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採用のシフトチェンジ3つの条件
誰でもいいから採用という時代では、本当の採用活動ではない
小さな会社でも、優秀な人材を獲得することはできます。
今「そんなことできるわけがない」と思いませんでしたか? そして、このような考えを持っているのではないでしょうか。
「優秀な人材はみんな大企業に取られてしまう」
「うちの会社は大企業のようにはできない」
「中小企業がいろいろやってもムダ」
「どの会社も採用しないような人しか応募してこない」
「うちの会社に来てくれるなら誰でもいい」
現在、私は中小企業の採用活動をサポートに携わっていますが、このような後ろ向きの考えを持つ社長や採用担当者をたくさん知っています。小さい会社ほどそうかもしれません。
確かに大企業はネームバリューだけで人材が集まりますし、採用活動の予算も潤沢です。
もともと優秀な人が専任の採用担当となり、さらに研修やトレーニングを受けてそのスキルを高めて取り組んでいるので、優秀な人材を取れるのも当然です。
そこまでやらなければ人材獲得競争に勝てないともいえます。
だからといって、中小企業は優秀な人材を採用できないことにはなりません。
大企業のようにお金をかける必要はなく、知恵と工夫で勝負。
むしろ、中小企業であることを“武器”にして、自社が欲しいと思う人材を獲得する方法はあるのです。
ここ数年は人材不足が深刻化し、大企業ですら優秀な人材の獲得に苦労しています。
知名度の低い中小企業ではますます厳しくなるのは確かでしょう。
採用に本気で取り組まなければ生き残れない時代になりました。
しかしながら、中小企業の採用ではいまだに「相性」「タイミング」「感覚」といったような考えを重要視する風潮が根強くあります。
つまり「社長が気に入ったから」「すぐに来てくれるなら誰でもいい」などで採用してしまうケースです。
簡単に決めてしまっても、その人が本当によい人であれば問題はありません。
しかし、もしダメな人材を採用してしまったら、その人を辞めさせるのは今の日本の法律では非常に困難です。
法律面から考えると、解雇は不自由ですが、採用は自由です。
ですから、どうやって辞めてもらうかを考えるよりも、始めからダメ社員を採用しなければいいのです。
給与が高水準!?応募者が増えない理由とは?
中小企業が今の人材獲得競争に勝つためには、これまでの採用方法を改善しなければなりません。
中小企業が取り組むべきは、受け身の採用ではなく、攻めの採用です。
来てくれる人ではなくて、欲しい人を採用する。
これからは感覚や相性だけで採否判断せずに、もっと戦略的に行うことが重要だと思っています。
ペルソナ設定をする、共感と等身大の発信、フォロー体制、入社前後の研修、入社後のフォローまで、企業の採用活動能力が問われる時代になっています。
採用活動能力とは、面接テクニックに限ったことではなく、募集活動から、面接・選考だけに留まらず、内定辞退対策、入社後のフォローまでを含めた戦略です。
たとえば、応募者を増やすにも中小企業ならではの創意工夫が必要です。
やみくもに間口を広げても、人を集められるわけではありません。
採用を“釣り”にたとえれば、もちろんいいエサで誘うことは大切です。
しかし、エサを狙う魚がいない場所で釣りをしても意味がありませんよね。
大事なのは、釣りたい魚がいる場所を狙ってエサをまくこと。それは採用も同じです。
みなさんはエサをおいしくすることだけを考えて採用活動をしていませんか?
