好きな漫画の好きなシーンTier(carbon13編) 2024年
Tier 3
「ケモ夫人」藤想 1巻 1話
「これで巨人を討伐してください」
コメント: ケモ型の夫人が無から現れた存在に討伐を急に依頼されるという漫画史全体で見ても斬新すぎるスタート。
「BLAME!」二瓶勉 6巻 Log.37 p187 - p197
エレベーターで六千七百八十キロ移動するシーン
コメント: エレベーターの乗務員、BLAMEの世界観ではめちゃくちゃおしゃべり。
「逃げ上手の若君」松井優征 13巻 第110話
「先代」の天下人の跡継ぎで 「当代」の天下人にはなれなかった悲運の王子 言わば……「中先代」か
コメント: 「言わば……」で始まるタイトル回収好き。
「ジャンケットバンク」田中一行 12巻 111話 p67
眞鍋「君もとてもがんばってる」
コメント: 眞鍋が御手洗を見て普通にほめるシーン。御手洗に感情移入してジャンケットバンクをよんでいるのでうれしかった。
「宝石の国」市川春子 7巻 第四十六話 31p 扉絵
イエローダイヤモンドたちが駆け足で移動しているシーン。
コメント: 美少女の外見しているのに本質的に人間と同じじゃないやつ好き。宝石たちは体内に光を通すので野外を通ると乱反射する。
「東京喰種 :re 」石田スイ 1巻 1話 34p
タクシー運転手「シュークリームをね オーブンなんかで作ったりするんですわ」
コメント: このあと「アツアツの出来立てを頬張るのが至福なんですわ」とセリフが続く。タクシー運転手は実は喰種で、これは人の捕食シーンの述懐だったというオチ。こういう一話でやられて後はもう出てこない狂人が面白い。
「峠鬼」鶴淵けんじ 2巻 第伍話 p64 - p65
ミヨ「なんだか…… ここって…… 大神さまの お社の中みたい」
コメント: 東宮はこのコマの時代より後に天皇になる男なのでミヨの直感は正しい。このシーンも含めて峠鬼は神と人間の話が上手い。
「税金で買った本」ずいの(原作), 系山冏(作画) 1巻 1冊目 p15
白井「税金で買った本だぞ 返せよ」
コメント: タイトル回収タイトル回収。そもそも「税金で買った本」というタイトルが天才。図書館の話をしたい人の中に、これまでこのパンクなタイトルをつけられる人がいなかった。だがずいのが現れてからは違う。
Tier 2
「チェンソーマン」11巻 96話 p168 - p169
デンジ「マキマさんって こんな味かあ……」
コメント: これ、俺じゃなくても好きだと思う。チェンソーマンはデンジによる親殺しの物語である。マキマは最初からデンジを見ていない。自分を見ない母親を殺害でない方法で放逐する話だ。そこで最終的に描かれるのはデンジの体に比べてただっぴろい家具のほとんどない新居である。新生活ってそういうものかも。
「アンダーニンジャ」花沢健吾 9巻 79話 p128
加藤「全員 水遁の術」
名のないモブ「や やっぱり…… セオリーとはいえ いきなりか」
コメント: アツすぎ! 水遁の術とはその場でチンコを出して小便をまき散らすことを意味しています。透明化しながら剣をふるってくる強敵に対して、状況を適切に判断できる加藤のセリフ。一見して奇妙でダサい方法で戦うの、作中の忍者観を象徴しててすごい。それでもやるのが忍者。このあと名のないモブが血をまき散らして敵にマーキングしながら死んでいくシーンも好き。
「銀と金」福本伸行 4巻 30話
森田「画家を志した若い頃 ふと立ち寄った美術館の一枚のセザンヌにうたれたという その頃の中条なら簡単」
コメント: 市場価値6億のセザンヌの絵を賭けた鑑定ギャンブルで、 追いつめられる画商中条をよそ目にタバコを吸う主人公森田のモノローグ。一応中条を擁護すると、彼は暗闇の中で1枚をブラインドした3枚の絵の中から本物を選ばさせられており、かなり不利な戦いである。そのあたり、このルールを用意した森田に口のうまさを感じなくもない。
「暗号学園のいろは」西尾維新(原作), 岩崎優次(作画)3巻 二十一号 p116
意気消沈の主人公いろはに戦友が暗号を出すシーン(Q.77, Q.78, Q79)
コメント: 暗号でしか本音が喋れない不器用な人たち。きょらさんの暗号に「友」という字が含まれてるの好きすぎ。この前に来る「あなた以外の顔を見た」も好き。
「魔界探偵脳嚙ネウロ」松井優征 14巻 118話
魔界777ツ能力 花と悪夢(イビルラベンダー)!!
