[短編]足だけカエル男
夜寝ているとき、ふと足がムズムズすることがある。
きっとみんなも経験があるはずだ。
なんてことない日常の一コマ、そう思い再び眠りにつく。
朝起きると少し布団が濡れているような気がした。
蒸し暑い夏だ。一晩にコップ一杯分は汗をかくともいうし汗をかいたのだろう。
ガッと水を飲み、身支度をすませ会社に向かう。
今日は雨か、憂鬱だ。
いや、そうだろうか。今日はいつもより気分がいい。
汗をかいてデトックスでもできたのだろうか。
不思議だ。じめじめした蒸し暑い夏のはずだが特に下半身が軽い。
このままジャンプをしてひとっ飛びに会社に行けそうだ。
なんてことを妄想しているうちに1日が終わる。
これも日常の一コマ。こんな妄想でもしていないとやっていけない世の中だ。
今日も一日が終わり眠りにつく。
ムズムズ…
やはり足に違和感があるが、もういつものことだ。特に気にしない。
朝起きて布団が濡れているのも蒸し暑い夏のせい。だから気にしない。
こうやって僕の日常は更新されていく。
あれから1年。
なぜか人から避けられるようになったが、僕は今、僕の日常を生きている。
いつもと変わらない日常だ。
彼が避けられる理由は他でもない。
「足だけカエル」
これに尽きる。
人は日々のほんの少しの変化には気づきにくい。
そう、彼は日々少しずつ足だけカエルになっていたのだ。
周りの人間も同じ。
完全に足だけカエル男になるまでは気付かなかった。
日々の変化を軽んじた「足だけカエル男」の話。
あなたの足は大丈夫ですか?
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