男子高に入って中退した話
どもども、侑です。毎週連続投稿を前回で切ってしまったのでモチベーションが駄々下がりです……
さて今回も自分語りシリーズとして、私が高校に入ったころの話とその体験・反省点を軽くまとめてみようと思います。私が高校生の頃(といってもまだ5年前くらいですが…)はnoteはまだ一般的でなかったですし、MtF・FtMの方のブログも少なかったのでこの辺りの実用的な情報は手に入りませんでした。これから高校に入る方、また現在通学している方の力になれれば幸いです。
①高校選びは慎重に
身バレが怖いので県名は伏せますが、私が入学した高校は男子校でした。というのも地元の県では公立高校の上位校が軒並み男女別学でして、共学の高校を選択すると高校の偏差値を20くらい下げる必要があったからです。今でこそ共学を選ぶと思いますが、当時成績が良かった私は(模試で県内1位とかもありました)親や教員の勧めを真に受けてそのまま某高校に進学してしまいました。
一般的に学校「経営」が主体の私立高校に比べ、学校「運営」となる公立高校というのは運営母体の意向を受けやすいため様々な面において厳しく、また融通が利かないという問題があります。経済的に余裕があるのであれば私立高校を狙うのも選択肢の一つだと思っています。もし仮にどうしても行きたくない公立男子高or女子高を(親や教員にほぼ強制され)受験するくらいなら、(私立に受かっていて通学が経済的に可能であれば)公立の受験であえて白紙解答をして不合格になると手段もないわけではありません。軽々しくお勧めできることではありませんが、高校選びで行き詰っている人がいたらそういう選択肢も考えてみてください……
私の場合はというと、私立は学費全額免除の特待生が2校とも合格していたはものの、経済的に私立高校になってしまったら大学受験は諦めるしかないといった環境であったため、仕方なく公立高校を受験せざるを得ないといった状況でした。尤も当時は大学になれば家を出て一人暮らしができるという親との約束であったため、「それならば3年間くらい大したことはない」と軽く考えてしまっていたことも大きな失敗でした。入学前に性別のことで引っかかることがあるならばくれぐれも高校選びは慎重に…
②それでも最初は楽しかった
そんなわけで高校に通学することになってしまい、まず嫌だったのは詰襟の制服でした。お隣の(同じレベルの)公立女子高は私服なので非常に不服でした(服だけにw)。まあこればっかりはしょうがないのでとりあえず諦めていましたが、高校の先輩に「制服は作業着」って言われて妙に納得したのは覚えています。まあ気休めですがそう思っておくと精神的な負担が和らぐのも事実です。ご参考までに。
学校生活自体は昔から知り合いだった1個上の先輩がいたので、部活もその先輩と同じ放送部(放送しない放送部で有名でした)に入って結構楽しくやっていた記憶があります。成績に関しても、私の家庭はとにかく貧乏だったので家計を考えて塾には通わず、学校で配布された問題集を延々と周回してそれなりに上位にいられた記憶はあります。性別ネタと全く関係ありませんが、塾に通って無駄な時間を使うくらいなら学校で配布された教材や教科書をしっかりと活用して勉強するだけでも十分だと思います。それ以外でも書店やインターネットを漁れば良質な参考書は山ほど出てきますので効率よく自学自習をして後は遊んでいたほうが精神衛生にもいいと思います。
③男子校の問題点
閑話休題。そんな具合で学校生活自体は比較的楽しかったのですが、問題はやはりありまして、もはや「定義より明らか」といった具合ですが男子校なので男子しかいません。これが最小にして最大の問題でした。
まず、トイレが男子トイレしかありません、そして当然着替えは教室です。これがとてもつらかった私は泣く泣くお手洗いで着替えてましたが、ただでさえ短い移動時間でお手洗いの個室が空くのを待って着替えていると当然授業に遅刻します。まあよく怒られました。
それから、高校生の男子と言ったらどんな感じの生命体かは想像するまでもなく、私はこの雰囲気に圧倒され溶け込むことができませんでした。いや、必死に溶け込もうと無理やり話を合わせてはいたのですがかえって消耗するばかりでした。ただでさえ長距離の通学とやることの多さで疲労しがちなのでこの辺りの余計なストレスはかなり効いてきます。
