『聴けずのワカバ』(キャリコン資格取得編)-69
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あらすじと作者コメント
登場人物の相関図とキャラクター解説
機会費用とサンクコスト効果⑤
「サンクコスト効果とは、広辞苑の第七版で『①事業に投下した資金のうち、事業の撤退または縮小によって回収できない費用。②ある問題について複数の解決策が提案されたとして、どの解決策を採用しても金額が変化しない原価。無関連原価。埋没原価。埋没費用。』のことをいう」
サオトメの得意分野のため、一応ワカバに答えたが、イチジョウが補足する。
「ちなみにコンコルド効果ってのも同じような意味だが、イギリスとフランスが共同開発した世界初の超音速ジェット旅客機コンコルドの商業的失敗を由来としている」
したり顔の二人をみてワカバは大人げないなと思いつつ、知ったかぶりをした。
「あー、そっちの意味ね。そうそう、そうだった。うっかりしてなー」
そう答えるワカバを無視して、イチジョウが会場の受験生に三度問いかける。
「もしかしたら、この会場にいる受験生の中にも本当はもう受験を諦めようと考えているものもいるんじゃないか。もちろん今、答えなくてもいい。どんな理由であれ、最終的に受験するかしないか、それを決めるのは自分自身だということを忘れないで欲しい」
イチジョウの受験生を思いやる言葉に何人かは小さくうなずいて聞いていた。そして、その様子を見たサオトメが言葉をつなげる。
「受験生の皆さん、これまで本当に申し訳なかった。皆さんの背中を押すつもりが、逆にプレッシャーをかけることになっていたかもしれない。悪気はなかったが、結果的に追い詰めていたのであれば、改めて謝罪しよう」
受験生に頭を下げようとするサオトメを静止するかのように代表が割って入ってきた。
「謝罪?そんなものは不要です。何度も言いますが、我々は常に受験生のことを第一に考えてきた。それを今日初めてこの勉強会に参加したどこの馬の骨とも分からないような横暴な人間に言われる筋合いもない」
「代表、イチジョウさんは関係ありません。あくまでも私が気づきを得るきっかけをもらっただけです。私なりにいろいろ考えましたが、彼の主張は概ね正しいといえます。もちろん正解、不正解がない世界での話ですが」
イチジョウを肯定し、これまでの勉強会のあり方を否定するとも言えるサオトメの発言に業を煮やした代表が怒りをぶつける。
「今更なんですか!正解、不正解がないですと!正解なら、あるじゃないですか!」
代表の無責任と感じる言葉にイチジョウが疑問をぶつける。
「正解だと?元々、ロープレには正解がないと言われているのに一体何が正解だというんだ」
「何度言わせるんですか、私は元試験委員なのですよ。私の発言が正解であり、絶対なのですよ。そんなことも分かっていないんですか、あなたは!」
恫喝気味に声を荒らげる代表にワカバがまた空気も読まずに言葉を発する。
「たとえば?」
次回の更新は2023/4/28予定です。
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