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バレエ感想「ドン・キホーテ」オランダ国立バレエ団(2024年10月25日)

ついに夢だったオランダ国立バレエ団の舞台を見ることが出来ました!
アムステルダムにある国立歌劇場は運河が目の前にあって、建物自体もとても素敵です。

この日のキトリ役だったQian Liuの写真が劇場の壁に展示されていました!

ちなみにオランダだけでなくヨーロッパあるあるだと思いますが、バレエの開始時刻は夜の20:00です。終演は約23:00とかなり遅く、客席に子供は見かけませんでした。パーカーにジーンズのラフな格好の人もいれば、イブニングドレスを着用したゴージャスな人もいて、その場にいるだけでとても楽しかったです。

この日はダントツでサイドキャストが印象的でした。特にドン・キホーテ役のNicolas Rapaicとサンチョ・パンサ役のFrans Schravenの演技が素晴らしくて、感動しました!
ドン・キホーテ役のRapaicは血気盛んな老人という感じで、いわゆるまだまだ現役なお爺さんというのか、冒険心と好奇心に満ちた希望に溢れるドン・キホーテ像がとても印象的でした。サンチョ・パンサのFrans Schravenは演技が演技に見えず驚きましたし、まるで演劇を見ているようでした。途中で泣いたり、思わず声をあげたり、女の子にちょっかいを出して怒られたり、哀れでありつつも幸せそうなサンチョ・パンサがあまりに素晴らしくて目が離せませんでした。
バレエ「ドン・キホーテ」の主役はキトリとバジルですが、この2人の演技は群を抜いており「主役は譲らないぜ!」という気迫すら感じた気がします。こんなに深みのあるドン・キホーテとサンチョ・パンサは今まで見たことがなく、心から感動しました。

ドン・キホーテ役のNicolas Rapaicとサンチョ・パンサ役のFrans Schraven

またロレンツォ役のAnatole BabenkoとガマーシュのDaniele Montero Realも素晴らしかった!なんとかして娘をお金持ちに嫁がせたいロレンツォ像は強烈で、ガマーシュへのゴマスリが分かりやすくて面白かったです。ガマーシュは若干高慢さもあり、人使いが荒い金持ち像がよく分かり、家来に担がせた輿から滑って出てくるところや、至る所で格好付けて登場しようとするところは大爆笑でした。
日本と違うなと思ったのが、オランダの観客は結構喋ったり笑ったりするのですが、ダンサー達も観客の反応を誘発し、それを楽しんでいるなと感じました。個人的にはバジルにキトリを奪われたガマーシュがバルコニーで大泣きしているシーンはめっちゃ笑ってしまいました。彼らの演技力によって悲劇すら喜劇に見えました。

ロレンツォ役のAnatole BabenkoとガマーシュのDaniele Montero Real

さて私を感動の渦に巻き込んでくれた演劇チームに比べると、正直バレエについてはとても美しくはあるのですが、なんだか琴線に触れず残念でした。
この日のキトリはQian Liuで、バジルはよく公式映像で見かけるYoung Gyu Choiというプリンシパルペアでした。この2人トップを張っているだけあって技術も正確でとても上手なのですが、正直に言って期待したほどではなく、別にわざわざオランダまで見に来なくてもいいかなという感じました。Qian Liuは教科書みたいに美しいポジションを見せてくれ、Young Gyu Choiもジャンプが鮮やかでとても綺麗だったのですが、なんだか客席が盛りあがらず、メリハリを感じることが出来ませんでした。
文句を言いたいのではなく、みんな本当に上手です。ですがもっと熱狂の渦に誘ってくれるような踊りを期待していたので、そこまでではなく、普通に上手だなと思いました。残念ながらイマイチ舞台が盛り上がりきらなかったというのか、日本でバレエを見るのとあまり変わらないなと思いました。

キトリのQian Liu、バジルのYoung Gyu Choi

そんな感じでしょんぼりしながら舞台を見ていたのですが、嬉しいことが一つありました。この日のエスパーダは山元耕陽(Koyo Yamamoto)さんで、キャスト表を見て「日本人だ😆」くらいにしか思っていなかったのですが、舞台を見てびっくり!この人は2022年のWorld Ballet Dayで「富士山」シャツを着ためちゃくちゃ上手な人で、誰だろうとずっと注目していた方でした!まさかここで富士山シャツの方の踊りを見れるとは!思いがけず名前が判明してとても嬉しかったです!

さてエスパーダの山本さんの印象ですが「若い!!!!!!」背が高くて踊りは綺麗なのですが、見た目がめっちゃ若くて、個人的には15歳の少年が舘ひろしの色っぽい仕草を真似しているような不思議な感覚を受けました。
ですが面白いのが、私はつい日本人を見ると嬉しくなって顔を見てしまうので顔を見ると若さと仕草のアンバランスさが気になります。ですが踊りを見ると彼の若さは一切気にならず、粘り気があってスペインの乾いた空気の元で情熱的に踊るエスパーダ像がよく伝わってきました。若さについては山元さんは実際に若いのでしゃーないですが、今後歳を重ねていく彼がどんな演技と踊りを見せてくれるのかとても楽しみになりましたし、また山元さんの踊りを見たいと思いました。

オランダ国立バレエ団には山田翔さんや鈴木蒼士さんなど、日本人ダンサーが何名か在籍しているので次はもっとたくさんの日本人ダンサーが活躍する様子も見てみたいなと思いました。

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