I-2)新卒一年目の挫折~”リアリティショック”
30余年のキャリアの後半以降は、社内での立場もそれなりの待遇もありました。(仕事は死ぬほど大変でしたけれど...) 毎年のように年に何度も海外出張にも行きました。女性で子育てもし、部下も持ち、なんとか長年勤めることができたのは、自分や家族の健康はもちろんのこと、特に配偶者の様々な面での主体的な関わりなくしてはできないことです。他にも、人からのたくさんのご好意や出会い、そして運など全てにも恵まれていたことはいうまでもありません。
とはいえ、社会人のスタートは実に悲しく惨めなものでした。少なくとも自分ではずっとそう思って、毎日下を向いて過ごしていたのです。5月の配属からその年のクリスマスまでは。
え、クリスマスの日に何が起きたか?それはまた今度の記事に致しますね。
ひとことで言いますと、自分の仕事がない、何も求められていない、一日何をして過ごせばいいのかわからなかったのです。私は入社して一か月の研修の後、人事部門の責任者の方の秘書になったのでした。配属が決まるまでの新人としての研修中は、約30人の同期と一緒に福島県の半導体工場での3交代勤務など、各部署を回ってのOJTで過ごしました。自分がどの部署に配属になるのかと、へんに期待して楽しい時間でした。
それが、配属になったのは社長や事業部長のいる役員のフロア。まわりは、外国人エクゼクティブの役員秘書などベテラン女性ばかり。同じフロアの皆さんは、そこに仲間入りした、はたちそこそこの私に対し歓迎会をそれは素敵なフランス料理レストランで開いてくれました。社長や外国人VPらも同席され、いち新入社員にはとてももったい場ないのですが、そんなところで過ごす毎日は、あまりに場違いで寂しいものでした。上司も他社から着任早々でしたし、かけだしで張り切って仕事をしたい、いろいろ覚えたい、経験を積みたい自分にとっては、少々しんどい状況でした。
忙しくかっこよく仕事をしている役員秘書の方の不要不急なお仕事(例:シュレッダーがけ、コピー&ファイルなど)をよく手伝うなどして、なんとか時間を過ごしました。自分なんかいなくてもいい気がして、上下するエレベーターの中で涙を流したこともあります。いや、エレベーターに乗って上下して時間をつぶしていた、が正解かな(笑) 結構危険な精神状態だったと思います。
ばかみたいに悲嘆に暮れてました。でも、新卒社員にそんな思いをさせてしまうことも、残念ながらよくあるかと思います。とにかく当時の若き自分は、自分を中心にしか物事を考えることができなかったんですよね。毎日時間が過ぎるのを長く感じていました。
近年キャリアカウンセリングを学び直す中で、「リアリティショック reality shock」という言葉を知りました。新規に働く若き労働者が、仕事からうける期待とのギャップによるショックのことです。何も自分だけが遭遇したわけではない、どこの組織の若き社員にもありがちなこと。しかし、その時の自分には、誰にも相談できず、今の自分のような、キャリアコンサルタントなる人の存在もない時でした。長いトンネルの中にいるような日々でした。