バレエ感想⑨パリオペラ座「眠れる森の美女」inシネマ
パリオペラ座シネマフェスティバルの一環で「眠れる森の美女」が上映されると言うので楽しみにしていたのですが、収録はなんと2013年!!!10年前のものです!!
とは言え人の出入りが少ないオペラ座の舞台。ミリアムやマチアスを初め、現在も活躍してるダンサーが沢山出演しています。コールドには現在エトワールのレオノール・ボーラック、八菜さん、セウン、ルナヴァン、ジェルマン、マルシャンなどもいます。さすが10年前の映像だ…。レオノールが宮廷ドレスを着て後ろに立ってる姿なんて2度と見れないだろうなぁと思います。
感想
と言うわけで感想ですが、さすがオペラ座、ダンサーの質だけでなく、セットやお衣装も重厚で素晴らしいです。ヌレエフ版の眠りの森の美女では、リラの精とカラボスは王族のような重厚な宮廷ドレスを着用しており、マイム中心でほぼ踊りません。王族をはじめ、それぞれのキャストの衣装の豪華さ、美しさが光ります。音楽も素晴らしく、10年前の映像なのに音が割れていないところがGood。ダンス以外でも楽しむ要素があって嬉しいです。
ミリアムとマチアス
ダンサーに関してですが、オーロラのミリアム・ウルド=ブラームはとても可愛くてオーロラがよく似合います。16歳のキラキラした、喜びいっぱいのオーロラ姫そのものでした!最近はオーロラだけでなく、ジュリエットやジゼルを演じていても明らかに年齢と合ってないダンサーが多く、今回のミリアムのように見た目の違和感がないのはとても良いと思います。ラインも美しく、ヌレエフの複雑な振り付けを優雅にこなしていました。私は針入りの花を受け取る直前のミリアムの踊りが好きです(0:28-)。竪琴を弾いているかのような腕の動きが本当に優雅。
ただ、若干滑っている部分が多くハラハラしっぱなしでした。以前来日公演で見たミリアムはそれはそれは素晴らしかったので、この日は湿気がすごくて滑りやすかったのかもしれません(ミリアム以外にも滑っているダンサーが複数おり、ずっとハラハラしてました。てか危険すぎる)
2巻くまではずっとハラハラしていたので、3幕でマチアス・エイマンが出てきた時の安心感と言ったらもう・・・。どの動きも正確で、優雅で美しかったです。王子様は早着替えがあったり、動き回って、色々と大変だろうなぁと思いつつも、マチアス王子は抜群の安定感を見せてくれました。
マチアスはサポートも素晴らしく、ところどころミリアムが崩れたところはマチアスが力技でなんとか戻してました。2人の信頼関係があるからこそだと思います。
ヴァランティーヌとフランソワ・アリュ
主役2人だけでなく、青い鳥のパドドゥのヴァランティーヌとアリュは安定感抜群で、アリュに至っては本当に空を飛んでいる鳥のようでした。ヴァランティーヌはよくある繊細でか弱い青い鳥というよりも、大鷲の女王のような力強い青い鳥でした。ちなみにコントロール力抜群のアリュですら若干滑っていたから、この日の舞台コンディションは悲惨だったんだろうなぁと思います。(よく見ると滑ってると言うより、捻挫してる。この床危険すぎないか・・・?)
ほぼ出ずっぱりの妖精さんたち
そして1幕に出てきた妖精さんたちは、2幕ではコールドだったりブライズメイドだったり、3幕でも出演していたりと出ずっぱりでした。現在エトワールのローラ・エケやレオノール・ボーラック、大人気のエロイーズ・ブルドンなど、実力者は10年前から注目されてたんだなあと思います。
3幕の宝石たち
3幕の宝石たちは金・銀・サファイア・ダイヤモンドの4人が出てくることが多いですが、ヌレエフ版ではここで男性キャストも登場します。ヤニック・ビットンクールはヌレエフ版ならではの複雑な振り付けを難なくこなしていて素晴らしかったです。見た目も美しく、まるで王子のよう・・・。しかし本当に見ていて足がもつれそうな複雑な振り付けはすごいです。
ルグリのバレエレッスンのオーバーヌが!
少し話がそれますが、10年以上前にNHKがマニュエル・ルグリの「スーパー・バレエレッスン」と言う番組を放映していたことがあります。初回のジゼルですごい
可愛い新人のダンサー(オーバーヌ・フィルベール)が出ていて、注目していたのですが、なんとそのオーバーヌも1幕の妖精、3幕の白い猫で出演しています。
1幕の妖精はなんとレオノール・ボーラックと一緒に踊ってます。よく見たらAubaneも滑ってる。絶対この床危なすぎです。1幕の妖精役も素敵でしたが、3幕の白い猫は秀逸でした。セクシーでコケティッシュで可愛くて、オーバーヌにとても合っていて素敵でした。
4人の王子たちについて
最後に、4人の王子たちですが、全員背が高くてハンサムで、それはそれは眼福でした。最近は背の低いダンサーが増えてきている印象が強いですが、オペラ座の底力はすごいです。4人の王子というとローズアダージオのサポートで終わってしまうことも多いですが、王子同士がバチバチな芝居があったり、1人の王子がオーロラの手を取ると、周りの王子が羨望の目で眺めたりなど、王子同士の芝居もあり、面白かったです。
個人的には衣装がボリショイのものとそっくりすぎて驚きました。どちらが本家なのかはちょっとわかりませんが。以前、ロシアバレエファンの守るも攻めるもという面白いバレエブログがあって、そこで4人の王子たちを「金のパイナップル王子、赤い郵便屋さん、緑のダチョウ、猟師の王子」と形容していたことがあって、不覚にもそれを思い出して笑ってしまいました。本当に衣装がそっくりで…。
結論
床、危なすぎじゃないですか?
最初、ミリアムが不安定なのかと思ってましたが、オーバーヌやフランソワ・アリュなど他のダンサーも結構滑ってるのを見て、相当床のコンディションが危険だったのかなと思いました。シネマでいらぬ心配をしたくないので、どうか床のコンディションが改善されることを祈ります。
あとはダンサー、舞台セット、衣装、振り付け、全て素晴らしく、夢のような3時間でした!オペラ座シネマフェスティバル、次の作品が本当に楽しみです。
「眠れる森の美女」2013年
オーロラ姫:ミリアム・ウルド=ブラーム
デジレ王子:マチアス・エイマン
フロリナ姫:ヴァランティーヌ・コラサント
青い鳥:フランソワ・アリュ
リラの精:マリ=ソレーヌ・ブレ
カラボス:ステファニー・ロンベール
妖精たちのヴァリエーション:エロイーズ・ブルドン、オーバーヌ・フィルベール、レオノール・ボーラック、ローラ・エケ、シャルリーヌ・ジザンダネ、サブリナ・マレム、エヴ・グランツスタイン
4人の王子:オドリック・ベザール、ヴァンサン・シャイエ、フロリアン・マニュネ、ジュリアン・メザンディ
公爵:クリストフ・デュケンヌ
宝石のヴァリエーション:エロイーズ・ブルドン、ヤニック・ビットンクール、エロイーズ・ブルドン、アメリー・ラモルー、サブリナ・マレム
白い猫:オーバーヌ・フィルベール
長靴を履いた猫:ダニエル・ストークス