かぽす紀行

革細工作家/美術教育/特別支援教育

かぽす紀行

革細工作家/美術教育/特別支援教育

最近の記事

見えないものを撮る、ICTと美術。

目に見えないものはこの世にごまんとあります。「音」「光」「風」「匂い」「感情」などなど。 しかし、その目に見えないもの表現しようという試みが美術においてはなされてきています。 クロード・モネをはじめとする印象派と呼ばれる人々は「光の変化」を追求しました。カンデンスキーは「音やリズム」を画面に表現しています。20世紀に普及したカメラによって、具象物を淡々と描くことから解脱してきました。 映像メディア表現少し話は飛びますが、GIGAスクール構想によって学校では一人一台のタブ

    • 苦手なものは食べないとだめ?

      最近、Twitterで「苦手なものは無理には食べさせない」という投稿を目にしました。苦手なものを無理に食べさせて、さらに嫌いになってしまっては本末転倒ですしね。 そこで、発達支援の視点から「食」について少しだけ書いていきます。 私が主に考える発達支援からの視点は2つあります。1つ目は「感覚過敏」、2つ目は「生涯を通しての”食べる”ことの楽しみ」です。 苦手なものでも食べさせる、食べさせない、のどちらか、と言う話ではないので、それを踏まえてよろしくお願いします。 感覚過

      • 縁起絵巻〜絵巻の中の地獄〜

        コロナもあって県外へのお寺にも行けず、久しぶりの投稿です。 今回は私の記事の中で度々取り上げているテーマの「地獄」についてです。 まず、「地獄絵」と聞いてどのようなものをイメージしますか?「画面いっぱいの炎で表されている地獄」をイメージする方が多いように思います。有名なところですと「聖衆来迎寺の六道絵」がその一例です。他にも奈良国立博物館、東京国立博物館などが所蔵している「地獄草子」も有名です。 しかし、これら地獄をメインとした作品以外にも、地獄が登場する作品があります

        • 学校と支援施設の連携は…?

          私は児童支援施設、放課後デイサービス、児童養護施設など学校とは別の施設で子どもたちの支援をしています。その中で様々な支援施設の課題が見えてきました。結論から言いますと、「学校との連携が薄い」ということです。具体的には、「担任の先生とのコンタクトがこちらからはまず取れない。」ことが大きいと感じています。 そんな支援施設職員は今年度をもって退職しますが、放課後デイサービスはどんな場所なのか、仕事内容、現状、課題、など、この記事が少しでも学校と放課後デイサービスの掛橋になれればな

          「やる気がない」の分析

          学習支援をしていると「やる気がない子」に多く出会います。その子らの成績はあまり良い方ではない印象があります。 「やる気がない」の一言で済ますのは簡単なのでことなので、そこで完結してしまうことがありますが、もう少し「やる気」の原因を分析してみると色々と自分なりの解決策が見えてきました。 レジリエンスの概念レジリエンスは「回復力」「弾力」「復元力」と言うような「失敗しても乗り越えることができる力」と言われます。(物理学の分野から心理学の用語としても広まりました。)発達障害を抱

          「やる気がない」の分析

          仏教美術の目的は何か。

          小学6年生の修学旅行は奈良と京都に行きました。当時は全く仏像に興味がなかったので、仏像の何を見ればいいかわからず「法隆寺の七不思議」とか、そういうオカルト的なことを調べて修学旅行のしおりを作っていました。 「仏教美術」と聞くととても堅苦しく聞こえますが、一番初めに仏教美術について学ぶ場面は小学校5年生の社会での授業が多いと思います。法隆寺や聖武天皇が作らせた奈良の大仏など「仏教美術」と言う名前ではありませんが小学生の頃から触れています。 「これらのお寺や仏像はなんのために

          仏教美術の目的は何か。

          美術を通して何を伝えたいか。

          もうすぐ今年度も終わりますので、何か振り返りをしたいと思ってこの題材について書いていこうと思います。 美術を通して何を伝えたいか、伝える必要はないかもしれませんが少し考えをまとめました。 結論から言いますと、『好きなことをたくさん集めることの大切さ』が自分なりの回答です。とてもシンプルでとてもしっくりきています。私は目標として中学生の頃から言い続けていることが2つあります。「いい大人になること」「幸せに生きること」です。そこで、当時この2つを達成するにはどうすればいいか、

          美術を通して何を伝えたいか。

          年賀状でもつくろうぜ!

          遅くなりましたが、あけましておめでとうございます。 毎度、拙い記事を読んでくださりありがとうございます。 本年もよろしくお願いします! と言うことで、今回は今年の年賀状制作過程を記事にしていきます。 まずはテーマを決めないといけないと言うことで、あれこれ考えた末に「御朱印」をテーマに制作することにしました。お寺めぐりや仏像が好きなのと、多少書が書けるので、あと、お正月っぽいかなと言う理由でこのテーマにしました。 先こちらが今年の年賀状の完成版です。 基本的にPro

          年賀状でもつくろうぜ!

