IMJものがたり41 藤原紀香と「プロジェクトミネルバ」
IM Jがゲーム事業に進出したのは、マリーガル・マネジメント(ゲームクリエイターをマネジメントするリクルートの関連会社)から三木裕明くんが転職してきたのがキッカケ。
2002年5月21日に、プレイステーション2用『プロジェクト・ミネルヴァ』をD3パブリッシャーから発売し、六本木のベルファーレで完成発表会を行った。
このゲームは、女優・藤原紀香さんが登場キャラクターのモデルとして全面的に協力したサバイバル・アクション。主題歌はBoAという大作だった。
そして、我々世代を一世風靡したゲーム「ゼビウス」の生みの親で、「ゲームの神様」と言われていた遠藤雅伸さんと三木くんの構想で新会社「モバイル&ゲームスタジオ」を設立する。
当時のケータイゲーム市場は、DeNAとグリーが2大プラットフォーマーとして存在しており、そこにゲームを出していくのが主な戦場だった。
モバイル&ゲームスタジオはPS用やアーケードゲームも作れる本格派のゲームメーカーだったが、2007年6月のiPhone発売以降はゲームのスタイルや提供の仕方も大きく変わっていく予感がし、次第に従来のゲーム業界に新しい文化を混ぜていきたいと思うようになる。
そうした考えでM&Aしたのが、川口くんや小川くん率いるボトルキューブだった。
彼らの若さとフットワークの良さ、ケータイ世代の新しい感性がモバイル&ゲームスタジオと触れ合うことで化学反応を起こすような気がしたのである。
例えば、ボトルキューブが開発したiPhone向けのゲーム。
スマホに可愛い女の子の写真があり、その写真に向かって息をふぅーっと吹きかけるとスカートがめくれるという、ちょっとHでライトな感覚。
ビデオの普及期もそうだったが、最初はこうしたソフトが市場を広げていくキッカケになるのはよくあること。
この2社のグループ企業を軸にゲーム事業を進めていったのである。
が、少しだけ私の中に迷いがあったのも事実だった。
ゲームは確かに面白い。私も昔はドラクエにハマったし、マリオやドンキーコングもいっぱいやった。
難しい勉強をわかりやすく、楽しくする教育ツールとしてゲームを使う場合もある。
ゲームのストーリーに感動したり、人生の示唆を受けることがあるのも知っている。
一方、特定のカードやアバターのようなゲーム内アイテムを手に入れるコンプガチャ問題で、ユーザーへの多額の課金が発生するのが社会問題になったように、ゲームに使うお金、大量の時間、のめり込む気持ちを後押しする危険性も感じつつあった。
品行方正なゲームばかりを作っていくとは限らない。
ヒットを狙い、若年層を惹きつけて利益をあげることも必要になってくるかもしれない。その良し悪しの線引きを明確にするのも難しい。
インターネットも社会にとって功罪両方あると思うが、間違いなく「功」の方が大きい産業革命だと私は思う。
が、ゲーム事業を進めていくことが、「功」を大きくすることになるかどうか、この頃なんとなく確信が持てなくなっていた。
こうした私の気持ちの揺れが、ゲーム事業を切り離していった原因のように思う。
そしてその後、モバイル&ゲームスタジオをサイバーエージェントグループに売却することになる。
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