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【INTERVIEW #02】未知への好奇心。研究者が見つめる新素材の可能性

Ayano Mori|研究開発本部 基礎研究部 分析チーム 研究員
幼少期から宇宙や星に魅了され、3歳の頃から天文学の世界に興味を持ち始める。やがて理論物理を学ぶ道へ。宇宙の起源を探求した学生時代を経て、
未知の可能性を秘めたCNT(カーボンナノチューブ)と出会う。
大学では理論物理を専攻し、その後CARBON FLYに創業メンバーの1人としてジョイン。基礎研究部でCNTの基礎性能の向上に挑むだけでなく
分析チームのリーダーとして品質管理や試作品の分析・評価に取り組む。
CNTという未知の領域を切り拓き、科学の未来を加速させる研究者


宇宙への夢が育まれた幼少期

ーまずは、研究職を志したきっかけを教えてください。

「これ!」という決定的なきっかけは実は覚えていません。
ただ、気づいたら科学や宇宙に惹かれていました。
両親が買ってくれた星座の本や宇宙の図鑑、子供向けの科学雑誌を夢中で読んでいたことは覚えています。
3歳頃には宇宙に興味を持ち、幼稚園の将来の夢にはすでに「研究者」と書いていました。
小学生になると「天文学者になる」と宣言し、子どもの夢にありがちな
パン屋さんとかケーキ屋さん、セーラームーンとかは本当に全然なくて、むしろセーラームーンに登場するマーキュリーとかマーズとかの惑星の方に興味を持つような子どもでした(笑)
宇宙の何に惹かれたのかは分かりませんが、湧き上がる好奇心はまだ依然としてあるので、もう私はそういう人間なのだと思っています。

その好奇心のまま、理数科のある高校に進学し、物理と化学を選択。
物理教室には私しか女子がいなかったのは少し寂しかったですが、
文部科学省の理系人材育成カリキュラムSSH(スーパーサイエンスハイスクール)に指定された学校だったため、さまざまな大学や研究所を訪問する機会がありました。
その中でCNT(カーボンナノチューブ)に初めて出会いました。

「シャーレに入れられた黒いポロポロした物体」

当時の私のCNTのイメージは、まさにこれ。
そして固定観念として植え付けられました。
大学では宇宙物理を専攻し、「宇宙の始まり」を理論で記述するという初めての体験に感動しました。
ずっと興味のあった「宇宙の始まり」について研究室の教授や仲間たちが多次元宇宙について熱く議論する中に、自分も参加している。ほんの一欠片、砂粒ほどの存在かもしれませんが、それが私にとっては貴重な時間であり、「理論宇宙物理」を専門にすることを決めた瞬間でした。



アカデミックと就職の狭間で 
CARBON FLYとの出会い

ー卒業後の進路はアカデミックと就職でかなり悩まれたそうですね。

本心では、アカデミックの世界に残るつもりでした。
しかし現実問題、「理論宇宙物理」を活かせる仕事はほとんどなく、
社会に出て多次元宇宙の話をしても「こいつは何を言っているんだ」
と思われる未来が容易に想像できました(笑)
研究は続けたい。でも自分の専門性を活かせる職場がない。
自分の理想にマッチするものはなかなか出会えず、大学に残ることは断念しました。 
就職活動を始めたものの、なかなか大変でした。
研究職の募集は化学、生物、工学分野に限定され、さらに実務経験3年以上の求人がほとんど。未経験の私には厳しい現実でした。

そんな時「少しでも研究に関わる経験を積みたい」と登録した派遣会社から紹介されたのがCARBON FLYでした。
『CNT…?あの黒いポロポロした物体かぁ』
CNTの存在自体は知っていたものの、CNTに対する認識はその程度。
しかし、「研究者出身の社長が面談をしてくれる」と聞き、好奇心が勝り、面談を受けることにしました。

そして驚愕しました。

そこにあったのは、パウダー状ではない、見たことのない形状のCNT。

こんな未知の素材があるのかと。
未知の素材に触れ、研究できる環境がここにある。
その瞬間、不安よりも「やってみたい」が勝ちました。
そして2つ返事で入社を決めました。


分析チームの立ち上げとリーダーとして挑戦

ー具体的にどのような業務を行っていますか?

今は基礎研究部内で分析チームを立ち上げ、リーダーを任されています。
主な業務は、量産されるCNTの品質管理、試作品の分析・評価です。
メンバーが「こんなことをやってみたい」「こういう分析をしたい」と相談してくれるので、それに対して適切なアプローチを提案することも重要な役割になっています。

同時に研究員として様々なプロジェクトにも参加しています。
CNT特有の高強度化や高密度化のプロジェクトなどにも関わっています。
私たち目標は『CNTの社会実装』です。
CNTの魅力を最大限に伝える分析データを蓄積し、
研究員としてより良い素材特性を引き出す研究を続けています。


CNTの魅力と、予想を裏切る面白さ

ーCNT(カーボンナノチューブ)の魅力とは?