          書字障害を抱える子のタブレットによる描画の可能性

          昨日、仕事先で思ったことを忘れないうちに文字に起こそうと思う。 小学4年生の子がいる。LD(学習障害)を抱えており、特に書字が本人にとってとても負担となっている。 書字障害に支援は主に、エンコーディングと不器用さに着目して支援を行う。エンコーディングとは想起のことである。音(音韻)を文字としてアウトプットすることが苦手なためそれに対しての支援である。耳で「gakkou」と言う音が聞こえてきた時「がっこう」「学校」と言う文字に変換することが苦手なのである。 今回、書きたい

          書字障害を抱える子のタブレットによる描画の可能性

          デジタル画は評価できない?

          久しぶりの投稿です。 今回はいつものようなお寺レポートではなく、「デジタル画」の評価について自分の考えを整理するつもりで書いていこうと思います。 少し前、ある小学校の児童が修学旅行のしおりの表紙絵をデジタル画(ペンタブなど)で描き、提出したところ、「それはダメだ」と提出を却下されたという話を耳にしました。学校での図工や美術の授業ではあまり描くことがないデジタル画ですが、今や小学生でもパソコンやタブレットを使いデジタル画を描いている子は多くいます。 時代とともに表現の幅も

          デジタル画は評価できない?

          長岳寺の大地獄絵開帳、そして現代。

          11月15日の月曜日、奈良県天理市にある長岳寺という高野山真言宗のお寺に行ってきた。毎年期間限定で開帳される狩野山楽(1559-1635)の大地獄絵を見に行こうと思ったのだ。 長岳寺までは京終駅から柳本駅まで電車で行き、そこから徒歩で向かった。京終は「きょうばて」と読み、由来は奈良時代にここ一帯が平城京の南東の外れに位置していたからだそう。個人的に初めていく街の地名を考察するのがすごく好き。 柳本駅から長岳寺までは徒歩で15分くらいで、その道中には古墳群が見られた。 長

          長岳寺の大地獄絵開帳、そして現代。

          酒呑童子の最期

          今回の記事は現在革細工で制作している歌川国芳の『源頼光』についての題材観や制作するにあたって考えていることを書いていこうと思う。 革細工の取り組みについては下の記事を参照して欲しい。 この浮世絵の題材名は『源頼光』だが、目がいくところはなんと言っても『酒呑童子』である。 (出典:プーシキン美術館) 「酒呑童子」の説話は地方によって解釈が異なり、様々な逸話が残っている。 この歌川国芳作の『源頼光』は酒呑童子の最期を描いたものである。源頼光が酒で弱体化させた酒呑童子の首

          酒呑童子の最期

          絵を”観て”いるか。

          以前、『絵を触る挑戦』というタイトルの記事を書いたが、今回は『絵を”観て”いるか。』というアンチテーゼのようなタイトルである。 最近、Twitterの方で制作過程をアップしていた作品がついに完成したのだ!月岡芳年の『新形三十六怪撰 布引滝悪源太義平霊討難波次郎図』を革でのカービングで表現したもの。カービングしたものをサクラの木版に真鍮釘で打ち付け、額装をした。 上の記事を読んでいただいた方はお分かりになると思うが、この作品は「触る」ことを前提とした作品であり、「目で見る」

          絵を”観て”いるか。

          仏を、滅せ。

          ※『鬼滅の刃』にて162話(童磨編)を見ていない方はネタバレを含みますのでご注意ください。 最近話題の漫画、『鬼滅の刃』は色々と日本中世史、美術中世史を踏まえていると思われる部分が多くある。つくづく漫画家さんは背景を理解した上で描いているんだな、と感心する。 今回は『鬼滅の刃』162話に出てくる上弦の弐『童磨(どうま)』と言う鬼について、その背景を日本中世史、日本美術史に求めていく。 絵:弟作(自分で描くのもあれなので弟に描いてもらった。) 童磨はナンバー2の鬼であり

          仏を、滅せ。

          美術の敷居は高いのか。

          タイトルには記載しなかったが、これも主語は「発達障害を抱える子」である。 以前『発達障害を抱える子は美術が苦手なのか。』という記事で書いた通り、「美術科においてDCDが影響する範囲での美術は苦手かもしれない」と述べた。 上の記事ではDCDに焦点を当てていたため述べていなかったが、発達障害を抱える子は「二次障害」によって障害の特性によって本来苦手では無いものにも困難を感じてしまうことも多い。 例えば、ADHD(注意欠如多動性症)は「計画性」「ワーキングメモリ」という記憶機

          美術の敷居は高いのか。

          美術史修学旅行(滋賀への旅)

          私は名古屋市に住んでいます。 名古屋市の小学校の修学旅行は奈良と京都へいくことがほとんどで、行き先も東大寺、法隆寺、清水寺、金閣など、いわゆる有名どころでした。 ただ、「修学旅行」といえど残ったものは「楽しい思い出」くらいだった気がします。 そこで今回は、 「大人になっても修学旅行にいきたい!」 という想いを叶えるべく、「楽しい」に加え「修学」要素強めの「大人の美術史修学旅行」と題して滋賀県への修学旅行のプランを考えました。 中世における死後の世界のイメージを鮮明

          美術史修学旅行(滋賀への旅)