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欲望の赴くままに消費して虚無を得る
「肌をキレイにしたいならこの化粧水と乳液と美容液とパックとクリームを使ってください!」
「暮らしに便利にしたいなら、このスマートスピーカーとタブレットとPCを使ってください!」
「常に最新の機種を使いたいなら年に1回、スマホを買い換えてください」
経済成長のための消費社会というのは、欲望のまま購入することが求められます。欲しいと思ったものを購入することが需要なので、この態度が経済成長をもたらすといっても過言ではありません。現在はIT産業が目覚ましい成長を遂げていて、頻繁に新しい製品を販売しています。その供給に応えるかのように、私たちは欲望の赴くままにSNSを利用したり、電子機器やITサービスを消費しています。
もし消費社会で私たちが欲望に抗ったら、企業の売上も減り、経済成長のスピードは鈍っていきます。経済成長のため、企業の利益のため、欲望の赴くままに商品やサービスを消費していくことは良しとされるのです。
ただしこの成長は人の心を豊かにするという観点では、この態度が有益でないと考えています。まず何かを消費するだけでは、私たちの心に彩りがもたらされることが中々ないです。高い化粧品、高級ブランド品、高性能のPC等、それを購入するだけで心豊かになるなんてことはありません。何かを消費して、満足感を得るためには、消費するものを存分に味わうことが大切です。
しかし資本主義の構造上、商品をゆっくり味わうというのは合理的ではありません。新製品を次々と生み出していき、消費者に早いペースで買ってもらったほうが、効率よく利益を稼げるからです。だからどの業界も早いペースで新作を積極的に販売しています。ここには消費者の需要が先行されません。新製品を販売することによって、消費者の「欲しい」を企業が作ります。だから私たち消費者がこのような新製品を買う理由は、心から欲しいからというより、供給があるからなのでしょう。このように企業が様々な商品を生み出し、生活の色々な場面で消費者の欲求を駆り立てるため、その欲求に従ったままだと、満足感の高い消費をするのが難しくなります。
心を豊かにするには、欲求の赴くのままの消費と、逆行しなければいけません。消費したものでどのように豊かな時間を過ごすのか、考えることが大切です。最新機種のスマホを買うことを繰り返すだけでは、何も幸せを生み出さないでしょう。そこに不満を感じて、他の製品を新たに買い続けていくと、負のループに陥っていきます。
広告が生み出す欲望に従って次々に商品を買っても、生まれるのは虚無感だけです。私たちは深く考えるのが嫌なので、その消費生活に従うのはラクかもしれません。ただその結末は、お金を使いすぎた後悔やモノが心を癒してくれない虚しさしか残らないような気がします。
そうならないためには自分の消費するものが、どのように自分や他者を豊かにするかを考えなければいけません。企業が積極的駆動させてくる欲望に抗う必要があります。そして豊かな時間が過ごせるような消費生活を、自分で組み立てないといけません。TVをつけて、SNSで情報を消費しながら食事を済ませるのは、コスパがよく、退屈しないのかもしれません。しかし日常の生活を大切にして、心を豊かに過ごすには、情報や刺激を遮断して、ご飯をきっちり味わうことが大事なのでしょう。