エゴグラムについてのエピソード ~弊社更新講習を開催しての覚え書き~
弊社更新講習の講師、中村 武美先生にこれまでに開催した更新講習「エゴグラムと自己理解」で皆様からご質問が多い内容についてまとめて頂きました。
エゴグラムについてのエピソード
弊社では現在、エゴグラムについての更新講習を2プログラム開催していますが、限られた時間の都合上、お伝えきれない内容をこぼれ話も含めてまとめてみました。まだまだあるのですが、記事の性格上皆さんの興味があったり質問があった中からピックアップしました。
プログラムでもお伝えしているのですが、「エゴグラム(英語ではEgogramsと複数形になる)」は、本来は直観法です。一人について周囲の複数の観察者が作図するものです。
これを九州大学医学部の池見酉次郎教授(当時・池見陽関西大学大学院教授の叔父にあたる)が導入して杉田峰康氏らと質問紙法エゴグラムを開発したのが、日本でのエゴグラムのスタートです。
さて、過去にはこのようなご質問を受けたことがあります。
上に書いたように、質問紙法エゴグラムは日本で独自に開発されたもので、例えば
・東大式エゴグラム(TEG)
・TAOK
・岡山大式
・ELC
・対処行動エゴグラム
・SHE
など様々な種類があり、エゴグラムの開発者は日本国内の著作権法で保護されています。そのためセミナーで利用をされる場合は、その開発者の許諾が必要になり有料で購入することになります。
プログラムで参加者の皆様に作成をお願いしているエゴグラムは桂戴作氏(故人・日本大学教授)による「桂式自己成長エゴグラム(Self Grow-up Egogram、SGEと略される)」というものであり、各種エゴグラムの中で唯一、著作権を放棄しているものです。そのため複写利用など自由でもちろん料金も発生しません。これ以外のエゴグラムを利用の場合は有料での買取りになります。
言い換えると、作成をお願いしたエゴグラム(SGE)はこのまま許諾なく他での利用が可能です。
すると例えば、「エゴグラムは質問も簡単そうだから、イラストとかを沿えて楽しい雰囲気で自分の性格を知ろう!みたいに作成できないだろうか」と思われるかも知れません。
ですがこれは危うい考えで、質問紙法エゴグラムは心理学上の統計処理がされています。つまりサンプルの母集団がまず規定されます。その上で質問にも様々な工夫がされています。
※例えば次の論文や関連論文を読まれると、エゴグラムに限らず質問紙法を作成する手続きがいかに難しいかご理解いただけると思います。
つまり、質問紙法エゴグラムの作成は、上のような手続きを経る必要があるため、自作エゴグラムは心理統計を学ばないと困難を極めます。
※このような手続きを重視するのは、キャリアコンサルティングはカウンセリング心理学をベースにしており、その根底に心理学(基礎心理学・社会心理学・臨床心理学等々)があるためです。
しかし現実には、通信教育や独学でも「〇〇心理カウンセラー」を名乗れるため、そういった方々が独自にエゴグラムを作成(?)し使用されているものもWebなどに散見されますが、これらは上の心理学上の知見を恐らく考えていないものではないでしょうか?
キャリアコンサルタントは職業能力開発法で規定された名称独占の国家資格であり、高い倫理性も求められています。
これらから考えると、キャリアコンサルタントでお仕事上セミナー開催をされる場合は、SGEの使用が良いのではないか、と考えます。
※実はTA交流分析がエリック・バーンによって創始され、Games People Play(「人生ゲーム入門」南博訳)はベストセラーになりTAとバーンは一躍有名になったのですが、同時に「これはポップ心理学ではないか」との批判も受けました。この経過からも安易にTAやエゴグラムを使うことはバーンの望むところではないのではないか、と思います。
余談ですが、開発者のデュセイ博士は、国際交流分析協会(ITAA)の2013年大阪大会で来日された際に、ある質問紙法エゴグラムを開発している方が「日本では質問紙法エゴグラムがあり、このようなエゴグラムを開発中です」と語りかけた際に「それは面白い、ぜひやってください」と返答されています。TAの先生のオープンな性格を物語るエピソードとして本稿を終わります。
キャリアコンサルタント更新講習
中村講師は、キャリアコンサルタント更新講習 エゴグラムと自己理解、ブリーフセラピー入門(MRIアプローチ編、SFA編、SFA技法実践編)を担当しております。
7-9月キャリアコンサルタント更新講習のスケジュールをnoteにもまとめております。