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【休職体験談No.17】「デザイナーはただの駒? クリック率ばかり求められて疲弊したWeb制作会社での話」

こんにちは。休職タイムズです。今回はWEBデザイナー篠原さん(仮名・26歳女性)のエピソードをお届けします。


プロフィール

  • 名前:篠原 夏実(しのはら なつみ)

  • 年齢:26歳

  • 性別:女性

  • 前職:Web制作会社のデザイナー(新卒入社4年目)

  • 休職理由

    • クリエイティブよりもCVRやCTRなど“稼げる指標”を最優先する風土に嫌気がさし、デザインの価値を見失いそうになった。

    • 次々舞い込むキャンペーンバナーやLP制作を短期スパンで量産させられ、心身ともに疲弊。

    • 自分が「使い捨てのコマ」にしか見られていないと感じ、適応障害の一歩手前で休職に至った。


1. 「デザイナーとしてWebを彩る」という夢

学生時代からイラストやタイポグラフィに心惹かれ、大学ではグラフィックデザインやUI/UXの基礎を学びました。就職先としてWeb制作会社を選んだのは、

「デザイナーの力で、ユーザーの心を動かすようなビジュアルを作りたい!」

と思ったから。面接でも「若手に裁量を与える」「クリエイティブを重視する」と言われ、ここなら自分の感性を活かせると期待していました。最初のうちは先輩のフォローのもと、ベーシックなバナーやランディングページの制作を任され、少しずつ手応えを感じていたんです。


2. 「とにかくCVRを上げろ」——デザインより指標ありきの現実

ところが2年目を過ぎた頃から、会社の方針が売上重視・数字重視に舵を切り始めました。社内会議で飛び交うのは「直近のCTR(クリック率)が下がってるぞ」「CVR(コンバージョン率)をあと2ポイント上げろ」などの“KPI”の話ばかり。もちろんそれ自体はビジネス上必要ですが、いつの間にか**「デザイナーの意見や美意識」は二の次**にされる雰囲気になっていたんです。

たとえば、クライアントが「もっと派手に」「赤字で“今だけセール”をゴリゴリ押し」などと要望してくると、本来のブランドイメージやアクセシビリティが損なわれるにもかかわらず、上司は

「数字が上がればいいからやれ」

と一蹴。「ユーザーにストレスを与えるかも?」などという懸念は、極端に言えば耳を貸してもらえず、**「うちは稼いでナンボなんだよ」**で片付けられるのでした。


3. デザイナーは“単なる実装担当”扱い——激務と虚無感

会社がこうした数字優先の方針をとる以上、案件数も際限なく増えていきました。新規クライアントのLPやSNS用画像を3日で10種類作れなんてザラ。深夜残業や休日出勤が常態化しても、経営陣は

「少人数で成果を出すのが我々の強みだ」

と豪語するばかり。人手を増やすどころか、コストカットのためにデザイナーの増員を渋り、既存メンバーに作業がのしかかります。「クリエイティブを磨く」という以前に、“ベルトコンベアで量産する”ような働き方だったんです。

私のなかでは、「何のためにデザインを学んできたんだろう?」という虚無感が日に日に大きくなりました。「誰もユーザー目線のUI改善とか、ビジュアルのコンセプトなんて聞いてくれない」——ここまで徹底して稼ぐことだけ追求されると、デザイナーとしての存在意義がゼロに思えてしまうのです。


4. 休職を決めるまで ——「体も心も壊れる寸前」

膨大な仕事量に加え、社内の雰囲気も余裕がなくなり、制作スケジュールの見直しや提案をすれば

「それより早くデータ納品して。KPIが下がったら責任取れるの?」

と返される毎日。結局、何も言わずに黙々と作業するしかない。平日は終電、週末は強制出社が続くうちに、私の体は悲鳴を上げ始めました。頭痛や胃痛がひどく、朝起きられないときも増えて、でも休むと上司に「これ以上締め切り遅れるなよ」と詰められる——まさに地獄のループです。

そのうちストレスで夜眠れず、まともに食べられなくなり、医師に相談すると「過労とストレスによる適応障害」と診断されました。何とか診断書を提出し、会社に「しばらく休みたい」と伝えたところ、渋々休職が認められたんです。正直、その瞬間は**「やっと解放される…」**という安堵感しかありませんでした。


終わりに

Web制作会社にいる以上、CTRやCVRなどの指標が大事なのは当然。けれども、その数字を上げるために**デザイナーがまるで“単純労働の駒”**のように扱われ、クリエイティブの価値を踏みにじられる環境で働き続けるのは苦痛でした。確かにビジネスである以上、利益を出すことが使命かもしれません。でも、それでデザイナーが消耗し、デザインの本質的な楽しさや意味が失われるなら本末転倒だと思います。

私が休職を決断したのは、「これ以上ここにいたら、デザイナーとしても人間としても壊れてしまう」と感じたから。今は休職中にじっくり心と体を休ませながら、次のステップを模索しています。
「数字にこだわる」ことは悪いことじゃない。でも、“数字さえ良ければクリエイティブなどどうでもいい”という極端な風潮
は、デザイナーとしてのモチベーションを奪うだけでなく、結局は長続きしないのではないでしょうか。もし同じように“稼げる指標”を最優先されて、やりたかったはずのデザインができない状況に苦しんでいる方がいるなら、ぜひ一度立ち止まって考えてみてください。あなたのスキルや想いを活かせる場所は、きっと他にもあるはずです。


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