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【休職体験談 No.8】「夢の総合商社という泥沼で、2年目の僕は完全に詰んでいた」

こんにちは。休職タイムズです。今回は25歳商社マンの北村さん(仮名)の休職体験談をお届けします。


プロフィール

  • 仮名:北村 優作(仮名)

  • 年齢:24歳

  • 性別:男性

  • 職種・業界:総合商社/プロジェクト部門(投資案件を扱う部署)

  • 在籍年数:2年目

  • 休職(退職検討)理由

    • 書類作成・社内調整の泥沼から抜け出せず、心身ともに消耗。

    • 「自分は何者にもなれていない」という焦燥感と、先が見えない暗黒感に支配されてしまった。

    • とことん苦しんだ末、「これ以上ここにいても腐るだけだ」と思い、休職を決断。


1. 「大金を動かす」「世界を相手にする」――そんな幻想に捕らわれた自分

総合商社に入るまで、僕は完全に浮かれていた。
大学時代はどいつもこいつも「商社は華やか」「若手が世界を股に活躍」みたいな話をしていて、メディアも大きな投資の成功談をこぞって取り上げる。おまけに内定者懇親会では「ウチは若手がどんどん挑戦できるんだ」と甘い言葉を添えられ、
「ああ、これは勝ち組コースだな。エリートだな」
と単純に思い込んだのが運の尽きだった。

配属先は希望していた投資案件のプロジェクト部門。ニュースになるような大口投資を扱う先輩方を横目に、「俺もデカい仕事で歴史に名を残してやる」――そんな大言壮語を頭に描きながら入社した、1年目の春までは。


2. 笑えない泥仕事――“社内調整地獄”という沼

蓋を開けると、現実は腐った沼だった。
投資型ビジネスの“上流”には違いないが、結局僕が任されるのは「社内決裁」「リスク管理」「延々と続く資料のリライト」ばかり。
一度作った資料を上司に提出すれば「ここ、てにをはが気に入らない」「もっと説得力を持たせろ」と突っ返され、部長クラスに出せばまた細かい文言チェックと押印作業、それが完了してもリスクマネジメント部門や法務、経理など多方面での承認が終わらない。
結局1カ月かけても「何も決まっていない」なんてザラ。

大企業だから仕方ない? ふざけんな。こんなクソみたいなルーチン地獄を、「大きな金が動くから当然だ」で済ませていいわけがない。何度も「これは誰のための仕事なんだ? どの顧客のためなんだ?」と嘔吐しそうになった。


3. 同期の墓場――「俺たちは本当に何を学んでるのか?」

同期はみんな口先では「大変だけどやりがいあるよね」なんて言う。でも、実際に酒の席で本音を聞けば、どいつもこいつも

  • 「社内調整に追われて気が狂いそう」

  • 「上司の顔色ばかり伺って、年収稼げても人生つまらん」

  • 「まるで小さい頃に憧れた“冒険”なんて微塵もない」

とボヤいてる。おまけに、知識も技術も何も身につかない。内情としては、商社内のルールや決裁フローを覚えているだけで「お前は有能だな」と言われる世界。
そんなの外に出たら何の役にも立たないのは火を見るより明らかだ。みんな心の奥底でわかってるんだよ。でも「給料はいいから」と、そこで思考停止するしかない。

自分もそうだった。“1年目だし仕方ない”で耐えてた。でも2年目になってもその沼から抜け出せる見込みはゼロに等しかった。「あと3年後、5年後、課長代理とかで同じようなことしてるのか」と想像するだけで鳥肌が立った。


4. 「もう腐るしかない」――抜け出せない歯車感と絶望

考えた。正直、こんな仕事にしがみつかないで転職すりゃいいんじゃ? …でも転職市場で自分は何ができる? “商社内の管理プロセス”しか知らない、「社内価値」だけを高めてきたこの2年間。
外で通用するスキル? 何もないよ。ふと鏡を見たら、目が死んでる自分がそこにいた。

何が最悪って、周囲の先輩たちも同じ泥仕事に浸かりきってるのに、そこから逃げる気配すらないことだ。彼らいわく

「若手のうちはこうやって社内ノウハウを吸収するんだよ。そのうち大きいプロジェクトの舵取りが回ってくる」

いや、回ってくるわけねーだろ。巨額投資なんて結局部長や役員クラスの裁量で決めるだけで、若手が判断できるわけがない。大企業の階層構造を甘く見るなって話だ。それでも希望的観測を抱いて耐え続けるなら、ただ腐るだけだ。


5. 身体が悲鳴を上げるより先に“辞めたい”が勝った

最終的に限界が来たのは、ある土日のこと。金曜の深夜にようやく会社を出て、土曜に久々の休みを満喫しようとしたが、結局「月曜提出の資料を修正しろ」と上司から連絡が入り、その日の午後は自宅でパソコンに向かいっぱなし。何度も電話会議で“てにをは”の直しを打ち合わせ。

日曜の夜になって急にモノがバカらしくなった。
「これ、いくら金もらっても無理だ。俺の人生、あまりに空虚すぎる」
そう思った瞬間、心がざわついて、もう通勤電車に乗ることが怖いとか、体調がどうとかよりも、“こんな会社に残りたくない”という怒りに近い感情が込み上げてきた。

翌日、意を決して課長に「体調が悪いので休ませていただきます」とメールを打ったが、それは事実上「出社拒否」宣言だった。


6. 休職届を出したあとに襲う“嫌悪感”と“救い”

会社には「体調不良による一時休職」という形で書類を提出した。
課長や部長は「大丈夫か? 休むのもやむを得ない」とか言ってくれたけど、そもそもその体制を生み出してるお前らが原因だろ? と内心は思う。どいつもこいつも自分が属する組織を守るためにしか動かない。

優しい言葉をかけてくれる先輩もいる。でも、こんな偽善的な同情を向けられても逆にイラつくだけだ。頑張った結果があの大量のてにをは修正? たかが数億円から数百億円を動かす“大事な仕事”だろうが、それをどう意義づけたらいいのかわからない。
外にはド派手な“商社マン”の看板を掲げるくせに、内実は腐り果てた“決裁プロセス地獄”。こんな場所でさらに数年頑張れなんて、無理だ。


終わりに:後悔と徒労感と、わずかな祈り

今は休職という形を取ってるが、ほぼ辞めるだろうと思っている。
後悔はある。せっかく一流と言われる大企業に入って、この体たらくかよ。周りから「意志が弱い」「忍耐力が足りない」と言われるかもしれない。でも、ここで我慢し続けるほど俺は鈍感でもないし、命をかけるほど価値のある仕事とも思えない。

この先どうするのか、ビジョンはない。ただ、これ以上この沼に浸かって己が腐りゆくのを眺めるよりは、何もない荒野に飛び出して爪を研ぎ直すほうがまだマシだ。
大企業の看板にしがみつくも良し、外に出るも良し――それは人それぞれ。だけど、少なくとも俺はもうあの世界に戻りたくない。

なんとなく分かってくれる人がいるなら、それだけで少し救われる。


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