なぜ現代のバレエダンサーは「レジェンド」を超えられないのか、バレエファンが考えてみた
まず初めに、これはバレエ大好きな会社員が個人の解釈で好き勝手書いているものです。
バレエのレジェンドと言うと、熊川哲也さん、昔の森下洋子さん、ルドルフ・ヌレエフ、シルヴィ・ギエムなど一世を風靡したダンサーがたくさん思い浮かびます。しかしこの面々は私が子供の頃から人気があり、現役時代からレジェンドとして扱われていたような気がします。
ふと思ったのですが、今現在現役で踊っているダンサーで、レジェンドと呼ばれるようになる人がいるのでしょうか。人気がある有名なダンサーはたくさんいますし、ダンサーのレベルはものすごい勢いで上がっていると思います。しかし、誰を見ても熊川さんやギエムほどのインパクトは無く、公演を見ても数日で忘れてしまうことがほとんどです。
例えば私の父はプリセツカヤが好きで、母はウラーノワとイヴリン・ハートが好きです。「イヴリン・ハートの白鳥の湖は数十年前に見て絶品で、今も覚えている」といつも自慢されます。レジェンドを見た母の自慢を聞くたびに、私も数日で忘れる舞台ではなく、数十年後も記憶に残る舞台を見たいといつも思います。
技術的にも体格的にも非常に有利になっているにもかかわらず、レジェンドを超えるダンサーは現在いないと観客として私は思います。
なぜ現代のダンサーはレジェンド超えられないのでしょうか?今巷に溢れるたくさんのダンサーと、伝説となっているダンサーの違いは一体何なのでしょうか?
演劇性も素晴らしいですが、1つ私が思うのは背負う物の大きさ、そして芸術を極めて生きていくという覚悟ではないかと思います。
例えばヌレエフはロシアから亡命をしています。国を捨てて来ており、後には戻れず、芸術を極めなければ、その地に留まれないと言う覚悟と恐怖があったと思います。それがヌレエフを追い立て、そして彼の芸術を昇華させる1つのきっかけにはなっていると思います。
森下洋子さんは広島出身でもあり、戦後の大変な時期に周りに希望を与えようと使命感を持ち、日本という国を背負って各国で踊られて来たと思います。
熊川哲也さんも20代でロイヤルバレエのプリンシパルと言う最高位を捨て、日本バレエ界の発展を背負い、自分のバレエ団を設立し必死に活動されてきたと思います。
ギエムはパリ・オペラ座で最年少でエトワールになり、その後はロイヤルバレエ団のゲストプリンシパルではありましたが、固定のバレエ団と言う看板を持たない中での活躍は彼女ほどの知名度であっても不安定な要素もあり、その覚悟は凄まじいものだったと思います。
近年の色々な舞台や動画を見ると、最近は当たり前のように失敗するなど、舞台に対する覚悟、一つの舞台を失敗したらお客さんが見にこなくなるという事を真剣に考え覚悟を持って舞台に立つ人が減ったのではと思います。私自身バレエが大好きなので、ダンサー全員応援したいですが、それにしてもちょっとなと思う時もあります。
私は観客として次のレジェンドを待っています。私が私の母がイヴリン・ハートを見て感動し、数十年たってもその素晴らしさを伝えてくれるように、私も数日で忘れる舞台ではなく、数十年経っても覚えていて、自分の子供たちや孫たちに伝えられるようなそんな舞台を見たいです。そんな舞台を見せてくれるレジェンドを私は待っています。
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