離職率低下と社内環境の6つのバランス
離職率を下げたいという目標だけではうまくいかない
大卒3年目までに最初の会社を辞める確率は33%といわれています。
実に3人に1人は残っていないというのが実態ともいえます。
これはあくまでも厚生労働省が出している数字から言えることであり、離職率をきちんととっている会社はほとんどありません。
新卒採用の面接で定番とも言える質問が、「御社の入社3年以内での離職率を教えてください」というものがあります。
この質問に対して、きちんと数字で答えることができる人事は皆無といえるでしょう。
なぜなら、ネガティブな情報を出すことは辞退する理由につながるからいうなという箝口令がひかれています。
以前に採用コンサルティングでお手伝いをさせていただいた企業の経営者は、「100人入社したら、100人やめるぐらいの勢い」と自慢げにこんなことをいっていました。
離職率を下げることができるようになるまで1年以上の歳月がかかってしまった。
終身雇用制度の崩壊という言葉も良く耳にし、1社に長く在籍することがスタンダードではなくなってきているように感じます。
しかし、企業側としては、コストをかけて採用し、手塩にかけた育てた人材を失いたくないことでしょう。
そこで今回はいろいろな角度から離職率を下げる方法についてお話をしていきましょう。
評価制度を社員が作り上げる
人事制度を改定する際には、人事とごく限られた人たちが草案、経営陣が承認という流れになっています。
従業員からすると、会社が勝手に決めたルールで反論をする場も設けられず、一方的な通告になります。
そうするとハレーションが起こってもおかしくありません。
社員が夢をもって仕事をしてもらえるためには評価制度を今いる社員のために変える必要がある。
会社の中にはフルタイムで勤務できる人、時間短縮社員、契約社員、派遣社員、パートアルバイトなどいろいろな雇用形態で働いている人たちが混在をしています。
100人の社員がいれば、100通りの評価があるはずなのに、1つのルールと評価表が存在するだけ。
100通りの人事評価を作ろうとしたら、ごく限られた人たちだけで制度を作ることは難しい。
トップダウンではなく、究極のボトムアップとも呼べる「人事制度を従業員が考え、構築する」ことができ、どうすればより良い環境でモチベーション高く働くことができるか、そのために「その従業員に合った人事制度を作りましょう」というものです。
働く場所、時間、複業など既成概念を取り払う
一部の企業では導入をしていますが、フレックスタイムの導入、リモートワークスなど、働く場所や時間にとらわれない働き方が進んでいます。
現在ではインターネットの普及に伴い、スマートフォンかパソコンがあれば、自宅やコワーキングスペースなどでテレビ会議などができてしまうからだ。
大事なことは成功体験を積んで定着させること。
成功体験を積めば周囲やマネジメントをする上司も最適な仕事の進め方が分かり、良い制度が「継続」するようになります。
自分達で責任を持って作った人事制度であるということも後押ししており、この制度を活性化させようと従業員自らが主体的に取り組んでいます。
このように自分達で制度を作ることにより、自分たちのニーズに合った制度ができ、さらにそれを実行し成功体験を積み重ね続ける事で、その制度が継続します。
また、「副業の自由化」として、会社に断らずに副業を可能とするなど、従業員のワークスタイルを柔軟にすることで、従業員が意欲を持って働くことになり、良いスパイラル生まれ、離職率の激減につながりました。
入社後のフォローを徹底する
人事の仕事というのは採用して、入社をしてもらったら終わりではない。
入社をしてもらったら、活躍をしてもらって、出世をしてもらうか、フォローをしながらキャリア形成を手伝うなど、その人の入社から退職までフォローをするのが役割になります。
入社をした後、現場に丸投げをしているだけではなく、人事がフォローをしていくことが必要になります。
直接の上司にはいえないこともある可能性があり、守秘義務を守りながら入社後1年はフォローをしていくことが必要です。
このような部門間を超えた連携は離職率低下に大きな影響を与えています。
もし、離職者が出ても離職理由を深くヒアリング出来るので、その後につながりやすくなります。
1:無断残業をNGにする
大手企業の場合については、就業時間内に残業申請をして上長が承認する形であれば問題はありません。
