エッセイ JAL客室乗務員時代のこと
こんにちは
キャリアコンサルタントの西村由美です。
2022年度、日本勤労青少年団体協議会 「若者を考えるつどい」エッセイコンクール、大人の部門で佳作を受賞致しました!
「若者へのエール」がテーマのエッセイでしたので昔、働いておりました日本航空客室乗務員時代に学んだことを書いております。
団体様より、全文掲載の許可を頂きましたのでもしよかったら読んで頂ければ幸いです!
タイトル 「8 月 6 日の広島フライトが教えてくれたこと」
********************
「働く上でのやりがいとは何ですか?」OG 訪問の際に、学生さんから質問をされることがある。その時にいつも思い出すのが、ある 8 月 6 日の広島へのフライトだ。
「仕事にやりがいを感じることができない。転職しようかな。」大学を卒業し、幼い時から憧れていた仕事に就けたにも拘わらず、私は仕事にやりがいを見出せずに苦悩していた。お客様をお出迎えし、機内サービスを提供し、お見送りするという来る日も来る日も代わり映えしない業務。「カーテンの閉め方が汚い」や「お客様をよく観察して」といった小言を先輩から言われる日々。大学時代の同級生と飲みにいけば「プロジェクトリーダーに抜擢された」や「初めてビジネスプレゼンをする」など挑戦しがいのありそうな仕事の現況を聞き、惨めな気持ちになっていた。
そんな悶々とした気持ちを抱えたまま迎えた 8 月 6 日の広島へのフライト。この出来事以前の私には大きな意味があったわけではないが、広島に原爆が落された日である。いつも通り機内サービスで飲み物を提供している時、80 代前後と思われる白髪の女性が目に留まる。翼横の席にお座りで、見えにくいであろう窓の下の景色を一生懸命覗き込んでおられる。後方窓側に 1 席だけ空席があるのを思い出した。何気なく「お客様、窓の下がよく見える席が 1 席空いております。よろしければご移動なさいますか?」と声を掛けてみた。女性は「ありがとう、ぜひお願いしたい」と満面の笑みで喜んでくれた。そして歩きながら私は思いもよらぬ話を伺った。
「今日、私が飛行機に乗った理由は、アメリカ軍が原爆を落とす時、どんな景色を見ながらどんな思いで原爆を落としたのか、同じ景色を見ながら考えてみたかったの。綺麗に見える席に移動ができて、本当に嬉しい。有難う。気が付いて下さるなんて、さすがJALの客室乗務員さんね」と感謝され、握手を求められた。
この瞬間、私はとても大切なことに気づいた。それは私が行った席の移動提案は代わり映えのない業務の 1 つではなかったということだ。これまでの私はお客様の背景など考えてもいなかったのである。何のために業務を行うのか、小言に思えた先輩の指摘にはどんな意味があるのか考えず、私は客室乗務員の仕事を、リストに書かれたただ単調な業務の繰り返しと勝手に定義していたのだった。
やりがいを見出せないのは当然であった。原因は業務内容にではなく、私の中にあったのである。そんなことも分からず、転職しようかと考えていた私の心とは、ただ目の前の仕事からの逃避であった。もう一度本気で客室乗務員の仕事と向き合ってみようと捉え方や行動を変えた結果、いつしか「お客様からお預かりした時間を価値あるものにしてお返しする」ことや「正解がお客様によって変わる難しさに挑戦する」ことが私のやりがいになっていた。21 世紀は、変化の激しい時代である。SNS など見ず知らずの人に影響を受けることも多いだろう。自分の仕事はどんな価値を届けているのだろうか?どのような時代であっても、この問いかけに対して、常に考え行動し続けてほしい。その先に、仕事のやりがいとは何か?あなただけの答えを見出すことができるはずだ。どんな仕事でも失敗を恐れず行動を続け、あなただけのやりがいを見つけることがあななたの人生を豊かにすることを信じてやまない