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動画面接の信用度とは?


動画面接、知っていますか?

「動画面接について書いてください」
ん?なんだそれは…、と思ったのが最初の感想でした。

 2023年に出版した拙著「エントリーシートと自己分析をひとつひとつわかりやすく。」ですが、依頼を頂いた際に、動画面接について触れて欲しいという話がありました。 

そういえば、キャリアカウンセリングをしていると、学生から「1分自己PR動画を送る課題が出たんですが、何を話せばいいですか?」という相談がちらほら出始め、はは~ん、このことだなと思いました。

調べてみると、「動画面接」には大きく2種類あることが分かりました。
①書類選考としての位置づけの動画面接
②面接の代替としての動画面接

①は1分間で動画を撮って送ってください、というケースが多く、「1分自己PR動画」と言われるものです。書類選考と同じような位置づけで、応募学生の絞り込みといった目的があるようです。
 
書面では分からない、基本的なコミュニケーション能力を試しているようです。
 
②のケースは、まず企業指定のアプリをダウンロードしたり、システムに登録したりします。ログイン後にスタートボタンを押すと、質問が出てきて、それに回答する様子が録画されます。録画された様子をもとに選考が行われるという仕組みです。企業が選考過程で今まで何回か面接していたうちの1回を動画面接に置き換える、といったような運用がされているようです。
 
基本的なコミュニケーション能力を試すこともさることながら、受け答えの内容なども吟味したいという意図があるようです。システムによっては、AIがその受け答えの様子を判定する、なんてこともあるようです。
 
時代の変化に驚くばかりです…。

本当に、学生をそれで評価できるのか!?

近年の「大学生の売り手市場」によって、
採用側の方々からは苦戦しているという話をたびたび聞きます。
 
目標人数を採用するために活動量を増やしたい。でも、間接部門でもあることからなかなか人員増のための予算を割きづらい。そこで、動画選考を導入することで、応募者への接触を増やすことができる可能性があります。これまでにない手法を模索しているのでしょうね。
 
それはそれで素晴らしい試行錯誤だと思うのですが、それと同時に「本当に学生の魅力を理解できるのか」「評価するために、測りたいものを、測れているのか」という疑問がわいてきます。
 
1分動画などは、これまでの集団面接で行ってきた「基本的なコミュニケーション能力の確認」であることは間違いないので、話している雰囲気が明るいかどうか、はきはき話しているかどうか、などが評価のポイントになっているかとは思いますが。

今回の研究論文のご紹介

そこで、そういった疑問に対する
1つの意見になりうる研究論文をご紹介します。
 
録画型採用面接に対する妥当性評価と影響要因の分析
文教大学の論文集に2023年に発表された論文です。
 
大学3年生15名のオンラインで行われた模擬面接の様子を録画し、2名の企業人事担当者(マネージャー、スタッフ)と、上場企業に内定をした大学4年生4人が評価したらどういった結果になるか、という実験結果をまとめた論文になります。
 
この論文は「実験」という手法を用いて行われた研究になります。
ここで少し研究・論文について触れておきますと、研究を行う上で良く出てくるキーワードに「妥当性」「信頼性」というものがあります。
 
量的・質的・実験などの手法を使って、知見に辿り着こうとするのが研究と言えますが、測りたいものが測れているのか、見たいものが見られているのか、という問いかけが常に生まれます。そこで、研究の妥当性と信頼性をどう担保するかが重要な視点になります。
 

この研究の問いは、「企業の人事担当者は録画された面接で評価を正しくできるのか」というものであり、人事担当者と大学生の評価結果の比較から、正しく評価できているのかを明らかにしようとしたと考えられます。つまり、大人と学生の比較をすることで妥当性を見ようとしたわけなのです。
 
結果としては、以下の内容が書かれていました。

企業人事担当者間の評価の一致度は高く、かつ総合評価を基準とした場合の他の評価項目(志望動機、自己PR)の評価の構成概念妥当性も高いことである(分析1)。このことは経験を積んだ企業人事担当者はお互いに評価する人材像(評価モデル)を共有しており、それに基づき妥当性が高くかつ整合性の高い評価を行っていることを意味する。

(p.7より引用) 

対して、学生4名の評価はばらつきがあったことも述べています。

 人事担当者の2人は新卒採用におけるいわゆるペルソナをおおむね共通認識で持っていることもあり、同じような評価を出していたというわけなのです。対して、学生4名の評価はばらつきがあり、妥当性・整合性が無かったといえます。つまり、人事担当者は録画されたものであっても、評価ができると主張しているといえます。

まとめ

 動画面接、動画選考を受けたことがある人は
「こういうことで、評価できるのか?人の魅力が分かるのか」と考えたことがあるはずです。

今回ご紹介した研究では「評価できる」という結果ではありましたが、まだまだこれから研究されていくであろう分野ではあるので、注目していきたいと思います。

一方で、録画面接で分かること、分からないことがあることも間違いありません。
私もコロナ禍を経て、オンラインでの面接練習の機会も増えてきましたが、やはりオンラインでの印象と対面での印象が違っていたりすることもあり、人を理解することの難しさを日々感じています。
 
基本的なコミュニケーション能力などを評価するために動画面接を行い、さらに詳しく深く学生を理解するために対面の面接を行うという運用が多いようですが、より一層そういったすみわけが複雑化していくのか、「やはり顔を合わせてみないと」という意見が主流になり原点回帰していくのか、とても興味深いと感じます。
 
学生を支援する側の人間も、就活する学生も、時代の変化にあわせて柔軟に就活ができるようになっていくと良いなと思います。

【引用文献】
森一将、澤田奈々実、大江朋子、橋本貴充、渋井進(2023)「録画型採用面接に対する妥当性評価と影響要因の分析」文教大学経営学部 経営論集Vol.9, No.6.pp.1-8


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占部礼二(著)


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