④些細なことがきっかけで不登校に
1年の終わりくらいだったでしょうか、タスクの多さに身体が負けて体調を崩してしまい1日学校を休んでしまったことがありました。その時はおとなしく家で寝ていたのですが、なんと学校に行かないということは性別の問題に苦しまなくていいんですよね!これに気付いてしまったのが終わりの始まりでして、その日から性別のことで心が苦しくなっては学校を休む、というような生活を送り始めました。2年生になってからは仲の良かった友達がみんな文型に行ってしまった(私は理型でした)ことや親しくしていた先輩が卒業してしまったこともあり、さらに休みがちになりました。精神と身体のリンクは恐ろしいもので、一度不登校状態に陥ると学校に行こうとするとストレスから胃腸の不調や頭痛がするようになりました。
私の学校は少々カリキュラムが特殊で、3学期制ながら単位の計算は前・後期の2期となってました。これによって2年の開始早々に休みすぎで出席日数が足らなくなってしまい、このままだと進級ができなくなるという事態になりました。不登校状態でこれを言うのは酷ですが、出席日数の不足は時として牙を剥きます。気を付けましょう。
⑤前代未聞の高校留年
当時の私はまだ高校を退学するという意思が固まってなかったのでとりあえず休学することにしました。当然親に事情は言えなかったので体調不良でごまかしてましたが、普通そんなに体調悪くなることないですよね、サボりだとめちゃくちゃ怒られました(この辺りは毒親編で書きます)。
休学に際して傷病の診断書を取得する必要がありまして、渋々地元の大学病院の精神科に行きました。この時性別違和の話をすればよかったのですが、ハズレの医者を引いてしまったようでとても高圧的でして、適応障害の診断書を出してもらうのが精いっぱいでした。不登校になったらまず精神科にはお世話になると思うのでよさげなところ引くまで医者を変えましょう。
休学中はいろいろなことをしました。当時地元の大学のとあるプログラムに参加していまして、そちらの研究室に配属されて学校の傍ら学術研究をしていたので居場所があったのは救いでした。私服だとまあ気が楽ですよね。学校外のプログラムで居場所を作っておくのは何かと役に立ちます。
⑥復学からの退学
しばらく休養期間を経て年度明けの4月に復学しました。当時は1個下の学年で再スタートできるので勉強面でも楽勝だと呑気に構えていたのですが、ただでさえ友達がいない私に1個下の学年で上手くやっていけるはずもなく、またホルモン剤の影響で若干女性っぽくなった身体とレディースカット (このころはまだ短めでしたが…)の髪型も相まって完全に浮きました。お手洗いでの着替えとかは休学前と同じようにやっていたので相変わらず授業には間に合わず、結局同じことの繰り返しでした。居場所がない状態で毎日通学できるはずもなく1か月ほどで休みがちになり、結局7月に退学しました。
⑦高校を辞めたあとの話
高校を辞めてからはしばらく家で勉強していました。件の大学のプログラムもまだ引き続き参加していたため、活動がある日は大学へ行き、ない日は家か図書館で1日中勉強という感じの日々を過ごしていました。勉強自体は嫌いではなかったので学校という環境から逃れられるだけで当時はとても大きな開放感を得ていました。
辞めてすぐの高等学校卒業程度認定試験(いわゆる高認、昔の大検)でとりあえずの大学受験を取得しました。高認試験自体はとても簡単なもので、特に私の学校では1年ですでに履修した科目でほとんどの試験が免除になりました。1科目だけ試験を受験しに行きましたがそれも教科書の太字のものすらまともに出てこないような簡単なものです。退学したら必ず高認試験は受けましょう、あっても役には立ちませんがないよりはマシです。
転機が訪れたのは18歳になったころでして、突然家の金がなくなって仕事をしなければいけなくなってしまいました。この辺りは前の記事でも書いた通りですが、仕事探しで想像以上に苦労しました。ただでさえ大学進学以外潰しの効かない普通科高校でかつ中退となればまともに仕事などできるわけがありません。何とか若さと高認取得を押し出して仕事を見つけましたが、それも年齢の増加と共にどうにもならなくなると思うと今から震えるばかりです。正直高校を辞めてひどく後悔しています。
