冷やし中華とキャリア・ゴール~キャリア開発覚え書き
キャリアを取り上げる研修では多くの場合「キャリア・ゴール」というものを設定して終わりますね。どうなりたいのかという目標をはっきりさせよう!ということで
中には決意表明張りにほかの参加者の前で発表して、ほかの参加者から激励の拍手をもらったりして…(これって、個人的にはなんかあまり好きになれない)
ゴール設定できるとなんとなく研修としてはやり遂げた感があるからでしょうか…
それにしてもキャリア・ゴールって、そんな簡単に設定できますかね…。
ことあるごとに話しているので「また言っているよ、年寄りはくどいね」と思われるなぁと思いながらも知らない振りして敢えて書きますが、キャリア・ゴールって自分の知っているものの中からしか選べないわけです。
ということは「知っているものの中にはない」ということに過ぎないわけですよ、ゴールが定まらないのって。
これからの自身の成長だとか、世の中の変化とかというものを考えるなら、むしろ、現段階で決めてしまうって、可能性を閉ざしているということにもなりかねない-とも言えるのではないでしょうか?
そういう意味で、小学生くらいの子どもに「将来何になりたい?」と聞いたり、2分の1成人式とかで発表させたりするのって、本当に意味があることなのかしら?と思ったりします(それって、言わせている側のエゴではないか? とも思ったり)
じゃぁなくてもぜんぜんOK! かというと、そうでもない理由もあります。”あると便利”な点もあります。
とりあえずのゴールでも良いからあると、とりあえずどっちの方向に進めば良いのかが分かります。「少なくともこちらではない」ということも分かるかもしれません。そして方向が分かればとりあえずの一歩を踏み出してみることができます。一歩踏み出せば見える情景は異なってくるもので、そうしているとゴールが見えてくるかもしれません。
そしてゴールは目当てでもあるので、なんとなく近づいている感がえられます。これってある種の成長感でもあるんですけれど、そういう感覚があると、やはり嬉しいし、おそらくは自己肯定感にもつながります。それって本当に意味のある成長かどうか分からないし、結局無駄骨になるかもしれないじゃないの、というご指摘もあるかもしれませんが、なにもないよりはましだと思うのですよ。毎日毎日が意味のない日々、砂を噛むような生活…というよりは、あ、こんなことができるようになった、こんなことが分かるようになった-というのって、それはそれで嬉しいではありませんか。仮に、結局、ゴールが分からないまま人生を閉じることになったとしても、「でも日々は楽しかった中」と思いながら閉じていきたいように思うのですよ。個人の感想ですけど。
あと、それを口にすることで、「あ、だったらこういうのやってみたら」とか、「それでいうとこんなのもあるんだけど」とかと、周囲の人からの情報が集まりやすくなります。そもそも「現時点で知っているものの中にはない」ということであれば、未だ知らないものに関する情報が必要です。知らないものに関する情報を自分の手で集めるのは難しいですよ。だって何を見れば良いかも「知らない」のですから。その点、ほかの人は自分の知らない、気付かないことを知っている可能性が大です。関連情報やきっかけをくれるのはきっと他者です(自分にあるなら既にやっているはずとも言えます)。
とりあえずのゴールと先に記しましたが、「とりあえずといわれても出てこない」というのもあるかもしれません。ここでいうとりあえずにも実はいろいろとレベルがあります。
食いしん坊ですからどうしても食べ物の話になるのですけれど、「何になりたい」を「なに食べたい」に置き換えてみて考えましょう。何になりたいかゴールがはっきりしているということは、「冷やし中華が食べたい」と答えているような感じです。
でも、「あ~なんか中華な気分」というジャンルの話でも、「さっぱりしたのが良いな」という食味の話でも、「お野菜が採れるものが良いな」とかという材料の話でも、食べたいものを答えたことになりませんか?
キャリア・ゴールも同じで「ものをつくる仕事が良いな」とか、「一人黙々とする仕事よりも、チームで取り組むようなのが良いな」とか、「面倒を見ないといけない人がいるから、家から通える範囲が良いな」とか、というのでも、とりあえずは良いのではないでしょうか?
そうしたことを口にしてみたとき、例えば「知人から生ハムが送られてきてね。これを美味しく食べたいんだよ。だけど、なんかメロンに載せるというのを見たけどメロンはないし、やっぱそのまま酒のアテかなぁ」といった時、「あれね、メロンじゃなくてマンゴーやバナナでも美味しいらしいよ」とか、「あぁ、冷製パスタと合わせてみるというのはどう?」とかという話が出てくるかもしれません。そしてもちろん厚めに切って、冷やし中華に載せても美味しいわけです。
冒頭にも記しましたが、キャリア・ゴールが定まると研修としてはやり遂げた感があってよいのですけれど、キャリアは仕事人生、長い目で考えるものなので、むしろ宙ぶらりんな感じにどう対処していくか、というところに焦点を当てた方が良いのかもしれません。
宙ぶらりんだけども着地した感じがする…キャリア開発ワークショップはそうしたものでありたいと思っています