CNTは発見されてからまだ30年程の未知の素材です。
わからないことが多く、研究対象としてとにかく面白い
展示会などに出展するとその未知の素材に驚かれることも多いですね。

未知の素材が故、研究すべきテーマが山のように存在していますが、
特に面白いのは、

思い通りにならないところ

CNTが予想した通りの結果を返してくれないことが多いんです。
こうすればこうなるだろうと予想して実験計画を組み立て、実験を進める。
でもCNTは素直じゃない。
本当予想外の結果に「うわーーーーーー!!!」と何度も驚かされます。
でも、それが研究の醍醐味ですね。
手を動かした分だけ新しい発見があります。


研究チームで談笑中


CARBON FLYだからこそ、実現できる研究環境

ーCARBON FLYの魅力とは?

研究部のメンバーはとにかく「やりたい」に対するスピードが凄まじいです。
「こういう実験をしたい」と言えば、すぐ器具が揃う。
「このアプローチがいいかもしれない」と言えば、すぐ検証が始まる。

私は会社員として働くのはここが初めて、派遣出身、研究未経験、物理も修士しか持っていない。
それでも「やりたい」という気持ちを尊重してくれる環境がある。
社長は、私のことを不安要素だと思っていたかもしれませんが、、、(笑)
でも研究者にとってこれほど恵まれた環境はないと思っています。

研究部みんなが本気で社会実装を目指し一丸となって研究しており、
その志の高さや本気度、やりたいことや夢を語ると「今すぐやろう!」と手助けしてくれる。本当に研究者にとって最高の会社です!

ー仕事をする上で大切にしていること、ポリシーなどはありますか?

研究チームは、驚くほどのスピード感で研究を進めています。
その熱量に応えたいです。
自分も常に全力で考え、研究に取り組むことを大切にしています
特に意識しているのは、レスポンスの速さ。
メンバーからの相談にはできる限り早く答え、アドバイスをする際も「こうしたほうがいい」と明確に伝えるように心がけています。
みんなが本気だからこそ、私も生半可な姿勢ではいられません。

また、「考える力」を育む環境をつくることも意識しています。
私たちの仕事は、CNTの本質を解き明かし、その性能を最大限に引き出すこと。そのためには、単なる応用研究ではなく、CNTそのものの性質を深く理解する基礎研究が不可欠です。

どんなに困難な課題に直面しても、自分なりの乗り越え方を考え、議論し、最善策を導き出す。
それが私の研究に対する姿勢であり、CARBON FLYの環境だからこそ実現できることだと思っています。 

ーCARBON FLYの研究職はどんな人が向いている?

本気でCNTの研究をしてみたい人。
CNTを知っている知らないは全然関係なくて、
科学が好き、単純に興味がある、未知のものにワクワクする
そんな気持ちがあるなら、充分に研究者としての素質があります。
また経験やバックグラウンドは一切関係ないです。
むしろ異なる視点を持つ人が集まることが、より深い研究に繋がると考えています。
素朴な疑問や仮説を大切にし、それを解き明かしていく楽しさを感じられる人。そういう人こそ、CARBON FLYの研究職に向いていると思います。


Labの壁面マップの前での1枚

研究者として目指す未来

ーCARBON FLYでも目標を教えてください。

●分析チームとして
CNTがどれほど優れた素材なのか、明確なデータを示せるようにする。
まだ「指標」が確立されていない素材だからこそ、新しい基準を作り上げることが目標です。

●研究者として
やっぱりCNTの本来の性能を引引き出す手法を確立し、実際に社会で活用される未来を創る!CNTは、まだ使い方が分からないだけ。だからこそ、その可能性を伝えていく「伝道師」になりたいですね。


月刊『プラスチックス2月号』に掲載されています!


プラスチックス2月号を手に取るMoriさん


(おまけ)お茶にかなりハマっています!

最近は、お茶にハマり始めました。
紅茶や日本茶、中国茶なんでも飲みます。
研究と同じでもっとこうしたい、こうしたほうがいいなと考えは浮かぶものの、今はまだいろいろな種類のお茶を楽しむ程度に留まっています(笑)
ポットに拘ったり、お湯の温度を比較検証したりしてみたい気持ちはあります。おすすめのお茶があったら教えてください!