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人事制度は構築だけでなく運用まで考えることが大事
従業員の労務管理や従業員の処遇に関する仕組みで、組織運営における人事上の様々な施策や規則を定めることの全般を指して人事制度と呼称されます。
しかし、人事上の制度となると募集や雇用契約、退職解雇など就業規則と混同されてしまう可能性があることから、近年「等級制度」や「評価制度」、「報酬制度」などを絞り込んで人事制度とされることが多くなってきました。
特に最近は終身雇用制度の実質的な破綻や年功序列型雇用(メンバーシップ型雇用)のように、仕事ではなく人に賃金を支払う雇用制度が見直される風潮が徐々に強くなってきたことから「ジョブ型雇用」が注目されるようになってきており、人事制度の重要性が高まってきています。
また、人事制度は構築することがゴールではなく、運用しながら常に見直しながら何が自社組織にとって最適なのかを模索していくことが重要です。
人事管理は組織の根幹である
おそらく、多くの事業者では見知ったことであり、実際に身を以て体験しているものであろうことを承知の上で書きますが、人事制度とは組織運営における根幹的に重要な立ち位置にあるものです。
人事制度には主に「等級制度」「評価制度」「報酬制度」を規定し、円滑な組織運営における骨子ともいえるもの。それらを考える上での前提としては、人事管理を「思いつき」や「個人の好み」、「場当たり的」に行うものではないということです。
特に人材の序列や責任、権限などを定める等級制度は人事制度の中でも軸になるもので、ここで定める内容が他の制度にも大きな影響を及ぼすものとなり「経営目的の実現」や「従業員の所属価値の向上」に必要不可欠なものだといえます。
何を基準に投球を定めるのかは企業の人事観が反映され、組織デザインや企業風土にも大きな影響を与えることになることから、上記している通り雰囲気や空気などといった曖昧な制定のされ方をしてしまうと組織が瓦解してしまうことになりかねません。
しかし、新たに構築する場合や見直しから制度の組み直しを行う場合、何を基準に定めるべきなのかを判断することが難しいというのが本音ではないでしょうか…。
何を持って自組織にとって最適なのかは、何度も構築と運用をしなければわからない部分が多々あります。
ポイントとなるのは、従業員への還元が組織運営にも還元されるような循環を生み出すことで、もっとわかりやすくするならば従業員のがんばりが組織の売上や利益に反映され、その売上や利益が従業員に還元されるような状態を目指すことです。
事業戦略と合致しているのか
組織は常に事業戦略、事業計画を構築し、その計画に沿って事業活動を行います。
人材の獲得を行うにも1年を通しての事業目標から逆算し、どんな役割を担う人材が必要なのか。その役割を担う人材の特徴や実績、経験等はどんなものが望ましいのかを丁寧に策定し、その上で募集要綱を定めて求人情報として公開します。
仮に組織が求める人材が応募してきてくれた際に自組織にはどんなキャリアプランがあるのか。そのプランはどんな制度のもとに評価され、その評価はどんな形で報奨となって還元されるのかなどを説明する必要があります。
そのため、組織にとって事業戦略は単なる事業活動、営業活動における目標設定のみならず、人事制度や人材の獲得においても重要な役割を担うことを意味します。
同時に、そこが蔑ろになってしまっていると優秀な人材が外部に流出してしまう可能性も高くなってしまいかねません。
事業戦略は魅力的な実現が可能そうに見えたとしても、それを実際に手掛ける従業員がそれに見合った報酬を得られない、もしくは自身のキャリアパス・キャリアビジョンが思い描けないなどといった後ろ向きな感情を抱いてしまっていては組織運営における大きな損失であるといえます。
仮に首都圏の大企業でうまくいった事例を地方都市の中小規模事業者に当てはめてみたところで、組織規模も違えば事業内容がまったく違う業界の制度を組み入れたとて、それでは組織がまったく機能しなくなってしまうでしょう。
従業員の成長に寄与するような仕組みに
また、経営者の目線から重要であると考えた事項を取り入れた制度制定したとしても、実際の現場には則さない制度となってしまっては形骸化してしまうことも可能性としては少なくありません。
さらに、実際の現場に則さないということは、いくら従業員ががんばって成果を上げたところで評価に反映されず、報奨を得ることにもつながりませんから従業員の不満につながってしまい、最悪の場合には退職することも想定できてしまいます。
それを経営者の視点だけを振りかざして「努力の方向が違う」と切り捨ててしまうことは簡単ですが、どうせなら経営者と従業員が同じ方向を見て進めるような制度にすることで精神論ではない組織運営が可能になるといえるのではないでしょうか。
従業員の一名ずつに最適化した仕組みを構築することは難しいとしても、部署や課などチーム、グループ単位での評価事項は根幹となる制度が固まっている状態であればアレンジは可能なはずでしょう。
人事制度における根幹となる等級制度が重要である点を踏まえつつ、そこから各事業ごと、活動ごとにおける評価項目をアレンジし、従業員のがんばりや努力がしっかりと評価される組織であることは、結果的に従業員の成長と組織の成長が相関していくものだといえます。
定めるだけでなく、常に運用して改善点があれば見直しを行い、根幹となる部分をブラッシュアップしていくのと同時に、アレンジで様々ながんばりに応えられるようにすること。
人事制度は組織運営における根幹であるからこそ、自社にとっての強みや利益を生み出すための仕組みづくりも含めて考えていきたいものです。
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