1on1が待ち遠しくなる上司の面談力(3)わかったつもりにならない
キャリアコンサルタントの松岡澄江です。
この連載では、上司の面談力についてお伝えしています。第1回は目的を持つことと時間の配分についてお話しました。第2回は何を話すのか?面談で話す内容を考えてみました。
連載はこちらのマガジンにまとめていきますね。ぜひご覧ください。
さて3回目以降は、聴くことについて考えてみようと思います。
多くの上司は、部下の話を聴こうと1on1にのぞんでいます。傾聴のトレーニングも受けたし、傾聴姿勢やアイコンタクトだってやっている。でもなぜか1on1の時間がうまくいかないとしたら・・・もしかしたら、聴く姿勢や態度や行動といった手法ではなく、聴き方そのものに課題があるかもしれません。
1on1で話を聴いている時の自分の頭の中は、どんな思考が動き始めているでしょうか?
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自分の経験やイメージと重ねてしまう
部下「この間、初めてキャンプに行ったらすごく楽しかったんですよ」
こんなふうに1on1の話が始まったとしたら、どう反応しますか?楽しかった経験についていろいろ聞きたくなりますよね。例えばこんな感じです。
上司「どこに行ったの?」 部下「山梨のキャンプ場です」
上司「誰と行ったの?」 部下「大学時代の友達と」
上司「BBQやった?」 部下「現地でBBQのセットを頼みました」
上司「テントはどこのメーカー?」 部下「××の4人用です」
このやりとりは質問もたくさんしていて、すごく盛り上がっているように見えますが、キャンプに関する事実のやりとり(会話)をしているだけです。そうなると、ある程度事実確認が終わったらその後何を話していいかわからず、話が続かなくなる可能性があります。
会話で終始してしまう原因の一つに、『相手の話に自分のイメージを重ねてしまう』ことが考えられます。イメージを重ねるとはどういうことでしょうか?
例えば「キャンプが楽しかった」と聞いた瞬間に、頭の中は自分がキャンプに行った時の楽しかった経験や、テレビなどでたまたま見たキャンプの楽しそうな映像が浮かんできます。自分がイメージした『キャンプが楽しい』シーンを、部下が言っている「キャンプが楽しかった」ことと重ねてそのまま理解しようとしてしまうんですね。
「あ~、自分にもそういう経験ある、キャンプって楽しいよね~」と頭の中で受け止めてしまうので、それ以上相手へ質問することがなくなってしまいます。一見相手に共感しているようですが、自分と相手のイメージが同じだと決めてしまっているので、この話に対して興味を持続できず、結果話が続かなくなってしまうのです。
もし、自分のイメージが強い状態が続くようなら、自分との違いを聴いてみるのも一つの解決法です。例えば・・・
「私は、テントを立てる時からワクワクするんだけど、君は何が一番楽しかった?」
「キャンプの醍醐味は焚火だと思うけど、君は何だと思う?」
「一人キャンプが好きだけど、君はどう?」
相手と自分が同じと決めてしまうと質問が出なくなるので、相手と自分が感じていることは違うことを前提に質問をしていきます。この方法だと、お互いに自己開示が多くなって、相互理解が深まり話しやすくなる効果が期待できますよ。
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白紙の紙に描くための質問を
相手の話を自分の経験になぞらえたり、イメージを重ねて聞いてしまうことは、私も時折カウンセリングの中で経験することです。そういう時は、いったん自分の頭の中のおしゃべり(そうそう、私もそんな経験があって・・・とか、それってこうだよねとか)を止めて、浮かんでいるイメージをいったん脇に置き、相手の話に集中します。
自分の経験やイメージのフィルターを通して相手の話を理解しようとしないで、真っ白な紙にその人の話してくれることを描こうと思うようにしています。
そうすると、事実確認以外の質問をしたくなるのです。
「そのキャンプのどんなところが楽しかったの?」
「キャンプで何を感じたの?」
「キャンプに行ったことで何か自分に変化はあったの?」
「今までのレジャーの楽しさとはどう違ったの?」
こういった『意味を問う』投げかけは、相手が深く自分について探索するきっかけになります。より描写が鮮明になっていったり、気持ちを言語化することで気づきが生まれることが多いです。
『どこそこに行って何々をしたから楽しかった』という事実に加え、『どうしてそれが楽しいと思ったのか』といった意味につながるものまで、白紙に描いていければ、その人にとっての『楽しい』とは何かについて聴きだすことができます。
傾聴は聴くことです。聴くためには話してもらわないといけません。聴くために、相手が話してくれる質問を投げかけ続けることが重要です。
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仕事上の話は特に注意
キャンプが楽しかったという部下の話を例にお話しましたが、これが仕事に関することになるともっと注意が必要です。社内では上司の方が仕事の経験や知識が豊富なことが多いので、部下の話を自分が経験したことと同じだと早合点してしまいがちなのです。そうすると、部下が話そうとした本質を聴くことができなくなります。
自分の経験は自分のものであって、目の前の部下の経験とは似ていても非なるものです。「部下の経験は自分の経験とは違う」と、明確な意識を持って1on1にのぞまないと、思い込みで話を聴きこんでしまうことになります。そうなると相互理解は難しくなっていきます。
部下には、部下の考えや目線・行動があり、そこを聴いてあげるために自分の経験はいったん脇に置いて、部下の話を真っ白の紙の上に描いていくイメージで質問を考えて欲しいと思います。
聴くというと、傾聴手法に焦点があたりやすいのですが、実は話を聴く側の思考や受け止め方が対話に大きく影響しています。聴く側の上司が「わかったつもり」にならないこと。ぜひ参考にしてください。
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