エサ、たとえば「給与を高くすれば応募は増える」とたいていの会社は考えます。
他にも賞与を増やす、福利厚生を手厚くするなど、いろいろ方法はありますが、実は、一番良くない方法が給与を高くすることなのです。
それは最後の手段といってもよいと思います。
また、景気拡大による人材確保を背景に、複数の企業から内定をもらう学生が増えています。
内定を出しても、もっと上の会社を探して就活を続ける学生は大勢います。
さらにいえば、優秀な人ほど多くの会社に受かったりします。彼らがもっといい会社に就職すると、内定を辞退される会社もそれだけ増えるわけです。
加えて、近ごろは内定承諾も親に相談、内定辞退の理由も親の反対というケースが少なくありません。
子どもは親離れできず、親は子離れできない親子が多いように思います。
親御さんの主観で判断されると、いくら上場企業、優良企業でも、自分が知らないというだけで候補から外されてしまう。
求人倍率の上昇で大手志向が高まっている今はなおさらです。ですから親御さんのフォローも考える必要があります。
こうした就職活動の動向や就活生の事情も敏感にとらえ、内定辞退の防止策や親御さんへの対応なども戦略に織り込みながら人材獲得に励まなければなりません。
現場からの声を大事にする採用
さらに「社長が気に入ったから採用する」という風に、中小企業は社長主導で採用を決めることも多いのですが、それが入社後のミスマッチを引き起こす原因になっています。
会社説明会には社長自身が登場して本気を応募者に伝えたほうがいいのですが、採否に大きく関与することに社長が口を出すのは、あまりおすすめできません。
社長の意見は絶対的かもしれませんが、そもそも新入社員と一緒に仕事をするのは社長ではなく現場のスタッフだからです。
現場がどんな人材を求めているのかを確認する際には、「スキル」「感情」「社会性」の3つの観点から以下のような感じで現場にヒアリングしていくと具体性が出てきます。
スキル
現場に必要とされるスキルを挙げてもらいます。「○○ができる人」「○○力がある人」といったように、具体的に言葉にして確認します。必要とされるスキルが思い浮かばない場合には、逆に欲しくない人材は「○○ができない人」という消去法でも構いません。
感情
一緒に仕事をしたい人、もしくはしたくない人のタイプを挙げてもらいます。「約束をきっちり守る人がいい」「控え目な人がいい」「相手の目を見て話さない人は苦手」「神経質な人はイヤ」という感じで、現場の声を拾っていきます。
社会性
その人の社会性や仕事における意欲から人材像を具体化します。たとえば、積極性、協調性、責任感、達成意欲、チャレンジ意欲、勤労意欲などの面から、どういう人材が現場にマッチするのかを一つひとつ具体的な行動に落とし込み確認していきます。
こういった作業は少し手間がかかりますが、社長主導の採用に比べてミスマッチの確率は格段に下がります。
採用を成功させるには、「選考基準を整備する=自社が求める人材像を明確化する」ことが非常に重要です。
自社が欲しい人材を具体的に説明できるようにしておくと、採用面接で面接官の主観で評価するのを防ぎ、活躍できる人材も見つけやすくなります。
たとえば「前向きな人を採用したい」といっても、それではきちんと明確化したことにはなりません。
「前向き」に対する捉え方は人それぞれ違うからです。
そこで自社にとって、どういう人が「前向き」なのか、実際の行動に照らし合わせて考えていきましょう。
そうすると、たとえば「始業時間の30分前には出社する」「大きな声で挨拶できる」「自分から仕事を見つける」など、自社が求めている「前向きな人」のイメージがはっきり見えてきます。
積極的で協調性があって……と考えていくと、欲しい人材はどの会社も似たり寄ったりになるのですが、ベースの部分は似ていても、会社によって必ず違いが出てきます。会社には風土や理念といった独自のカラーがあるからです。
特に中小企業は自社の社風に合うかどうかが重要になってきます。
他社で活躍していた人でも、新しい社風の違う場所で活躍できるかどうかはわかりません。
たとえ同じ業種や職種でも、組織風土や仕事の進め方などによって、他社で優秀とされる人と、自社で優秀とされる人の人材像が一致しないことはよくあります。
つまり環境によって優秀の定義は変わるのです。
転職して活躍できたり、できなかったりするのはそういうことです。
3つの側面から採用活動力をアップさせるには
1つは面接官のレベルを上げること。
2つ目は、面接評価シートなどを使用するということ。
これは面接官、または採用時期によって、評価にブレが出るのを防ぎます。
3つ目は、検査ツールの活用です。
人が人を見抜く面接にはどうしても限界がありますので、性格も含めて客観性のある検査ツールを併用するのがベストだと考えています。
これら3つの相乗効果により採用力はレベルアップし、雇用のミスマッチも軽減します。
生まれつきの性質や性格を面接だけで見抜くのは大変難しいのですが、面接や面接評価シートにプラスして適性検査を活用すれば、人の目では見えない部分もデータから細かく確認していくことができます。
そして検査ツールを活用することで、その人材の適性も分析できます。
たとえば忍耐強いのか、几帳面なのか、感情的なのか、慎重派なのか……ということから、責任感の強さやストレス耐性までわかります。それを元に、営業向きなのか、事務系なのかといったことから、チームの配属を考える場合の参考データにも使えるのです。
会社のすべては「人」にかかっています。募集・採用、配置、教育、評価、昇進・昇格、休職、退職までの一連のマネジメントを労務管理といいますが、この労務管理の質を向上させるには、まずは「人」の入口である採用活動のレベルアップが不可欠なのです。
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