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自己申告書、意味ある? キャリア・カウンセリング/キャリア開発のための人事講座(2)

★ 自己申告書なんて出したくない!! 

 「自己申告書なんて書きません。弱みをつかまれそうで・・・」
 自分のことを書いて出す「自己申告書」。これも会社によってその内容も取り扱いも激しく異なっているものの一つです。
 今回のお題は・・・「自己申告書」です。

★ 何を申告するのか?

  自己申告書とは文字の通り、自分自身のことを申告する書類です。これを全社的に制度として、仕組みとして実施するのが自己申告制度です。
 どんなことを書くのでしょうか? 健康状態や、今の仕事ついて満足度合い、それから今後の仕事についてどんなことをしたいと考えているかといったことが一般的です。中には家族構成を書かせるようになっているところもあります。また、全く違う趣で、今期の自分のやった仕事についての自己評価を書かせるところもあります。
 書く分量も様々です。A3表裏両面にびっしり設問が設けてあるところもあれば、ほとんどがフリーコメント欄といった感じのA4が1枚というところもあります。
 書くタイミングは年1回提出というところが多いようですね。自己申告書を前にして上司と面接をすることにしている会社もあれば人事部門へ直接提出するようになっていて、知っているのは人事の人だけというところもあります。
 私が初めて就職した会社は自己申告書が2種類ありました。色が違っていて、部門内用と全社用とあったみたいです。就職して1年くらいしかたってないのに、急にこんなこと書けといわれてもなぁ・・と思った記憶があります。その後に面接がありましたけど、世間話をしていたような記憶が・・
 さて、提出された自己申告書はどうなるのでしょうか? 基本的には配置を決定するために使います。配置とはなんでしょうか? それはどの部署で働いてもらうかということです。拠点が全国にあるという会社になると、だれをどこへ転勤してもらうかということの判断材料に用いられることも多いようです。家族構成を聞くなんて、プライバシーの領域に踏み込み過ぎではないかと思うのですが、転勤したとき家族への影響がどうか−という点を見ているともいえますね(そうではないケースもありますが)。

<ここまでのまとめ>
 自己申告書は自分のことを会社に伝える書類です。その内容や活用方法は運用している会社によってまちまちです。おおむね、配置や異動を決定する際の基礎材料として使われます。

★ 自己申告書は書いても無駄?

  「自己申告書は書いても無駄。どうせそうはならないから」
 こんな話をよく聞きます。たしかに全社員が自分のやりたいことを書いたら、その通りにすることは難しいです。では、本当に無駄なんでしょうか? キャリア・カウンセラーでしたらそのあたりは確認をした方がよいかもしれません。
 確かに全員の希望を叶えることは難しいことです。しかし、希望といっても、「夢」「夢想」に近いものと、「裏付けを持った明確な意志」ともいえるものもあります。その仕事をやりたい理由も書いてあるし、そうなるためにどんなことをしているのか、その仕事になったらどんなことをしたいのかが手に取るように分かる自己申告書だったら、それを受け取る方もまじめに考えます。一方で、何となく書いてあるようなもの、ただ単に今の部署が気に入らないから変えてくれ−といったようなものは、受け取る方も「分かった」とは言いづらいものがあります。つまり、書く方もよく考えて書かなければ役に立たなくて当たり前といえます。
 見方を変えれば自己申告書は社内向けのエントリーシート(就職活動をしている学生が出す自己PR応募書類の一つ)の様なものです。これがいい加減ということは、仮に転職活動をするにしてもかなり大変そうだと言うことが分かります。
 他社がやっているからウチもやっておこうという程度で自己申告書を採り入れている会社もあります。この場合、自己申告書記載事項はほとんど興味半分ということになっているようです。運用している人事担当者も、「集めるだけ手間がかかって無駄なんだけどなぁ」と思っていることもまれではありません。

<ここまでのまとめ>
 自己申告書が役に立つかどうかは運用している会社の考え方にもよりますが、本人がどんなつもりで書いているかにもよります。
 社外のキャリア・カウンセラーはそのあたりを踏まえておくと、本人の自覚の程度が分かるかもしれませんね。

★ 自己申告書の弊害 

 自己申告書をきちんと運用しようというつもりがない組織の場合、自己申告書を書くことがかえってデメリットになるのではないか−そういう懸念から発せられているのが、冒頭の発言です。この危険性はないとはいえません。なぜなら、家族構成欄を見て、あえて転勤を伴う異動をかけるということも可能だからです。
 書いても無駄などころか、書くことがかえって不利な状況を生んでしまう−そう考えれば、自己申告書は何のメリットももたらさないということになってしまいます。もし、社内のキャリア・カウンセラーだったら−こうした状況を把握したら、何らかのアクションをとった方がよいかもしれませんね。個人と組織の間の不信感、拒絶感、疎外感が広がる一方になってしまいます。働きかけるとしたら、運用を主管する部門(多くは人事部)でしょうし、管理職層ということになるかもしれません。
 ただ、書く側の問題(何を書いてよいかが分かっていないというケースも含めて)もあるかもしれないことは意識しておいた方がよいかもしれません。キャリア・カウンセラーはここまでしなければならないのでしょうか・・・?
 厚生労働省はキャリア・コンサルタントという名称を使っています。カウンセラーといってもカウンセリング・ルームにこもっていればいいわけではないようです。それがコンサルタントといっている理由の一つでもあるようです。
 自己申告制度そのものは良い仕組みです。
 社員も組織もうまく活用できるように支援していきたいものですね。

 ★ 今回のまとめ

 米国などでは自己申告制度がないところもあるそうです。そんな書式を作らなくても、「必要であれば言う」のだそうです。「奥ゆかしい」日本人ならではの仕組みなのかもしれません。その意味では、自己申告制度をうまく活用できるようにするというよりは、自分の考えをきちんとコミュニケートすることができるように支援する方がよいのかもしれません。

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