短篇Ⅰ
今朝SNSで、随分記憶の彼方に追いやられていたとある女の子の足跡がついていたことに気付いた。
あの頃はかなり不健全な心身で不自由に生きていたなぁと思う時期に、何回か性的な関係を持った子だ。
心温まる性交渉ではなかったが。
不健全だった時期の人間関係はもうあまり思い出したくないというか、その時の自分に対してちょっと許し難いなぁという感情がある。
もう関わりたくないと思い、その頃の人間関係のほとんどはもう切ってもいる。
若い頃や物事が思い通りにうまく行かないときは自棄になることもあるさ、そんなに気にするまい、と思う気持ちもあるが、
完璧主義が祟って今思い出しても、恥ずかしいようなみっともなくて自己嫌悪するような気持ちになることも多い。
でも、当時それなりにその子の言動に一喜一憂していたのは事実だから、久しぶりに淡い色恋じみた新鮮な感情を持った。
ちょっと刺激的な感情だ。
ちょうど、知り合いにタロット占いをしてもらう機会があったから、
彼女に対する今の僕の気持ちと彼女が僕のことをどう思っているかを占ってもらった。
自分の気持ちなんて、わざわざ占ってもらわないとわからないの?と言われるかもしれないのだけれど、僕は自分の気持ちすら上手く掴めないことがよくある。
「こんなこと思うのはヒトデナシかなぁ」とか「こんなこと思う自分を認めたくはないなぁ」とかそういう補正が働いてしまって、本音に気付けないときや気付きそうになっていても認められないときが結構ある。
たいていは、ある程度時間が経って「今思うと、実はあの時の本音はこうだったなぁ」みたいに気付くのだが、
渦中にいるときは気付けない。
僕は、自分が理想としている人物像よりも、実は結構残酷な性格をしてるなぁということに最近気づいてきた。
だから、僕自身の気持ちについてタロットで見てもらうのは個人的には結構面白くて気に入っている。
今回「僕の気持ち」のカードとして出たのは、ソードのエースで、
そうそう今の僕はとても冷静なんだよな、あの頃みたいに感情的じゃない、と今回は自らの見立てと一致しているなぁと感じた。
そして、「彼女の気持ち」のカードでは「死」のカードが出た。
こちらの方が興味深かった。
解釈としては、彼女の中でもう僕との諸々のことは終わっているということになるのだけれど、そのことよりも、そのカードを見たときの自分の心の動きが興味深かった。
正直ちょっと残念な気持ちになった。
僕自身、今は彼女に対してもう会いたいとも関わりたいとも思わないのだけれど、それでも自分のことを少しでもいいから想っていてくれないかなぁ、などという気持ちがあったのだ。
気持ち、というか淡い願望と言うべきか。
このことが興味深く感じた。
自分の好きな相手から好かれたいという感情は、割とシンプルなものだと感じるけれども、
自分は興味のない相手からも一応好かれておきたい…みたいな感情が自分にはあるのだと気付いた。
今流行りの言葉で言うと、承認欲求だ。
こういうことを思うのって、まだ僕は不健全な感じなのかな?とも思った。
今、世の中では、承認欲求が強いことは「承認欲求モンスター」などと揶揄されアンチコメントにもよく用いられているワードだ。
自分の持つ承認欲求に出会えた面白いタロットセッションだった。