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気分は焼きそば【ショートショート】

4人がこうして顔を合わせるのは、もういつぶりのことだろう。
顔を合わせると言っても、あくまでオンラインの上でのことだけど。それでも、それぞれに仕事を持ち、妻であり母でもある4人が揃って顔を見ながらお喋りできることなんて、そう滅多にありはしない。
幼い頃は、周りからよく「若草物語みたいだね」なんて言われた4姉妹。見た目も性格もバラバラな上、今は遠く離れた地でそれぞれ別々の人生を歩むけど、ひとたび顔を合わせたなら、いつだってすぐに昔へ戻れる。

「りっちゃんのとこ、上の娘ちゃんはもうすぐ就職でしょ?」訊いたのは姉のしーちゃん。
「うん。とりあえず地元のテレビ局に」
「えー、UHB?それともSTV?それとも…どっちにしてもすごいじゃん」と言ったのは末っ子のぴりちゃん。
「もしかして、女子アナ?」3女のまーちゃん。
「いやいやまさか。とりあえずは記者だけど、数年経ったら配属は変わることもあるみたい」
「うちの方じゃ北海道の番組は観られないから、中央の局までのし上がってくれたらいいな」
「ぴりちゃん、無い無い。うちの娘そんな野心家じゃないから」
「娘ちゃん今は何やってるの?大学もほぼ終わりで暇なんじゃない?」
「バイト三昧。夜ちょっと遅くに帰ってきて、ご飯もちゃんと用意してあるのにインスタントラーメン作ったり、カップ焼きそば作ったり。私はああいうの、あんまり食べたいと思わないけど」
「そのせいかもしれないよ」と、まーちゃん。
「だね。子供の頃に食べさせてもらえなかったから、余計に食べたいんだと思う。今なら自分で買えるし、作れるし」加勢するしーちゃん。
「そう言えば、まーちゃんやぴりちゃんも結構食べてたよね、焼きそば。部活終わって帰ってきてからとか」
「食べてた、食べてた」
「え、ぴりちゃん過去形?私なんて今だって食べてるよ」
「そう言われると、私も食べてる」
「うちの息子はね、すっごく辛いの昔よく食べてた。知ってる?辛いの」
「ある気がする」
「て言うか、この話そろそろ止めない?久しぶりに4人が揃って、時間も限られてるっていうのに、延々と焼きそば談義なんて」焼きそば大臣のまーちゃんが自ら制する。

「しーちゃん、このあと仕事なんだもんね。俳句の先生。すごいなあ」
「楽しいよ。男も女も年輩も若者も、色んな生徒さんがいるから。私も日々発見があって、勉強になる」
「しーちゃんらしいね」
「りっちゃんの仕事は?変わらず順調?」
「零細企業で、変わらずこき使われてる」
「なあんて言って、実は結構やりがい感じてるくせに」にやにやするぴりちゃん。
「まーちゃんの羊毛作品、また地元紙で取り上げられたんでしょ」
「えっ、すごい」
「えへっ、まあね」
「ぴりちゃんは、猛烈に頑張ってるのは聞かなくてもわかるから、むしろ頑張り過ぎないようにね」しーちゃんが最後に締める。
「うんうん、確かに」
「そうだよね」
「はあい、承知しました。おねえさま方」
ぴりちゃんのおどけた返事に4人でひと笑いして、日曜朝のオンライン姉妹会はお開きとなった。


今朝も遅く起きてくるであろう大学生の息子に、パンを焼くつもりでいたけれど。
なんだかすっかり、気分は焼きそば。

発酵後の生地は丸めて休ませて
丸く伸ばしたら
くるくるして綴じ目はきゅっと
2次発酵も完了したら
200℃×15分で焼き上がり
焼きそばは添付のたれを半量使用
カレー粉+でちゃちゃっと炒めて
うちの焼きそばパン
はい出来上がり♪


❉音声配信「すまいるスパイス」にお招き頂いた際に持ち上がった企画
[4姉妹物語〜そこに焼きそばがあったから〜]
次女篇です。


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律子
もしもサポートして頂けたなら、いつもより少し上質な粉を買い、いつもより少し上質で美味しいお菓子を焼いて、ここでご披露したいです🍰