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7年ぶりに、我が家の手作り恵方巻が戻ってきた話

戻ってきた……というか、私が作ったから戻したという話です。

7年前までは母親が作っていた我が家の恵方巻。
毎年この時期になれば張り切っていて、病におかされながらも、このときばかりは気合を入れて巻き寿司巻き巻き。
何が母をそうさせているのかはついぞ知れなかったけど、母親にとっては大切な行事だったのでしょう。

しかし、6年前の1月に母親が他界。
当時大学4年生。直後の節分は作る気力なんてなく、買ってきた恵方巻で済ませてからはズルズルとその習慣が続いて今年(2024)を迎えたわけです。

でも、いい加減、これよくないなと思い始めました。
近年、相次いで祖父母が旅立ち、正月や諸々の習慣が途絶えていく中、このままにしておけないという意識が芽生えてきたのです。
何とか自分が生きているうちだけでも(結婚する気がないので)継続したい。そういう思い。

↓その一環で、まず雑煮を復活させた記事

あともう一つは、恵方巻商戦に加担したくない、ということです。
私は恵方巻商戦にはすっかり辟易しています。人間の数以上に巻き寿司作ってどうすんだ、と。
スーパー(AE〇N)の惣菜売り場でバイトしていたとき、半値で売り捌かれていく巻き寿司たちを見ました。それでも売れ残り、ゴミ袋に転がされていく大量の巻き寿司たちも間近で見たものですから、なおさら。
私がバイトしてたのは6~7年前だから、今は大分マシになってる……と思いたいですが。

ま、バレンタインで各社自慢の珍しいチョコが一堂に会するように、珍しい巻き寿司博覧会として見るのなら面白いかもしれませんけどね。
とはいえ、巻き寿司の上にさらにカニやら肉載せてるのはギャグでしょう。
それに、恵方巻文化圏外との文化衝突も見られるようですし、もういいだろう、と。

そんな感じで、今年は手作りの恵方巻を復活させることにしました。


まずはレシピの発掘

手作り恵方巻復活にあたって、まずやらねばならないのが、母親が見ていたレシピの発掘。
ただ、これは比較的簡単で、私も酢飯作りなどを手伝っていたことから、開いていたレシピ本の特定は済んでいました。問題は、7年間のうちにどっか行ってないかどうか……

あ、あった……!

「お料理百科」だけ頻繁に開いた形跡が……

すっかりホコリをかぶっていたので拭き拭き。
「non-no お料理百科」という分厚い図鑑サイズの本。
いつの本や……?と確かめてみると、第一刷は約40年前の本!

買ったのは1990年発行の分だから、両親の結婚後すぐに買ったと思われる本。
懐かしさを感じながらページをパラパラすると、意外と古くない、というか、今でも全然通用するし、もはやこの「大百科シリーズ」のレシピを回していれば一生分の献立が賄えるんじゃ?と思えるぐらいの豊かなレシピ。

40年近く前のレシピでも、パッと見の印象は現代レシピと比べて大きく変わったという印象は受けません。微調整すれば全然使えるな~と眺めていました。

画像はボカしています

そうしてページを繰っていけば、「すし」コーナーにあったあった!「太巻き寿司」のレシピ。このレシピばっかり開いていたからか、開きグセがついていて分かりやすい。

久しぶりに開いて意外だったのが、割とレシピの通りに作りがちだった母親が、恵方巻の際はさらに具を追加していたこと。
レシピでは玉子、干瓢、椎茸だけだったところに、我が家では高野豆腐三つ葉を追加。祖母、いや祖父がそうしていたからかな?と推測(祖父のほうが料理上手で祖母に教えていた、と伝え聞いているので)。

ま、レシピにない具材を追加するっていっても、最近の高野豆腐は親切なことにダシがついているので、それで煮るだけだし、三つ葉はサッと湯がくだけなので大丈夫でしょう。

ただ、肝心のすし飯は上の「non-no お料理百科」のレシピから、「おかずのクッキング」に掲載されていた土井善晴さんのレシピに変更。こちらのほうが明快だった&説明が多く、慣れない私にはこちらだということで。

我が家には10年以上分のアーカイブがあります

さて、レシピが見つかったところで、さっそく干瓢と椎茸の準備を始めることに。

巻くまでが大変!

2/1~2/2にやっておくこと

干瓢と椎茸は、前の日に炊いておき、味を落ち着けておきたいので、真っ先に取り掛かります。水で戻すことも考えれば、仕込みは2月1日の夜からスタート。すでに大仕事の予感……!

