【私見】USCPAの特殊性(学歴要件)
USCPAの受験資格は?
USCPA試験の特徴の一つとして、受験にあたって学歴要件が課されているという点があります。
日本の公認会計士試験は(以前は学歴要件がありましたが)現在では学歴要件が撤廃され、年齢、性別、国籍を問わず、誰でも受験することができます。
一方、USCPAの場合は、(私が受験した当時も学歴要件がありましたが)現在の要件はさらに厳しくなっています。
学歴要件には、
❶ 受験にあたって満たすべき要件
❷ License取得のために必要な要件(学歴以外の要件もあり)
の2つがありますが、特に❷の要件が厳しくなっており、多くの州で150単位の取得単位を基準としています。
150単位というのは、端的に言えば大学院レベルの学歴が必要とされているという意味です。
州毎に異なる学歴要件
USCPA試験自体は全米の統一試験ですが、学歴要件(受験要件,License取得要件)が州ごとに異なるという点も、USCPA試験制度を分かりにくいものにしている一因と言えるでしょう。
つまり、受験要件とLicense取得要件が州ごとに異なるということを意味します。以下、簡単な例でみていきます。
"Strict"州で(Lisenceを取得して)CPAとして働きたい社会人のAさんの選択肢は3つ考えられます。
1番目は、(受験要件を満たしている)"Mild"州で試験合格し、("Strict"州のライセンスに必要な)学歴要件や実務要件を(後付けで)満たして、"Strict"州でLicense取得を目指すという方法です。つまり、"Mild"州の試験合格実績を"Strict"州に移転する形です。これはTransferという制度で、私自身もこの制度を利用してLicenseを取得しました。
2番目は、"Strict"州の受験要件を満たしてから受験する方法です。そのために、Aさんは追加で(受験に必要な)大学の単位を取得する必要があるでしょう。試験合格後に(さらに"Strict"州のライセンス取得に必要な追加単位等の)学歴要件、さらには実務要件を満たしてLicense取得をするという方法です。
3番目は、"Strict"州のLisence取得要件を満たすことができる学位取得(大学院等)をまず目指す方法です。そして、学位取得の目処が立った後で改めてUSCPAの勉強を行って、"Strict"州での試験合格とLicense取得を同時に目指します。ストイックなAさんであれば、この選択肢を選ぶかもしれません。
日本人受験生の選択肢
CPAとして米国で働きたいAさんには3つの選択肢がありましたが、日本で働く(予定の)日本人受験生の場合はどうでしょうか。
結論としては、「受験要件を満たすことだけを考慮すれば良い」と考えます。つまり、「当面、Lisence取得は考慮対象外として良い」ということです。
理由は3つあります。
一つ目の理由は、日本国内でUSCPAのLicenseを持っていなければできない仕事はないからです。
先のAさんの例に戻ると、Aさんが”Strict"州で会計事務所を開設し、監査の顧客に対して監査報告書を発行(署名)するには、確かに"Strict"州のLicenseが必要です。しかし、日本で(会社員等として)働く限り、このような仕事に巡り合うことはないでしょう。
2番目の理由は、仮にLicenseが必要となった場合は、(Transferを使って)後付けで取得できるからです。
私自身、試験合格後10年ほどしてからLicenseを取得しました。USCPA試験合格後に取得したMBA(大学院)の単位を加算して、Transferの制度を用いてLicenseを取得したのです。
私がLicenseを取得した理由は、先のAさんのような(Licenseが必要な)仕事が生じたからではありません。(学歴要件が偶然揃ったので)これを機に「USCPAであることを経歴書や名刺に書けるようにするため」という理由によるものです。
3番目の理由は、(実はこれが一番大きな理由ですが)USCPA取得のためのコストを抑えるためです。
日本人がLicenseを取得する際、(現実的に)最も取得しやすいのはワシントン州(WA)です。しかし、ワシントン州はLicense取得のための実務要件が緩やかな反面、学歴要件はかなり厳しくなっています(詳細は後述します)。
なので、ワシントン州のLicenseを念頭に不足する単位を取得しようとすると、相当数の追加単位を取得する必要が出てくる(=単位取得コストが嵩む)ということになります。
追加単位の取得は、「本当にLicenseが必要だと判断してから」でも遅くないと思います。
上記3つの理由から、「受験に必要な学歴要件だけ満たすこと」を念頭に受験戦略を練ることをお勧めします。