I-5)脱出できたのは、A級ライセンスのおかげ
こんにちは。Catalyst Kokoの和子です。
外資系企業で長年勤務。キャリアの後半15年は、日本法人の人事責任者とし身を粉にして働き、今は働く人のキャリア相談をお受けしたり、DiSC®という世界中で人材開発に広く利用されているアセスメント(診断)ツールを活用して、コンサルティングや研修講師もしています。
そんな私が1980年代半ばからスタートしたキャリアを振り返り、ツラツラ書き始めました。最初ちょっぴり辛くて暗い経験でしたが、なんとか9か月程度でそんな日々も終わろうとして、次なるチャレンジ、すなわち社内異動が見えてきたところまで、前回書きました。さて、続きです。
新上司と巡り合った出会いの話、その1です。
新上司になるかもしれない技術部門マネジャーは、トルコ人で、アメリカ本社から日本に来ていたエキスパット(駐在員)のG氏。秘書が寿退職することになったため、急ぎ後任を求めていました。それで、数ある採用ポジションの中から、ここに移ってもらえるとありがたい、と人事から私が言われたのです。
とはいえ、ことは、そう、すんなりとはいきません。G氏は私に
”大丈夫だとは思うがテストが必要。できれば合格してもらいたいけれど。”
と言うのです。早く正確に英文でタイピングできるかのかと彼は確認したかったのです。それもそのはずです、なぜなら彼は毎日相当数のメッセージを海外とやり取りする人でした。英文を自分でレポート用紙に手でささっと書いてはそれを秘書に渡し、その日のうちに素早くタイプし、CMSというシステムで送る必要がありました。今でいうメールみたいなものです。ハイテク企業でしたので。当時はある程度ポジションある方は自分でタイプをすることがなく、みな、秘書やアシスタントがそういう仕事をしていました。
私の移動先となるかもしれないその、通信機事業部では、無線製品の開発のことでアメリカやドイツ、シンガポールなど複数の海外オフィスと、それは密に頻繁にやりとりをしていました。そのため、50名くらいの技術者を管理するマネジャーの彼の秘書は、高いタイピング力が重要だったのです。上司のメッセージのみならず、技術者の発信文書も同様に連日タイプしまくりました。
つまり、正確に早くタイプして文書をさばける能力がなければ、異動は叶わないのです。G氏とは、初めて会って挨拶するかしないかで、二通のメールを渡され、すぐにタイプして持ってきて、と言われました。彼のハンドライティングを判読できるか、の確認でもあったのです。私はすぐ自席に戻り、タイプしたものを届けたところ、笑みをうかべて「合格です」と言ってもらえました。忙しい部門へ移れるかもしれない、と感じられた瞬間でした。
実は私は当時、元々得意だったタイプ力を客観的に証明するために、日本商工会議所による英文タイピスト技能検定試験のA級のテストに会社に入社してほどなく挑戦し、合格していました。とはいえ、そんな力を持っていても、ろくに仕事がなかった最初の配属先ではあまり活用されませんでした。幸いなことに、この試された時を皮切りに、その後私のスキルとして大いに評価してもらえました。タイプ力が1分間に何ワード打てるかと履歴書にも記載でき、その後の転職でも威力を発揮しました。もっとも、その頃段々と富士通のワープロ オアシスとかIBM5550などが台頭してきまして、文字の訂正はバックスペースキーで簡単にできるようになりました。英文タイピスト技能検定試験自体もほどなくなくなりました。苦労して取得しても、世の中、求められる資格はどんどん変わっていきますね。取っても永遠ではない、という一例です。
ところで、G氏は流暢で優しく日本語で話されるのですが、彼の秘書に、と採用を確定してもらう前に、彼から大事な質問を一つ、真顔でされました。彼にとってはとても知りたい、気になることだったのです。さて、それは何だったでしょうか? その答えは、次の記事でお伝えします。