狭間

家を、買う決断をした。

理由は色々あったけど、とにかく買うことにした。
それも、可能であれば注文住宅。
土地から探すことになる、途方もない旅。

そんな大層な事を言いながらも、無い袖は振れないので予算を決める。
相場よりもかなり安め、普通には買えないくらい。
不動産屋にはかなり厳しい戦いですよ、と最初に言われた。

それでも、家の為に無理をする、ということは違う気がしていた。
だから、覚悟を決めることにした。

今。候補が見つかった。
これまでもいくつか土地を見に行ったものの、それから進まないものも多かった。
でも、今回はその先に進もうとしている。

来週、建築家さんと一緒に現地を見に行くことになった。

正直、待ち遠しい。
期待しすぎると後から痛い目に遭うんだろうな、と思いつつも、それを隠せない自分がいる。
もし、本当に、手に入ったなら。
ここから、動き始めるなら。
いつかは来る、と甘く考えていたその時が、突然輪郭を宿して目の前に現れた。

今、期待に胸を膨らませる自分と、それを冷ややかに見る自分とが共存している。
何だろう、この感じ。知っている。
身体の上下で分裂してしまうような、混ざらないものが同じ渦の中にいるような。

あ、そうか。
これは、本番のステージの感覚に似ているんだ。
本番だからミスは出来ないという緊張感と、本番だからこそ全力で演奏できるとワクワクする感じとの、相反する世界。

純粋にこの感じ、楽しみたい。
ワクワク感がある時って、そんなに多くは無い。
もしかしたら落ち込むのかもしれないけど、今の自分が感じているこの感情は、大事にしておきたい。