あるフィリピンの子の「魔法の言葉」
「魚釣れるといいね?心臓がどきどきする。たくさん魚を釣って皆で食べるんだ!」
「美味しい!美味しい!って言って食べると本当に美味しいね!」
その料理は焦げていて味は薄い。そんな「シンプル」な料理だった。
私が大学生の頃の、ある山村での物語である。
携帯電波も届きづらい山村で、ある小学生と生活を共にした。落ちている竹を探し求め、3時間かけて釣り針を括り付ける。「釣竿作り」それだけで「普通の子」は飽きてしまうだろう。
その子はフィリピンから日本の山村キャンプに参加していた。まん丸の人懐っこい顔つきをした彼は、弟やキャンプ仲間のために小川での魚釣りに挑んだ。
「釣れるといいね」という私の言葉かけは、(無理だよな)という大人の解釈をなんとか押し殺したものであった。
針先にはエサは無いのである。
「魚釣れるといいね?心臓がどきどきする。たくさん魚を釣って皆で食べるんだ!」
(純粋というのかそれとも・・・・)
彼は釣竿を胸に抱え込むように帰路についた。
魚は(やっぱりと言うべきか)釣れなかった。
こんなこともあった。
私が日本の子どもたちと一緒に料理作りに挑んだ。しかし、料理は焦げていて味は薄い。そんな「シンプル」な料理が「完成」した。
日本の子どもたちはお腹がすいているにも関わらず箸が進まない。
「彼」がこう発した
「美味しい!美味しい!って言って食べると本当に美味しいね!」
何の疑いも無い瞳で私を見つめ「美味しい」と。
「なんて素敵なんだ。なんて魔法の言葉なんだ」
大学生の私は、フィリピンの現状を教科書でしか知らない。でもそんな国境なんて関係なく、「なんて素敵な子なんだ」と心が動いた。
釣り針にエサがなくとも仲間のために動きたいという気持ち
一緒に食べる「人」がいることで本当に美味しく感じる心
目に見えるものがすべてではない。
数字で表すことができることがすべてではない。
そんな感性を揺さぶられるような「偶然の出来事」が今の私の生き方につながっているのかもしれない。
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