美術の敷居は高いのか。
タイトルには記載しなかったが、これも主語は「発達障害を抱える子」である。
以前『発達障害を抱える子は美術が苦手なのか。』という記事で書いた通り、「美術科においてDCDが影響する範囲での美術は苦手かもしれない」と述べた。
上の記事ではDCDに焦点を当てていたため述べていなかったが、発達障害を抱える子は「二次障害」によって障害の特性によって本来苦手では無いものにも困難を感じてしまうことも多い。
例えば、ADHD(注意欠如多動性症)は「計画性」「ワーキングメモリ」という記憶機能に困難があると言われている。記憶機能の困難の結果、注意散漫になり学習内容を習得できなかったり、うまく予定が立てれず予定が頓挫してしまう、という二次的な困難が生じてしまう。
特に美術は1つの作品を何日間に分けて制作をし、完成させていく教科である。そこには、「同じものを長時間制作していく」という持続的な注意力、「何日までにここまで終わらせる」という計画性、が必要となってくる。しかし、ADHD傾向がある子はこのような要素のある美術に対してあまりいいイメージはもたない子もいい多い。(書くまでもないが、ADHDを抱えるこの中にもそうでない子もいる。)
そこで、まずは美術に興味をもち、どんな子に対しても美術の敷居を低くするにはどんな題材がいいかを考えた。
以下は生徒と関わる中で浮き出てきた項目である。
・30分以内で完成できる。
・一定のクオリティを確保できる。
・既存のもの(自分で発想をしない)を活用する。
・技術の差が極力関与しないもの。
といったところだろうか。
そこで、生徒と一緒に考えた題材は
「コラージュ」
となった。
下は中1の生徒と試しに一緒に制作した作品である。
ネットからフリー素材を引っ張り出してきて、iPadで制作した作品である。どこかのサイケデリックなアーティストの作品にあってもおかしくないと思う。
コンセプトをもう少し固め、一定の画像編集技術を覚えると一層面白い作品ができるように感じた。
上記のように、発達障害を抱える子は「こういうものを描こう、作ろう」という「計画する」ことが苦手な子が多い。
そのような子にとって「コラージュ」という題材は、その場その場で興味がある素材を探し、切り取り、その瞬間に「面白い」と思った構図に素材を組み合わせる。
既存の素材を組み合わせて制作していくため、「計画する」と言うことに対して負荷なく進めることができる。
上の写真を一緒に制作をした生徒の表情を見てると、変な組み合わせができたら笑い、面白い組み合わせができたら喜び、瞬間瞬間で「表現」に素直な表情を見せてくれた。
もちろん、計画性を持ち、自分の理想に近づけるために制作をしていくことも大切である。学習指導要領にも「見通しをもち」と言う文言がある。
しかし、ここ100年ほどの美術史の動向を見ていると、「計画性」よりも「瞬間の感情」を重視しているように感じる。
私はこれからも「手先の技術」を最重視しない美術、どんな子にとっても楽しいと感じてもらえる美術を追求していく。