[bZ4X/ソルテラ比較②走行レビュー]兄弟車でも、こんなに"走り"が違う。その理由は?
電気の力のみで走行するBEVモデルとして同時発売されたトヨタ•bZ4Xとスバル•ソルテラ。
内外装のデザインやグレード展開に違いはありますが、ボディ形状も走行性能も同一である両車。
では、実際に運転したらどれくらい違いがあるのか⁇
気になる2台の、試乗レビューをお届けします!
※比較レビュー①:内外装&グレードの記事はこちら
https://note.com/car_barn/n/n859ea397b8e3?fbclid=IwAR2_1qFckHqkfPzeAhkw6T3M1sffMMMIvXqPN7PFghs3EA30BXaDeh28Tlo
■EVの焦点=航続距離は、どのくらい?
最初に紹介するのは、2台の気になる航続可能距離。それぞれのカタログ値は以下の通りです。
走行状況により変わるのが前提となりますが、平均500kmは走行出来ると思われます。ちなみに両車ともバッテリー性能は同一ですが。装備品等による車重違いにより、航続可能距離の数値にも相違が発生しています。
◾️スムーズさと力強さ
早速、2台の試乗レビューをお届けします。
しかし、今回の試乗はどちらも一般道での運転ではありますが。異なった道路状況での体験となりました。
その為、全く同一環境での比較レビューではなく。それぞれのシチュエーションの中で感じた、両車の乗り味をお伝えしていきます。
先にお伝えしておくと、この2台は内外装と同様に、乗り味にも"メーカーならではの違い=個性"がハッキリと分かれていました!
筆者としては「BEV=モーター駆動」の活かし方をキーワードに、レビューしていきます。
・トヨタ bZ4X:モーターならではの”滑らかさ”を活かしたドライブフィール
bZ4Xの試乗は、湘南T-SITEで開催されたKINTO POP UPストアで行いました。しかし連休期間中という事もあり。コースとなった湘南T-SITE周辺は車通りも多く、基本はノロノロ走行が長い状況。
そのため、bZ4Xは「車通りの多い休日の街中」のシチュエーションでの試乗でした。
いざ運転してみると、このbZ4Xは「EVならではのスムーズさ」に主観を置いた乗り味となっているのが、走り出しから伝わってきます。
一度アクセルを踏み込むと、モーター駆動ならではのシームレスな加速。そこに車内の静粛性も加わって事により、およそ2トンの車である事をドライバーに感じさせない、気持ちいい加速フィールです。
この加速特性に合わせて、足回りを含む乗り心地面も滑らかさを意識した仕上がりとなっています。
重すぎず・軽すぎない、素直なハンドリングとなっているので運転もしやすく。
そこにスムーズな足回りが合わさる事で、ドライバーのみならず同乗者もゆったりと乗っていられる印象でした。
さらに、車通りが多くてストップ&ゴーが頻発する区間を走行した時も、ストレスを感じずに通過することが出来ました。
ここで大きく効果を発揮したのが、回生ブレーキを使用したワンペダルドライブです。
bZ4Xの回生ブレーキはレベル調整が出来ず。デフォルトで”強”の設定となっています。とはいえ「ガンッ」と効くようなものではなく、リニアに減速を行なってくれます。
そのためアクセル⇔ブレーキを繰り返す様な状況でも、基本ワンペダルドライブで乗り切れたのは「楽ちんだなー」と実感しました。
(※しっかりと車間距離を取る&急ブレーキ時はブレーキペダルを踏むのが前提です。)
また、段差が連続する区間での乗り心地ですが。
フラットな姿勢を保ったまま、車内には不快さを覚えるほど強い入力はありませんでした。しっかり足が動いて、衝撃をいなしてくれています。
しかし、段差上を通過する際の「ゴトゴト感」は確実にありました。
それでも、この車格・車重・タイヤサイズを考慮すれば、十分許容範囲だと筆者は思います。
・スバル・ソルテラ:モーターならではの”力強さ”を活かした乗り味
ソルテラの試乗は、普段からお世話になっている栃木スバル宇都宮店で実施しました。乗ったのは上位グレードのET-HS。
試乗コースは車通りもそこそこで、道幅も広い国道がメイン。走行シチュエーションとしては「ごく普通の一般道」となります。
スバルとして初めてのモーター駆動車となるソルテラ。今までエンジン車をメインとしてきたスバルが電力で表現したのは、既存のスバルユーザーも納得の”力強さ”でした。
走り出しこそはEVらしく静かな動き出しですが。
アクセルを踏み込んだ際に、思わず「力強いなー!」と言葉が漏れてしまうほどのトルクフルな加速。
一般的なエンジン車の様な振動やエキゾースト音が無い分、さらっとした印象ではありますが。モーターがタイヤを回しているトルク感が確実にドライバーに伝わります。しかも、一番電力消費を抑えたecoモードの状態でも。
さらに、車全体の仕上がりもダイレクト感に満ちていました。
程よい重さがあるステアリングはクイック操作への応答性も良く、タイヤが路面をしっかりと捉えているのが伝わってきます。
このハンドリングに大きな影響している足回りも、bZ4Xに比べて硬めにセッティングされています。
全体的にフラットな乗り心地ではありますが、段差上を通過する際に「ゴツゴツ感」があります。
しかし、ロードホールディング性能の高さを実感しながら運転できるこの乗り味は「いかにもスバル車らしいな」と言えます。
そしてソルテラのAWDモデルには、ドライブモードセレクトに「パワーモード」が加わります。これはbZ4Xには無いソルテラ独自の設定機能です。
