25年目の嫁
結婚して以来の25年間、年末から三が日までの3泊4日を夫の実家で過ごしている。
車で片道4時間ちょっとの義実家への帰省は、お盆の2泊3日と年末年始の3泊4日は何となく絶対で、ずっと変えられぬことといつしか感じるようになった。
一方で、札幌市内にある実家では私が家を出たあとに元々遠い地で暮らしていた弟が結婚し、20年前には父が亡くなり、妹も結婚して家を出たため、ここ10数年間は母が1人きりで年越しをしている。
義実家帰省が3泊4日だと、母の元へ顔を見せに行けるのは1月3日の夜か、それすら叶わない年もあった。
「あちらでお母さん1人だから、今年からは1日早く札幌へ戻って早めに顔見せてあげたら?」
厳しさの半面まわりへの思いやりにもあふれる義母が、今年はそんな言葉をかけてくれるんじゃないか。そんな淡い期待を胸に秘めながら、年末の帰省をするようなった。今回はきっと。今年こそは多分。
でも何年経ってもそんな年は訪れない。
夫へやんわりと3泊4日への不満や日数短縮を希望している旨を伝えた。あとで友人から「その言い方じゃ伝わらないよ」と笑われたくらいやんわりと。
当然、何も変わらなかった。
これも周りからは驚かれるのだが、高校へ入っても大学生になっても、子供達もずっと一緒だった。去年、大学の卒業も目前、春からの社会人生活まであと少しとなった娘から「さすがに今回が最後ね」と言われて「うん、そうだよね」と応えた私は、念のため根回しをする。「のんびりしてる子供達だから、ずっと一緒に来てましたけど、実は周りにこのことを話すと結構驚かれるんですよ。だから社会人になったら、今みたいに一緒には来ないと思います」と。
そして実際、今回の年末年始に娘はいない。
今まで義実家へ帰省した際には、いつだって話題の中心にいた娘の不在。もしやこれは、変えられぬと半ば諦めかけていた事柄を変えるきっかけになるのではないか。
「娘が不在の3泊4日って、どう考えても間が持たないと思わない?」年末近くに、アプローチを変えて夫へ話すと、あっさり「じゃあ減らせば?」と言う。
減らせばって、ずいぶん簡単に言ってくれるねと思いつつ、ここまできたらあと一歩。
義父も義兄も差し置いて誰よりお伺いを立てるべき義母へ「今回から1月2日に帰らせてほしい」と伝えたのが12月29日。
「えっ!2日に⁈ あらあ、ずいぶん慌しくなるねえ」と驚かれた上、翌日には「本当に2日に帰るの?」と改めて確認の電話が来たけれど。
お義母さん、2泊3日ってそんなに短くはないし慌しくもないですよ。沢山お話しできるし、台所に並んで一緒に沢山お料理しましょう。
それにこれは、何年も何年も何年も前からずっと言いたくて言えなかった25年目の嫁の決意。
気がつけば私もとっくに、霊長類の中で最も図太いオバタリアンへと成長しているのですから。