない(会社を辞めたくなるくらいに)事象が発生している企業に入社したくないというのが人の性だろう。
つまり、本音の転職理由は、入社していい会社なのかどうかの試金石になるのだ。だからこそ、転職理由は、本音で話すべきなのである。


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