実際に試してみると、まさにEVならではのブーストと呼びたくなる、「スッ」と瞬時に速度が立ち上がる"俊敏さ"が前面に押し出された加速フィールへと変化。高速道路の合流など、スピードを求められるシチュエーションでは、かなり役立つ機能です。
■"あの"最新装備が、仇になっちゃった
先進的なブランニュー感と、ごく一般車として使用出来る扱いやすさを合わせ持っており。
且つ基本設計を共有しながらも、メーカーとしての味付けがハッキリと分かれているbZ4Xとソルテラ。
BEVならではの静粛性やスムーズな加速フィールに、SUVボディならではの使い勝手の良さなど、一般的な使用範囲における優位性は高いです。
しかし実際に試乗してみると、気になるポイントも確かにありました。両車に共通する筆者が気になったポイントを2つ紹介します。
①加速の頭打ち感
発進からモーター駆動ならではの、スムーズで伸びのある加速特性を持つ両車。
スペック的には驚くほどの数値ではないものの。エンジン車とは違うシームレスな速度の立ち上がりは、やはり相当な”素早さ”を体感する事でしょう。
しかし、より普段使いに近いシチュエーションで走行したソルテラの試乗時に気づいたのですが。60km/hを超えたあたりの加速では、どこか頭打ち感がありました。
試乗コース上には、若干スピードレンジの上がる環状線区間への合流があったので、一時的にアクセルを踏み込む場面(約80km/h)があったのですが。
0-60km/hにおけるスムーズさとは明らかに変わった違和感がありました。
筆者が体験したフィーリングだと、eco&ノーマルモードでは60km/h以上、パワーモードでは80km/h付近で、この頭打ち感があります。
この特性は、バッテリー&モータースペックが同一のbZ4Xでも発生すると予想します。
高速道を走行する際は、スピードに乗ってしまえばどうって事無い問題かもしれません。
しかし、常用域のスムーズさが際立つ分。ある速度以上に”鈍さ”が発生するこの感触を、どう捉えるのか?
特に自分で高速道路などを運転する機会があるユーザーとしては、考慮するべき焦点だと思いました。
②ドライビングポジションに悩むコックピットレイアウト
次に気になったのは、運転席の取り回しです。
両車のコックピットレイアウトは、真新しさも感じられるデザイン性があり。発表時から各メディアでも注目されていましたが。
ですが実際に乗ってみたところ、ここが筆者的には最大の不満点となってしまいました。
その理由として、ドライビングポジションとメーターの視認性、この2つが挙げられます。
運転席に座り込み、まず最初に戸惑ってしまったのが、ハンドル位置です。
普段通りに調整しようとしても、ステアリングコラムにテレスコピック(前後移動)は存在せず、チルト(高さ移動)はわずかな調整幅しかありません。
前記事でも紹介した通り、径の小さいハンドルが搭載されているので操作性に不安を覚える事はありませんが。
正直、身長183cmの筆者からしたら「もうちょっと上まで移動出来たら、良いんだけどなぁ」と思ってしまったのも事実でした。
そして、ハンドル位置を含めたドライビングポジションの自由度の低さに大きく起因するのが、新搭載されたトップマウントメーターです。
遠方配置による、運転中の目線移動を少なくできる。そしてフードレスなのでガラス面への反射も抑えられる。など、ドライバーの視界条件を考慮された設計なのは理解出来るのですが。デフォルトでメーターとハンドルがラップして見えてしまう構造については、筆者は違和感がありました。
速度を含む主要なインフォメーションは、メーター内の3分の2の範囲に表示されるので問題は無い、という事です。つまりは、その範囲が見える位置に座席を固定しないといけないという制約が発生するという事です。
実際に筆者は、ソルテラの試乗時にポジション取りに失敗しましたね。
普段通りの感覚で座席を設定して発進したものの、ハンドルがメーターの速度表示部を隠してしまい、見づらいのなんの(笑)
さらにソルテラには、ドライバーモニタリングカメラもついているので、”認識できません”表示も出っぱなし。
途中で調整する余裕もなく、そのまま試乗終了となってしまいました。
その反省点を踏まえ、bZ4Xではしっかりとメーターが視認出来る状態で試乗したのですが。前述している通りに、ポジションの自由度の無さ&メーターの視認性の違和感は拭えませんでした。
◾️終わりに
全2回に渡り、トヨタ・bZ4X&スバルソルテラの試乗レビューをお届けしました。
筆者的には気になる点もありましたが。走行性などの面における、車としての出来の良さは確かに実感しました。
何よりこの2台は、現在の国内自動車市場におけるゲームチェンジャー的な立ち位置なんじゃないかと、筆者は思っています。
トヨタ•スバルの本格的なBEV市場への参入を飾ったのはもちろん。トヨタに関してはKINTO専用の取り扱い、スバルとしては初のEV技術の投入など。クルマ単体のみならず、今後の車業界への影響も少なからずあるはずです。
ここからトヨタ•スバルのみならず、他メーカーを含む国内な自動車シーンがどの様に変化していくのか?
1人の自動車好きとして、大いに注目していきたいと思います。
•bZ4X 試乗会場:湘南T-SITE KINTO POP UPカウンター
https://about.kinto-jp.com/n/nf470826d3e36
•ソルテラ 試乗協力店:栃木スバル自動車株式会社 宇都宮本店
https://www.tochigi-subaru.jp
※画像引用:トヨタ自動車株式会社https://toyota.jp/bz4x/
※画像引用:株式会社SUBARUhttps://www.subaru.jp/solterra/solterra/