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『聴けずのワカバ』(キャリコン資格取得編)-80
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今後のこと③
「おっさん、良かったなー。こんなに生き生きとした目をするんだなーって思ったよ。いつもは死んだ魚みたいな目してたから」
「誰が死んだ魚だよ。親方こそ、最初会った時はそんな目をしてたけどな」
「・・・そういえば、そうだったかも。あの時は本当に自分のことしか考えられなくて、周りの人のことに気遣うことすら出来ていなかったよ・・・」
「あれっ、親方らしくねえじゃん。やけにしおらしい態度じゃん」
「しおらしい、かー。実はさー、さっきサオトメさんにも同じこと言われちゃって」
「同じこと?何だよ」
「いや、これからはおっさんに任せたら大丈夫だろうって・・・」
「大丈夫って、親方これからサオトメさんとこでやってくんじゃねえのか。せっかくサオトメさんが代表になったんだから」
「でもさー、考えみたら今までずっと誘いを断ってたのも、上司と部下の関係で他の人もいるんだから、ちょっと気まずいかなーって。ほら、サオトメさん変に真面目なとこあるでしょ。だから、器用に切り分けられないというか・・・」
「まあ、とにかく分かったよ。ここの勉強会で今後やってく気はないと、そういうことか」
「そうだねー。そう考えてるよ。でさー、おっさんの話じゃん」
「まあ、さっき伝えたのが現状だけどな・・・まあ、でも親方が望むなら何とか調整し・・・」
「いや、いいよ。今までの私だったら、速攻頭下げてお願いしてたろうけど、今はおっさんの気持ち少し分かる気がするし・・・」
「親方・・・成長したな」
「したのかなー。自分でもよく分かんないけど、私って普段はあんま自分のこと主張しないタイプだけど、何ていうのかな、よっちゃんとか、まあ、一部の、何ていうか、少し素を出せる相手には、頼りがちというか、何というか・・・」
「そうか、俺を頼ってくれていたと、そう言ってるんだな」
「まあ、そうなっちゃうんじゃないかなー。だからいつもなら甘えちゃって、無理矢理でもお願いしようと思ったんだけど、今回はおっさんのこと考えたら、それも言えないだろうなって・・・」
「・・・うん、そうか、そうなのか・・・でもよ、ここまでのやり取りって本人に言うことじゃなくね」
「さすがおっさん、今絶対言われたくないことハッキリ言ったね。そうですよー、はいはい、本当はおっさんに頼りたいけど、頼るわけにはいかないってメチャメチャ迷ってますよー」
「まあ、ここまでハッキリ本音を言ってくれたら、逆に動きやすいな。分かった。ではこうしよう」
「なに」
「確かに試験までこれまで通り、俺がサポートするのは難しい」
「だよねー」
「ということで、今考えた」
「なにを」
「うーん、本当は頼みたくないが、俺の養成講習の同期に親方を任せられそうなやつがひとりいる。あー、でもやっぱり嫌だな」
「どっちだよ」
「実は前から考えてはいたんだ。俺と違って本格的に受験生のサポートしてるやつだから、どこかのタイミングで親方を引き渡そうとしていた」
「引き渡すって」
「でもなー、そいつにこれ以上、借りを作りたくなくて、迷って先延ばしにしていたが、仕方ないか、今回がいいきっかけか。でもマジで嫌だな」
「だから、どっちなんだよー」
「まあ、間接的には親方も知っているやつだから、話は早いだろう。分かった。話をつけとくから、少し待ってくれ」
「うーん、知ってる人なのかな。まあ、いいや、おっさんありがとー。助かるよ」
「軽っ!俺の葛藤を何だと思ってるんだ。決まったら連絡するから。あー、しかし嫌だな」
「しつこいなー。でも任せたよ。よろしく!」
イチジョウに本音を伝えられて安心したワカバ。それを温かく見守るイチジョウ、だが内心はとても複雑な気持ちを抱えていた。
これで外部勉強会編は終わりです。次回から新章が始まります。ワカバの次の出会いをどうぞお楽しみに!
次回の更新は2023/5/15予定です。
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