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音声分析による睡眠リスク検知技術「Sleepy Meter」の開発と実用化

安全運転の新たな一歩として注目を集めているのが、音声から眠気を予測する革新的な技術「Sleepy Meter」です。わずか数秒の会話から、2時間以内の眠気リスクを予測できるこの技術は、運輸業界をはじめとする多くの現場で、事故防止の切り札として期待を集めています。

Sleepy Meter

はじめに

労働現場における睡眠不足が原因となる事故は、現代社会が直面する深刻な課題の一つです。特に運輸業界では、運転手の眠気による事故が大きな問題とされており、これに対する効果的な予防策の確立が急務となっています。

従来の眠気検知システムは、生体センサーの装着や複雑な測定手順を必要とすることが多く、実用面での課題が指摘されてきました。
そのため、簡便かつ実用的な睡眠リスク検知システムの開発が強く求められていました。

こうした状況を踏まえ、音声分析技術を活用することで、非侵襲的*かつ即時的な睡眠リスク評価を可能にするシステムが開発されました。
運輸業界では居眠り運転による事故が後を絶たず、従来の対策として運転手自身の申告や目視確認が行われていましたが、これらの方法では客観性に乏しく、予防的対応が十分に取れないという問題がありました。

非侵襲的(ひしんしゅうてき)とは、身体を傷つけたり侵入したりせずに行われる方法や技術を指します。例えば、非侵襲的検査や治療は手術を伴わない手法を意味します。


声が教えてくれる眠気のサイン

「おはようございます」――たった一言の挨拶から、2時間後にその人が眠くなる可能性を予測する技術が、今や実用化されています。

Care Cubeに搭載された「Sleepy Meter」は、音声分析によって心拍数の変化を予測し、眠気リスクを評価するシステムです。
この技術は、「眠気=心拍数の低下」という関係性に着目し、音声の特徴から心拍数の変化を推定します。
わずか数秒間の会話音声を分析することで、2時間以内に訪れる睡眠リスクを予測できるのです。


科学が解き明かす眠気と声の関係

Sleepy Meterの革新性は、声と眠気の関係を科学的に解明し、その成果を実用化した点にあります。
人は眠くなると副交感神経が優位になり、心拍数が低下する。この生理的な変化は、声の微細な震えとなって現れます。同技術は、この声の特徴を高精度で分析し、心拍数の変化を予測します。

Sleepy Meterの眠気リスクの検知方法

「従来の眠気検知システムは、センサー装着や複雑な測定を必要としていました。しかし、声による分析なら、日常会話の中で自然に測定できるのです」と、開発チームは語っています。

このシステムは、運輸業界をはじめとする多くの分野で活躍が期待されており、安全性向上への新たなアプローチとして注目されています。


アスクベル

Sleepy Meterの検知プロレスは、音声分析における最先端技術の粋を集めたものです。ユーザーがCare Cubeに向かって約3秒話しかけるだけで、独自開発のAIエンジンが音声を収集‧分析し、睡眠リスクを評価します。

この技術は、Care Cubeと呼ばれる専用デバイスに実装されています。
Care Cubeはユーザーの音声をリアルタイムで分析し、アスクベルに応じた適切なアドバイスを提供する統合システムです。
睡眠リスクは3段階で評価され、それぞれのレベルに応じた対応策が提案されます。

  • 低リスク:「安全運転で行きましょう」=通常運転の継続を推奨

  • 中リスク:「コーヒーでも飲みましょう」=休憩やカフェイン摂取などの予防策を提案

  • 高リスク:「少し休みましょう」=即時の休息を促します

この段階的なアプローチにより、ユーザーの状況に応じた具体的かつ効果的なリスク管理が可能となっています。シンプルかつ迅速にリスクを評価する仕組みは、運輸業界などの現場において安全性向上への貢献が期待されています。


実証した信頼性

技術の信頼性を証明したのは、5つの消防局との大規模な実証実験です。
横須賀市、小田原市、相模原市、厚木市、横浜市の消防局職員と協力し、4,000回以上の音声データと300万件を超える心拍数データを収集しました。24時間体制で勤務する消防士たちの実データが、システムの精度向上に大いに貢献しました。

さらに、スポーツウェルネスイベント「Ex-CROSS」では、150人以上の参加者による実地テストが行われ、「使いやすさ」と「即時性」において高い評価を得ています。
2022年から2023年にかけては、複数の消防局の協力のもと、実証実験を実施し、発話音声データと心拍数データを収集・解析しました。

Ex-CROSSの詳細はこちらをご覧ください↓

英語版はこちら↓


広がる活用の可能性

技術の応用範囲は運輸業界にとどまらず、夜勤のある工場や病院、24時間営業の店舗など、さまざまな職場での活用が期待されています。
また、認知機能の動向予測への応用研究も進んでおり、高齢者や子どもの健康管理への展開も視野に入れています。

今後の展望としては、さらなるデータ収集と分析精度の向上を目指し、特に多様な職種や労働環境での有効性の検証を進めることが重要です。
また、技術の応用範囲を広げ、認知機能の動向予測などの新たな分野への展開を進めるとともに、国際展開に向けた多言語対応や高度な予測モデルの開発にも力を入れていきます。

現在、Sleepy Meterインターフェースの英語版が開発中で、グローバル展開を強化し、
より多くの人々に革新的なソリューションを提供できるよう取り組んでいます。

これらの取り組みを通じて、より安全で健康的な労働環境を実現し、テクノロジーと人間の新たな関係性を築いていくことを目指しています。


「Care Cube」と「Sleepy Meter」の詳細については、CEATEC2023ビデオレポートをご覧ください(日本語あり)↓




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