中小企業やベンチャー企業の場合は、残業申請システムや制度ができていないことが多く、長時間労働、休日出勤が当たり前になります。
このシステムや制度を作ることによって、生産性が上がり、残業時間が削減され、長時間労働も改善されます。
どうしてもしなければならない際は、上長への申告が必要になってきます。
残業する理由、しないようにするための対策なども上長と話し合うので自然と労働時間も短縮されます。
2:大部屋にしてコミュニケーションを活発化
社長、役員については、個室が用意されている会社が多くありますが、何をやっているのかわからない現状があります。
本社組織については、大部屋にすることができれば、社長や役員がどんな仕事をしているのか、何をしているのかがわかるのと同時に、コミュニケーションが容易に取れるようになります。
トップダウンでモノゴトが決まるのではなく、企業価値の創造をするために同じ方向に向かってすすんでいくという一体感が生まれるきっかけになります。
そうすると、会社の経営理念や行動指針を本社社員が行動として起こすことによって、全体に波及することになり、全社的にも新しいことを始めるにも、一気にドライブがかかる組織へと変更していくことになる。
3:何が悪いのか!?を考えて、対応策をたてる
入社をするとOJTということで、教育研修については現場に丸投げになっていることが多い。
そうすると、たいていの場合は、見て、考えて、行動して、修正してというサイクルを繰り返すことになる。
この風土により、現場での新人へのスキルやノウハウの共有不足やコミュニケーション不足が発生したのです。
経営合理化が進み現場の人員は少ない中で、新人の気質は時代によって変わります。まずはこの風土を根本から変えました。
4:メンター、シスター制度の導入
現場の先輩が新人をマンツーマンで見る制度です。
徹底的に新人へ教育するという風土に変えました。
一か月の目標を先輩と一緒に立て、それをしっかりと振り返る。
その目標設定や振り返る時間もキチンと作ることで、制度の浸透を徹底しました。
「時間を掛けてじっくり話が出来るので記憶に残る」
「年齢が近い先輩なので、今の段階で学ぶべき事を教えてもらえる」
このような現場の声もあがっており、良い効果を発揮しました。
また、「中間管理職の育成研修にもなっている」と新人・若手先輩社員両方の育成効果が見られました。
さらに、「個々人の知識が足りずに十分に教えられないところは、自然と周りの従業員が補ってくれた」と、組織全体のコミュニケーションが活発化してきたとのことです。
5:教育研修制度の見直し
バブル経済崩壊後、真っ先に予算の削減をされたのが教育研修に関する分野。
そのため現場に丸投げになっていたため、教育レベルも社員のレベルもバラバラで個人商店の集まりになっていました。
そこで教育研修制度を見直すことによって、画期的な改善をもたらす事になります。
管理職研修、営業力強化研修、組織マネジメントなど、部門や立場によってさまざまな研修を用意しました。
最初は抵抗があった研修ですが、成果を出す社員がでることで、支店長や社員の本気度が変わりました。
それにより、各現場でのマネジメント能力が向上し、「俺の背中を見て育て」というやり方ではなく、現場を「マネジメント」するという共通認識を生み出す事に成功しました。
6:コミュニケーションの改善
最近、ビジネスパーソンの間で注目を集めている1ON1ミーティング。
私は会議室やカフェなどでリラックスした状態で話を聞いたり、自分が気づいたりする時間を設けるようにしていました。
メンバーと30分、1時間程度話ができるように常にしておく。
スケジュールを公開しておけば、メンバーが勝手にスケジュールをひも付けすることになる。
その際にメモを取ることはしてはいけない。
メモを取ることによって緊張感が走ることもあるからだ。
その他にも、経営者や役員、全社員を対象に全社日報を作成していた。
日々の業務日報はもちろん、上層部への提案、新規事業計画など業務を通して発見をしたことなどまとめて提出する。
そうすることによって新規事業がはじまったり、人事制度の改変にもつながったり、メリットがあった。
これらは昔からあった制度ですが、まさに絵に描いた餅状態で形骸化されていました。
社員のコミュニケーションを円滑にすることによって、社員のやる気やワークライフバランスに関する施策が積極的に活用され、さらに活性化につながるという好循環が生まれました。
このような相乗効果があり、離職率の低下へつながっていきました。