戻し汁を量っていなくてしょっぱなから折れそうになるも、何とか茶色く煮上げられました。
干瓢の厚さにムラがあって、デロンデロンな部分とコシのある部分に千切れてしまったのは来年度への反省。幸い、コシのある部分の長さは足りそう。

慣れないから、1時間ぐらい干瓢&椎茸と格闘。

また、高野豆腐も2日のうちに炊いておきます。
これは付属のダシで煮るだけなので楽チン。というか、これぐらいは楽させてもらわないと困る。

2/3当日もやることいっぱい

そして迎えた2月3日。
まずは米を洗って浸水。その隙に玉子焼きを作ります。
やたらと酒と砂糖が入り、これで大丈夫か……?と思いながら卵3個×2回分の玉子焼きが完成。
だし汁の代わりに白だしを少し加えたので、その調整はメモしておき、来年以降のブラッシュアップにつなげます。

そして米を水少な目で炊き、すし飯作り。
すし桶に広げるのに炊飯器の釜がアッツイアッツイ。濡れ布巾を噛まして持ってもアッツイアッツイ。
ご飯をヘラで切りながら、すし酢と合わせながら、うちわで扇ぎながら……ナガラナガラナガラの滝。とても手が足りない。カイリキーになりたい。
誰か手伝ってくれる人がいたら、絶対一緒にやったほうがいいです。
そりゃ、母親も私に手伝うように言うよな……

具材を海苔の長さに切って水気を切り、三つ葉を湯がいて、ようやく巻き寿司の準備完了!

ついに巻きます

うちの恵方巻は中巻きに毛が生えた程度の太さでした。なので、店の太巻きを初めて丸かぶりしたときは面食らいました。〇のまんま口に入れるのは不可能。仕方なくハの字に食べざるを得ません。

それに、あれもこれもと詰め込むから太さも値段もうなぎ登り。
実際丸かぶりすると、ゴチャゴチャっと何がなんだか。
「コダワリました!」と鳴り物入りの具材も、一度他の具材と一緒に巻き込まれたら、丸かぶりの咀嚼の中でくんずほぐれつの大乱闘。その消息を確かめることは容易でないわけです。

一方中巻き程度なら丸かぶりも余裕。手作りならではの余裕。
巻き寿司としてはオーソドックスな具材だけ、行方不明にならないように巻くから、1本丸かぶりしても重くないです。

そんな中巻きぐらいをイメージしてすし飯を海苔の上に広げるも、加減が分からず、1本目は普通の太巻きになってしまい、アチャー。
2本目からはとにかくすし飯をうすーくうすーく広げてくるり。

一番下の真ん中が1本目の太巻き。
これぐらいの太さなら、丸かぶりできるでしょ?

すし飯3合炊いて、8本+α(余った具材で作る細巻き)ぐらいは巻けました。
巻くのはそんなに難しくなかった印象。それよりも具材を1つ1つ仕込んでいくほうがよっぽど大変。

7年ぶりのあの味

夜になったので、恵方巻を頂きます。我が家では夜に食べます。
何本も巻きましたが、丸かぶりするのはさすがに最初の1本だけ。
ほかは切って食べます。
どーですか、このすし飯の薄さ。これなら何本でもイケます。
顎も口も疲れません。

では、最初の1本頂きますか、と手に持つと、端っこが軽くお辞儀。
すし飯が薄いから、具の汁気が海苔に染みてヘナっとなるんですが、その姿を見て、そういえばこれがうちの恵方巻やった……と、どんどん記憶が蘇ってくるし、自分で作ったからこそ、なんでうちの恵方巻がああなっていたのか、理由もわかるようになったのです。

東北東やや東を向いて一口。
……7年ぶりの「おおっ、これこれ!」という感覚。
三つ葉のほろ苦さあってこその我が家の味。
ああ、ついに帰ってきた。涙……は流れないけど、安堵の深い息が漏れる。
何とか我が家の味を繋ぎ止めることができました。

そんな三つ葉は噛み切れないから、ぴゅーっと出てきてしまう。
それをズズッと啜る感覚が一気に雰囲気を掻き立てるんですね。

具材の味付けも丁度いい。これにも胸を撫でおろす……
というのも、具材単体で味見すると、ちょっと物足りないんですよ。でも、それはすし飯やほかの具材と合わさったときの分、味を引いているからなんですよね。

単体では味が少し足りなくても、巻き寿司にして一つになるとまとまる。
巻き寿司は総合力の料理。みんなで最高のチームになる料理。
どれかが突出してはいけないし、スター選手ばかり集めてもいけない料理なんだと、ようやく得心がいったのです。

余った三つ葉でかきたま汁を作るのも我が家の定番。
7年ぶりに完全再現。作ってよかった。

恵方巻作りを終えて

まー大変でした。巻くまでがとにかく大変。
あまりに疲れたんで、巻き終わってから食べるまでの間に近所の温泉で羽を伸ばすことに。

湯船に浸かりながら思いを馳せる。
こんな大仕事、母親は毎年やってたのか……
とくに最後の10年は病におかされながらでも張り切って続けていたわけですよ。まったく、よーやってたわ。

性格やら考えが合わなくて反面教師にすることが多かった母親だけど、こればっかりは尊敬せずにはいられない。

あ、性格が合わなかっただけで、家族としての愛情はありましたよ。一人の人間として母親を見るからこそ、何でも無条件で肯定することはしなかったという話です。

今年作ってみての改善点、新たに細かく調整した玉子焼きのレシピなどはメモしておいたので、来年からはもっとチャキチャキやりたいものです。

*****

我が家の習慣復活シリーズもこれでしばらく休憩。ひな祭りの日は手巻き寿司をやっていて、それも復活させようと目論んでいますが、それはすし飯を作るだけなので特に書くことはありません。

2回連続重めのネタを扱ったので、次からはもうちょっと気楽な内容で更新していこうと思います。それではまた。

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ハセガワタクミ
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