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バレエ感想「Lucid Variations」 NDT 2(24/10/2024 World Premier)


2024年10月24日にNDT2の「Lucid Variations」を見に行きました。
NDTの舞台は通常トリプルビルで3本立てのことが多いらしいですが、今回はマルコス・モローの「Folkå」とナダフ・ゼルナーの「An untold story | World premiere」の2本立ての構成でした。どちらも日本ではまず見られない斬新さがあって、とても面白かったです。

Marcos Morau – Folkå

Marcos Morau振付の「Folkå」は初めてコンテンポラリーダンスを見る方も「
面白いな」と思える作品だと感じていて、音楽や振付のテンポがとても良かったです。振付だけでなくSilvia Delagneauデザインの衣装もとても面白く、舞台中でも衣装の果たす役割がかなり大きい作品です。

「Folkå」では、まず最初にダンサー達は真っ暗な中で「千と千尋の神隠し」のカオナシのように黒いケープで顔だけ出した状態で舞台に登場します。しかしそれはケープではなく、なんと衣装の黒いスケバンみたいなロングスカートをケープとして使っており、バッとそれを取り去って全身の衣装が見えるシーンはとても印象的でした。スーフィーのようにグルグル回るシーンではスカートがはためいて面白かったです。

ダンサー達が踊り出した時の印象は「上手い!」で当たり前ですが、本当に上手です。日本だとクラシックバレエとコンテンポラリーダンスは別物という印象が強いですが、今夏NDTの横浜公演を見たときも感じましたが、クラシックもコンテンポラリーもかなりのレベルを持つダンサー達が身体表現の極地を表現しようとしているようで、また振付も彼らの持つ身体能力の高さを引き出そうとしていると感じました。

開演前から喫煙所並みにスモークが焚かれていましたが、照明効果と相まってまるで廃墟のような質感を舞台上で演出していたことも興味深く、この作品における照明効果の重要性を感じました。
照明の位置が上から照らされたり右側から照らされ変わるのですが、ダンサー達はその度に光に救済を求めているかのような、光を求めてもがき進もうとしている様子が印象的で、コロナ禍や困難の中で希望を求めて這いあがろうとしている人類像のように見えました。最後は後ろから星のように照らされる照明が客席にも届き、その中でダンサー達がクルクル周りながら踊る様子はまるでついに希望溢れる世界に辿り着いたかのような興奮と喜びも感じさせてくれました。

Nederlands Dans Theater on Instagram: "Are you ready? NDT 2 is coming your way!⁣ As of tomorrow, the NDT 2 dancers will tour throughout the Netherlands with their programme ‘Lucid Variations’, including ‘Folkå’ by @marcosmoraukoshska. ⁣ ⁣ The tour kicks off in @schouwburgconcertzaaltilburg tomorrow, and afterwards NDT 2 can be seen in @wilminktheater, @ssbutrecht, @internationaaltheateramsterdam, @theateraanhetvrijthof, @theateraandeschie, @spottheater, @parktheater, @theateraandeparade, @schouwburg_amstelveen, @theaterrotterdam, @stadsschouwburghaarlem, @theaterdevestalkmaar and @amaredenhaag. ⁣ ⁣ All info and tickets via link in bio.⁣ PS also view the performance online in Digital Theater on December 27 and 28.⁣ ⁣ Photos: @rahirezvanistudio" 1,810 likes, 5 comments - ndtdance on October 29, 2024: "Are www.instagram.com

Nadav Zelner – An untold story | World premiere

さて、1本目の「Folkå」が客席を熱狂の渦に引きずり混んだとすれば、2本目の「An untold story」は色々な意味で観客を驚かせたというべきかもしれません。
なんというのか斬新というかよく分からんというのか不思議というのか、とにかく言語化するのが非常に難しいぶっ飛んだ内容でした。

緑の空間に、肌色のボディスーツと太ももまである少女時代みたいな白いブーツを履いたダンサー達が登場するのですが、エミール・クストリッツァのような東欧風の民族的な音楽に合わせて虫のような不思議な動きをしていました。途中でメロンソーダみたいな緑の液体を飲んだり、防護服に身を包んで殺虫剤を巻くような人が出てきたり…。うーん、正直よく分からないです!
ただ1本目の「Folkå」が光や希望への渇望を表しているとすれば、2本目の「An untold story」はもっと奇妙で殺虫剤が出てくるあたり何かの撲滅を表現しているのかと考えたり…。

とは言え身体能力が抜群のダンサー達が踊るとどんなに難解な作品でもそれっぽくなるというのか、一つの作品としてきちんと成立するのがNDTの凄いところだなと思いました。おそらく理解に苦しんだ観客は私だけでは無いと思いますが、「新すぎて分からないけど面白い」という理解もあるのかなと思いますし、NDTだからこそ今までにない取り組みを実施できるのかなと思ったり。

奇天烈すぎて振付家が何を表現して何を伝えたいのかは正直よく分かりませんでしたが、この斬新さを舞台で見れるという体験はとても面白かったです。ちなみにアフターパーティで振付のナダフ・ゼルナーさんをお見かけしましたが、ハチャメチャな人だと思いきや、めっちゃ穏やかな優しい男性という感じで、一体どうすればここまで不思議な世界を生み出せるんだ?と考えたり。分からなすぎて逆に面白かったです。

ちなみに衣装は少女時代みたいな白いブーツを履いているのかと思ったら、まさかのゴミ袋!?なんと…😲

NDT1の日本ツアーの感想はこちら


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