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対話体小説 ショート「未来」

「おい、大丈夫か」

「あぁ、なんとかな」

「それにしても、ひでぇ有様だ」

「全くだ、まさかこんなタイミングで地震なんてな」

「原子炉の方はどうだ?」

「最後に見た時、炉中で光を放ってるのを見たが爆発してからは覚えてない」

「やはりお前もか」

「お前もセクターは違ったが、観察できる距離にいたしな」

「ああ、だが一体どういうことなんだ」

「ああ・・・なぜ俺たちは、生きてる?」

「周りの瓦礫からアレを見たか?」

「ああ」

「○○だと思う黒ズミがあった、パートナーだったから思う勘でしかないがな」

「俺もお前と会う前に、瓦礫の山から沢山の黒ズミを見たよ、人によってはまだ判別できる形が残ってるのも見た」

「なんてことだ・・・」

「でも実際に、炉心融解が発生していると、今ここで話している俺たちの説明が、どうしてもできないぜ」

「確かに・・・辺りを見回していたし、あの瞬間から数時間は立ってるかもしれないが、放射量は生存値を超えているはずだ」

「一体なにが・・・おい、お前なんだそれ」

「ん?なんだ」

「お前自分の体もまともに見てないのか!?右肩についてるモノだよ」

「え・・・なんだこれ」

「それ以上近づくな!」

「嫌だ、怖い、取ってくれ!!」

「うるさい、それ以上寄るな!化け物!!来るな!!!」

「やめろ!?・・・・って、ははっなんだそりゃ」

「いや・・ちが」

「てめぇも一緒じゃねぇか、背中から気持ち悪いモノ生やしやがって」

「こんな・・・くそっ」

「でも、これで俺たちが生き延びた理由は分かったよ」

「・・・やめろ」

「俺たちはもう人間じゃない」

「・・・やめろ!!!」

「怪物になってるから俺たちは生き残れたんだよ」

「違う!!!」

「じゃあ説明しろよ、ニュークリア凝固型ヒューマノイド計画の為、あれほどエネルギー値を持った炉が爆破したのに今生き残ってる理由を」

「・・・・なんなんだよ・・・」

「俺たちは、形は違うがプランのままになったんだよ、俺たちこそが目的だ」

「そんな・・・なんで被検体は・・・」

「そんなもの知らねぇ、施設ごと吹き飛んだ今はな」

「でも環境対応体は、ゲノム加工をして生まれたモノじゃないと耐えられないはずだろ!!」

「そんな過程に囚われるな、現状でいうと恐らく俺たちこそが環境対応体だ」

「っくそ、つまり」

「ああ、俺たちだけが箱舟に乗って生き残れるノアってことだな」

「なんてことだ・・・待て・・・俺たちは諦めてもう全てを捨てたんだぞ」

「そうだ、家族も捨て、友人も捨て、恋人も捨て、ここにいる奴らは全員、人類を残すためだけにここに来た」

「俺には娘もいるんだ!なのに断腸の思いで娘を捨て、いつか娘がそのまた子孫を作る世代に人類を残せるように、人生を捨てここに来たんだよ!」

「そんなもの!みなそうだ俺もな!!地球は廃科物の放出をはじめ、人類が瞬く間に減っているこの世だからこそな!!」

「ああ、妻も親もみんな失ったが、地下にいる娘の為だけに来たんだ」

「・・・・・だが理解し始めた、地球が廃科物をなぜ拡大し続けているのか」

「一体お前は何を言ってる?」

「虚を言うな、お前も本当は本能からの叫びを聞いてるんだろ」

「・・・なにも」

「誤魔化すな!!!俺たちは選ばれたんだ!この地球に!だからこそ 次の時代は、愚かな人類を一匹残らず消して、俺たちが繁栄しなければ ならない!!」

「違う!俺たちは残された人類の為に研究を続けた!」

「じゃあなぜ被検体実験が始まるこのタイミングで、地震が起きたんだと思う?」

「それは、ぐうぜ」

「偶然なわけないだろ!!地球は全てを理解してたんだよ!醜い人間どもが貪欲に地を荒らし、我が物顔で生きたからこそ、清浄を始めたが、それでも種を残そうとあさましい科学を用いて足掻いてるのを!」

「・・・・・お前は・・・もう・・・違うのか?」

「何を言う、俺とお前はもう同じだ、ともに次代の繁栄の礎となろう、地下の人間どもを皆殺しにして」

「分かった・・・お前はここで消滅しなければならない」

「何を言う?!お前も本能の声に従え!!」

「俺は人生を捨てたが、娘には人生が残ってる!!この体を被験体として研究者に回せば、いづれは人類が再び生き残れる!」

「お前は何を言っているのかわかっているのか!?愚かな人間に自分を捧げて得るものはなんだ!?」

「俺じゃない誰かだ」

「・・っ分かった・・・それなら良い・・・2つに1つだ」

「ああ、もういいぞ・・・人かお前らかを決めよう」




「こちらユーラシア南隊、サウスバウンド地区、実験場爆発からの検分です。どうぞ」

「ユーラシア南隊、聞こえている、あたりはどうだ何か残っているか?どうぞ」

「・・・ひどい有様です。生存者は居なく、実験場、装置、被検体は消滅したと・・・待て」

「どうした、ユーラシア南隊」

「2人の遺体だけが、消し炭にならず残っております!信じられません、恐らく力場から数メートル離れたところですが、瓦礫の上にいます!!」

「なんだと?もしや被検体かもしれん、遺体でも良い!回収を頼む」

「ラジャー、待って・・・あれは」

「どうした?」

「先ほどの遺体の片方が起き上がりました!!!しかし・・・なんだ」

「なんだと!?一体何があった」

「モービルの方を見ながら笑っています、確かに確認できます!
 こちらのモービルを見ながら笑いながら手を振っています!!」