○○○とは

俺には､ 会得したいことがある
両親や先生に相談しても 返事は
「普通が一番」
「頑張れば道は拓ける」
当たり障り無い言葉ばかりだった。

俺の憧れ､
この世界に実在する○○○､
会いたい
が､ どこへ行けば会えるかもわからない
もう じっとしていられない
俺は､ ○○○を探す旅に出た。

都会には人がいる
情報を集めよう

「あの､ すみません
○○○が どこに居るか知りませんか？」

「○○○に会いたいんです」

とにかく無我夢中で 道行く人に声をかけた
で､ 
大体 気持ち悪がられた
『なんだこいつ？』って顔で去っていく
まぁ そうなるさ

「どこかに居ませんか､ ○○○に会いたいんです」
声が枯れ 体力も尽きると思ったその時､

「それ､ どういうこと？｣
低く響く男の声が聞こえた

「え？｣

俺の横を通り過ぎ､ 軽く振り返ったのか
数歩先に 男がいた
俺に話かけた？ まじか！
俺がビビってどーするんだよ

「あの､ 俺...｣

「なんで会いたいの？｣

「会ったら...何か掴めるかと」

「何かって なに？」

「なんていうか､ ぱーっとクリエイティブなカッコイイ感じの...」

「ん？ 具体的に やりたいことあるの？」

「具体的に 無いです」

「興味とか得意なことは？」

「無いです」

「無いのか」

「何がやりたいか考えてないですけど
目指したいです､ 想像の斜め上 を」

「斜め上 ... その想像ってさあ､ 誰の何？」

「誰の？」

「ぁあ 悪ぃ｡ つい理屈で考える癖が。
話長くなる前に行くよ､ じゃあ｣

「待ってください！
世界 ... まずこの街を知りたいです｡
面白いですか？」

「人も刺激も多い｡ 何が面白いかは それぞれ､ 己次第
なんにせよ
ここからスタートと思えば いままでの道草も一興となるかもな｣

「ぁ､ はい､ 意外と美味しかったです｣

「なにが？｣

「道草｣

「… 実際に食ってたの？｣

「はい｣

それから俺は
この男に飯を奢ってもらい､
チケットを買った

劇場で 大いに笑い泣き 笑い
働いて給料を貰い､ また劇場へ。

月日は流れ
とある劇場で あの男と再会した

「 己の想像を世に発したら､ どんなカタチで受けとられようと その想像は観た人のもの
捻り出した “ 斜め上 ” が正解かなんて一生わからないし､ 
僕と君が
君と誰かが
そっくりそのまま 完全に同じものを創造することはできない。
どう？  面白い？」

なんだ､ お見通しかよ
面白くないわけがない。