コメント: 相棒と同じ姿をした敵に放つ渾身の一撃。サイに効く高い攻撃力の割には外連味のある外観とシチュエーションが相まっていい。この時のネウロの心情を考えるとあえてここで花束を出してくる理由が見えてきてしまう。ネウロは戦いを謎の一つとして楽しんでいる。なのでこの花束は面白い戦いを楽しませてくれたサイに対する報酬としても読めなくもない。
「医龍」乃木坂太郎, 永井明(原案), 吉沼美恵(医療監修)第24集 第201幕 p222
野口「精一杯、 やってみなさい」
コメント: 医局を支配し政治的に完全に腐敗した教授野口。長い権力闘争の果てに病に倒れ、政治的な権力もほぼはぎとられてしまう。自分を追い詰めた若手女性医師加藤に「チームの強い結束は僕という敵がいて初めてありえた」だの「君は間違いなく僕のようになるね」だのめちゃくちゃ言ったあと、やすらかな顔になって一言だけ激励をするシーン。全編を通して繰り広げる野口との権力闘争、現代の宮廷ものとして面白いので読んで欲しい。
Tier 1
「呪術廻戦」芥見下々 243話(単行本未発売)
高羽「終わりたくねえよ」
羂索「泣くな白けちまうだろ」
コメント: いきなり何の脈絡もなく高羽は現れるのだがそれこそが羂索にとって意味のある事柄だったのだなと思う。存在が予見できるものは羂索にとって大して響かない。なので面白さを強さで探す方向性で決めていたが、それは実は間違っていたわけだ。羂索のようにしたたかで計画性もある人物でも、急に現れた出来事に救われることができるんだなと感動した。人生における無秩序さみたいなのが人になり切れない羂索のもとに来てそれがうれしかったというのもあるかもしれない。高羽から見ても羂索の存在はちゃぶ台返しでしかない。でもそういう存在こそが相方を張るのにふさわしかったわけだ。笑いは前提の破棄が根源にある。私も昔は漫画のような青春が送りたがったが、青春は予想外のところにあった。これ青が澄んでいるってことで合ってる?
「魔人探偵脳嚙ネウロ」松井優征 11巻 88話~89話
ヤコ「答えは…… 単位 1と0の間の単位 日常ではまず使われない極小の数の単位」
コメント: 今は過ぎ去った記憶の事柄に捕らわれている頭がはちゃめちゃに良い男、サイコ~~~~~~~~^^^^!!! いま思えば、人間的に見えるが実は人間ではない存在(あるいは、人間には見えないが人間的な存在)が好きになったのは電人HALが初めてかもしれない。本質的に、つまり、生まれる前の使命によって、HALはその存在を定義されている。そこから動くことも逃れることもできない。だがその懸命に使命に生きる姿からしか取れない栄養があるよね。ネウロにはわからない人間的な感覚を見抜くヤコもいいですね。ヤコがネウロには届かないところに届く可能性を持っていることをネウロはかなり前の方から予見していたし、それはおそらく作中全体のテーマでもあるのだろう。ネウロは最強の存在ではなく、知恵と工夫によって戦う一人でしかない。これを読んだとき作者はマジで天才だと思った。彼は防御力が大切だと方々で力説しているが、ネウロのこの回を見るとそれはかなり嘘であることがわかる。攻撃力に決まってるだろ。
「今際の国のアリス」麻生羽呂 第18巻 第63話
アリス「アンタはただの、 中間管理職だろ?」
コメント: インターネットではよくわからん、主人公がうじうじしすぎなど酷い物言いが多いが、逆に「よくわからない」「うじうじしすぎ」こそが本作のメインテーマだったと言っても差し支えないと思う。アリスは実存に悩んでいる等身大の男で、直面する困難に対しても「なぜこれをしないといけないのか」などと理由を問うばかりである。アリスは必死にデスゲームをこなしていくなかで、目の前のものをそのまま楽しむことや、倫理は割と有用であることを学ぶ。友の喪失は特に理由がなく、そして理由なく自分も生きていく。「中間管理職」のシーンは、それを完全に断って目の前のものを冷静に見ることができたということを象徴している。エヴァンゲリオンを俺は見ていないが、おおむねこのような話だと人づてに聞いている。今際の国のアリス、俺にとってのエヴァンゲリオンです。余談にはなるが、作者の次回作「ゾンビになるまでしたい100のこと」は根本的に明るい人間が、ゾンビによるパンデミックをガン無視して遊びまくる話であり、本作との対称性が興味深い。作者、研究したな~。
まだあります。
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