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【休職体験談 No.9】「地元の火力発電所を去った僕が、再生可能エネルギー企業へ転職するまで」

こんにちは。休職タイムズです。今回は25歳元大手電力会社勤務の鈴木さん(仮名)の休職体験談をお届けします。


プロフィール

  • 名前:鈴木 信也(仮名)

  • 年齢:28歳

  • 性別:男性

  • 前職:大手電力会社/火力発電所の運用・保守担当(新卒入社後6年間在籍)

  • 現職:再生可能エネルギー関連スタートアップの技術部門に転職

  • 休職理由

    • 地方の火力発電所勤務でプライベートをほとんど犠牲にし、心身ともに疲弊。

    • 「最新の再生可能エネルギーに携わりたい」という思いと現職とのギャップが大きくなり、自信喪失に。

    • ついにメンタル面で限界を迎え、医師の勧めもあって休職へ。


1. 「地元に貢献したい」――新卒入社時の強い思い

理系の大学を学んでいた私は、地元のインフラを支えたいという気持ちから大手電力会社を志望し、新卒で念願の内定を得ました。配属されたのは、地方にある火力発電所。地元に近い場所でもあり、「地域の人々の生活を文字通り“支える”仕事ができる」と当初はとても喜んでいました。

実際、最初の1〜2年はタービンやボイラーの仕組みを学びながらメンテナンス作業の基礎を覚えるのが新鮮で、やりがいを感じていたんです。先輩や上司も親切で、オフの日には同期と近隣の温泉へ行くなど、地方ならではの楽しみもあり、「これが自分の道だ」と思っていました。


2. 24時間体制の保守業務と、失われていくプライベート

しかし3年目を過ぎたあたりから、発電所の運用保守における24時間体制の過酷さがじわじわと身体に響いてきました。火力発電所は稼働しっぱなしなので、トラブルがあれば深夜だろうが休日だろうが呼び出しがかかる。保守担当の人数が限られているため、代わりがいないのです。

  • 平日夜でも電話が鳴れば現場へ急行

  • 休日に実家へ帰省しようとしても急なトラブル対応でキャンセル

  • 休みの日でも気が抜けない、常に連絡が入るかもしれない不安

こうした日々を続けていたら、いつしか友人からの誘いを断ることも増え、都会にいる同期との距離がどんどん離れていきました。実家や恋人ともなかなか時間を合わず、「地元貢献どころか、自分の生活すらままならないじゃないか」と不満が募り始めたんです。


3. 「再生可能エネルギーをやりたい」という理想とのギャップ

さらに、私が入社前から興味を持っていたのは再生可能エネルギー。大学でも太陽光や風力発電の研究室に出入りしていたこともあり、「いつかは大手電力会社で最先端のクリーンエネルギー事業に関わりたい」と考えていました。
しかし実際には、既存の火力発電所の設備保守が主業務で、新しい案件について話を持ちかけても、上司は

「再生可能エネルギーはまだコスト面や地盤調整が難しいんだよ。現実的じゃない。まずは目の前の火力をしっかり維持しろ。」

と取り合ってくれないのが現状でした。社内に再エネ部門もあるにはあるのですが、異動希望はなかなか叶わず。大きな組織特有の人事ローテーションに埋もれているうちに、「このままでは一生、火力の保守管理しかやれないんじゃないか?」と焦りが強くなりました。


4. 休職を決断したきっかけ:医師からの「このままじゃ危ない」

5年目に入ると、とにかく仕事中心の生活が当たり前になり、体力も気力もギリギリで回している状態に。深夜に緊急呼び出しがあり、そのまま朝まで現場対応→翌日は普通に勤務、というハードなスケジュールもしょっちゅう。毎日慢性的な疲労を抱えながら、何とか踏ん張っていたんです。

しかし6年目を迎える頃、勤務中に頭痛やめまいが頻発するようになり、病院を受診したところ医師から

「過労とストレスが原因ですね。少し仕事をセーブしないと、このままではまずいですよ」

と言われました。周囲は「ちょっと休めば大丈夫」「若いから平気だろ」と軽く見る人もいましたが、私は自分の限界を強く感じていました。もともと再エネ志向だったモチベーションはほぼゼロにまで落ち込み、さすがに「このまま同じ環境で働き続けるとダメになる」と思い、休職を決めたのです。


5. 休職期間中に見つけた「新たなチャンス」と転職活動

休職に入って最初の数週間は、とにかく自宅で眠り続けました。身体はもちろん、心がとても疲れていたんだなと実感しました。
ある程度休養した後、徐々に「これからどうするか」を真剣に考え始めたとき、ふと大学の同期がSNSで「再生可能エネルギー関連のスタートアップに入った」と書いていたのを思い出したんです。連絡を取ってみると、風力発電の技術開発を進める若い企業で、まだ社員数も少ないけれど、やる気のある人材を欲しがっているという話でした。

「大手みたいに整った制度はないけど、やりたい人には大きな裁量を任せるよ」

そんな誘い文句を聞いたとき、「これが自分の本当にやりたかったことかもしれない」と胸が高鳴りました。もともと大学で学んだ再エネの知識があり、火力発電所での保守管理経験も生かせる可能性がある――そう思うと、「このまま復職して同じルーティンに戻るより、一歩踏み出すべきだ」と考え、転職活動を始めました。


6. 退職と転職、そして今

最初に休職を申し出たとき、会社や上司から「もう少し続けたら?」「安定した大企業を辞めるなんてもったいない」と言われました。しかし自分の価値観や将来を考えると、もう後戻りできない気持ちが勝っていました。結局、休職期間終了後に退職届を提出し、地元を離れることを決断。


終わりに

大手電力会社で働いた6年間を振り返ると、「地元に貢献したい」という初心は確かに満たされていました。しかし、あまりに過酷なシフトやトラブル対応で自分のプライベートを犠牲にし、さらに再生可能エネルギーへの思いが実現しづらい環境に、次第にモチベーションが蝕まれていったのが現実です。

休職という形で一度立ち止まることには不安もありましたが、その時間を使って自分が本当にやりたい仕事は何なのかを見つめ直すことができました。そして今は、規模は小さくとも「風力発電」という自分の興味とやりがいを直結させる道を歩み始めています。収入や福利厚生は前職ほどではないですが、毎日が充実しているのを実感しています。

もし同じように、「安定しているから」「地元に貢献したいから」と大手インフラ企業に勤めるなかで、不安や違和感を抱えている方がいたら――一度、自分の本音や将来のビジョンを確認してみてください。自分が心から納得できるキャリアを選ぶためには、一時的に休んででも“自分の軸”を見極める時間が必要だと、私は身をもって痛感しました。

「地元も大事だけど、自分の人生も大切」そんな当たり前のことを思い出せた休職と転職は、今になってみると大きな転機だったのだと思います。


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