Ⅴ)キャリコンが働くニーズはどこにある? ~企業内のキャリア支援~
キャリアコンサルタントの松岡澄江です。
今回は、今私が一番力を入れている「働いている人」のキャリア支援についてお伝えします。企業等で働いている人はとてもたくさんいて、悩んでいる人もとっても多いのに、自分のキャリアについての相談はどこにしたらいいの?もっと身近に、キャリアを一緒に考えてくれる人がいたらいいと思いませんか?
働く人だって悩みは多いのに相談できる機会がない
もともと、キャリアコンサルタントになろうと思ったのは、自分の部下や他部署の若手社員たちの、仕事や人生についての悩みを聴いたことがきっかけでした。働いている人も、自分のこの先のキャリアに悩んでいるんです。でも、それを相談できる人ってもしかしたらすごく少ないのではないか???と気がつきました。
若手社員の気持ちがこちらです。
上司は忙しそう。それにちょっと世代も価値観も違うからあんまりプライベートなことは話したくないなぁ・・・
家族に話せば心配されるし、理解してもらうのも難しそう・・・
社外の友人だと仕事の状況を説明するのも大変で、そのうち違う話になってしまうし・・・
会社の人事に相談してもいいけど、「あの人はこんなことで悩んでいる」という履歴が残るのもイヤだな・・・
産業医面談になるとメンタル面に問題がある人みたいになってしまうし。
さてどうしよう・・・?
昔は、尊敬する上司や先輩に仕事だけじゃなくプライベートなことも相談して解決していたのだと思いますが、今は昔と違って世の中の変化が激しい時代です。年代が違うと人生観も働くことに対する価値観も大きく変化していて、相談を受ける上司側も戸惑ってしまうというお話も聞いています。
仕事の悩みも生き方の悩みも、なんだか言いようのないモヤモヤも、どこに相談すればいいのか?
近くに相談できる人がいないと、そのうち小さなモヤモヤがもくもくと膨らんで、やがて不満に変わり、ついには転職情報を集め、人材紹介会社に連絡。人材紹介会社のアドバイザーは、その人に合った求人を紹介するためにとても丁寧にお話を聴いてくれます。話をするとスッキリするし、自分の考えも整理できるので「やっぱり転職だ」とキモチが固まって…。という転職ストーリーが見えてきます。
こんなふうにモヤモヤを放置していると、離職の確率が上がることも。もちろんそれが本人にとって良いこともあるでしょうが、転職がすべての悩みの解決法ともいえないケースもあります。もしかしたらまだやるべきことがあったかもしれないし、モヤモヤの根源が仕事ではない可能性もあるのです。
もっと、働く人がキャリアを考えるタイミングがたくさんあればいいのに。それが私の想いです。
企業内ではたらく人にも「キャリア支援」を
国は、今後ますます少子高齢社会が進み、労働力が不足していくことを見据えて、働く人一人ひとりが仕事に意欲を持って取り組むことができる環境の必要性を訴えています。働く人が自分の人生を組織に任せきりにするのではなく、自律的なキャリア形成ができるための施策が「セルフキャリアドック」です。
「セルフキャリアドック」は努力義務のため、浸透しているとは言えない状況です。企業の経営者や人事担当者の中には、「社員がキャリアなんか考えたら転職してしまうんじゃないの?」と思っている方もいます。
そうではないんです!とわかってもらう道のりは平たんではないけど、キャリアコンサルタントとして企業で働く人の支援を続けていきたいと思っています。
企業内のキャリア支援には、大きく分けて2つのアプローチがあります。キャリア研修とキャリア面談です。
集合研修でキャリアの考え方を学び、自分のこれまでを振り返りながらどんな能力を持っているのか(CAN)、何をすべきなのか(MUST)、自分の軸は何か?、そしてこれから先どうありたいのか(WILL)を見える化していきます。過去から未来を俯瞰してみることで、自分の今を整理することができます。
研修では、同期や年齢の近い社員が集まるため、他の社員の話が聞けて気づきが深まり、刺激を受けるようです。集合研修で紐解いた自分自身を改めて考え、具体的なキャリアビジョンを立てるために、個別のキャリア面談を実施するケースが増えています。
メンタル不調の社員の面談は、産業医等の相談先を用意している企業が多いですが、キャリア面談のためのキャリアコンサルタントを常設している企業はとても少ないです。以前私が勤めていたWEB制作会社には、福利厚生の一環としてマッサージが30分500円で受けられる部屋がありました。こんなふうに、キャリアについても気軽にいつでも相談できる部屋ができるといいなと思っています。
どれだけ私が「いい!」と言っても、実際どんな面談なのかやってみないと良さは伝わりません。理解してもらうため、ご縁のあった人事担当者にキャリア面談を体験してもらっています。実際ご経験いただいた方からは、「こんなに自分のことを話すつもりはなかったのに・・・」と、少し驚いたという声をいただきました。「話すと自分のモヤモヤが整理できますね」と話すことの効果を感じてもらったりしました。百聞は一見に如かずですね。もっと体験してもらう機会を増やしていけたらと思っています。
企業内で働く人を支援するキャリアコンサルタントは、今後もっと必要になってくるはず!です。そういう社会になるように、私も「キャリアを考えることの意義」を伝えていきたいと思っています。
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