⑧高校はできれば辞めるな
以上お話したように、高校を中退すると後の人生が死ぬほど大変です。私の意見としては、今在学中の読者の方にはできれば辞めずに卒業まで耐えてほしいと思っています。
では具体的に性別違和に対してどのように向き合っていくかという話ですが、まず制服や容姿に関する校則に関しては基本あきらめるしかないです。教員や親にカムアをして特別扱いを受けるという手もありますが、かえって浮くこともあります。仮に性別違和を開示して学校生活を送ろうとしても、社会性がまだ身についていない高校生の中には心無い言葉をかけてくる人もいるかもしれません。それによって自分が受けるダメージやさらなるリスクを呼び寄せる危険性を勘案すると個人的には黙っていた方がいいのではないかと思います。
それでもしんどいものはしんどいと思います。そういう場合には親や教員を頼れるようなら頼り、それも様々な事情で難しいようであれば学校外の人間を頼るのも手です。学校外の活動が重要と先ほど述べたのはそのような意味もあります。一度冷静に周りの意見を聞いて、それで自分がどう行動するのが最善なのか考えるべきです。高校の退学は非常に手続きが面倒なので、衝動的に辞めてしまうということはほぼないと思いますが、どこかで事情を教員や親に話すことができれば、定時制や通信制に「転校」という扱いを受けることも可能です。ちゃんと通学していればその学年のままで転校できるはずです。辞めて中卒無職になるよりよっぽどいいです。あと高校生の身分があると学割も使えます(交通機関だけじゃなくて遊びも安いしPCのソフト類も安く手に入るゾ!)、ホルモン剤を局留めで学生証で受け取れます、勉強し放題です、つらい労働しなくていいです。飴と鞭だと思って学生の身分を維持しましょう。
高校生の未熟な精神にとって、自身の根幹をなす性別のことについて打ち明けることはとてもハードルが高いことです。私も当時はそれが上手くできなかったために退学することになってしまいました。「誰かに話して行動を起こさなければ何も始まらない」と分かったのはそれよりもずっと後のことです、後悔をしても中退という事実は消えません。その後の人生の苦しさ難しさと、誰かに打ち明けるその一時の苦しさを冷静に比較してみてください。多分きっと答えは分かるはずです。
余談ですが、トランスが一度別学の高校に入学してしまうと就職の際に苦労します。これは履歴書の学歴欄によるもので、仮に改名が完了(または元から戸籍名が中性的な名前)して女性として就職するときに引っかかってきます。私も何度経験したかわかりませんが、面接官から「あれ?君女性だよね、なんで○○高校なの」と問いかけられ逃げられずにトランスであることをカムアする羽目になります。会社の理解があればそれでもいいですが、理解がなければそこで不採用です。想像以上に社会は我々にとって厳しいです。私の友達のMtFに某有名男子進学校卒でそのまま某一流私大に行ったスーパーエリートがいますが、就活の際にこの点でかなり苦労したと聞きました。学歴に現れた性別の枷は中退卒業Fランエリート関係なく一生外れることはありません。気を付けましょう。
結論として高校選びは慎重にしよう、つらくても3年は頑張って耐えようという趣旨の文章になってしまいましたが、これは私の後悔に基づく意見でもあります、ぜひ参考にしていただければと思います。最後に、在学中の読者の方でもし、周囲に誰も相談できる人がいない学校がつらい辞めたいという方がいらっしゃいましたら遠慮せずコメントをください。匿名の繋がりでいいのです、誰かに打ち明ける、一度冷静になって考えることがとても重要です。思い詰めて黙って辞めてしまう前に話を聞かせてください。お金を配ったり高校を紹介したりするほどの力は私にありませんが、話くらいなら聞けます。お待ちしています。
それでは、今回も最後までお読みいただきありがとうございました。次回は改名の話でも書きましょうかね、ばいにょん!!