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日本の素敵なバレエダンサー④大川航矢さん(牧阿佐美バレヱ団プリンシパル✨)


最終更新:2024年8月31日

舞踊評論家の桜井多佳子さんのインタビューを読んだことがきっかけで、海外で活躍する実力や実績を持つにも関わらず、あえて日本で踊ることを選んでくれた素晴らしいダンサー達を紹介するこのシリーズを書き始めました。

第4回は、私が日本にバレエ団の公演を頻繁に見にいくきっかけとなった大川航矢さんについて、実際に舞台を見た感想を交えてご紹介致します。私はよく「熊川哲也さんを凌ぐレジェンドになるのは誰だろう」と考えるのですが、大川さんは私の中で筆頭候補です。見るたびにパワーアップしている大川さんの踊りは観客を常に圧倒し、心を掴んで離しません。そんな大川さんの魅力を少しでも紹介できればと思います。

祝!プリンシパル昇格!

まず初めに、プリンシパル昇格おめでとうございます🎉🎉🎉
大川航矢さんが2024年6月にようやく牧阿佐美バレヱ団のプリンシパルに昇格しました😆🎉💕✨🥳
大ファンとしては昇格させるの遅すぎだよ、とか、最初からプリンシパル入団だろとか色々思いますが、とにかくやっと昇格して心から嬉しいです!これからも沢山見に行きます!

牧阿佐美バレヱ団HPより💕

大川航矢さんについて

大川航矢さんは2007年にボリショイバレエ学校に留学し、2011年に首席で卒業されました。
当時ボリショイバレエ学校には東京バレエ団元プリンシパルの秋元康臣さんの恩師でもあるイリヤ・クズネツォフ先生という名物教師がいて、クズネツォフ先生のレッスンビデオに学生時代の大川さんや西島勇人さんが映っており、当時から注目されていたことが窺えます。

バレエ学校卒業後はウクライナのオデッサ国立歌劇場、ロシアのタタールスタン国立カザン歌劇場やノヴォシビルスク・オペラ・バレエ劇場でで第1ソリストとして活躍されました。コンクールの受賞歴も華々しく、ペルミ国際バレエコンクール、ソチ国際バレエコンクール、そしてモスクワ国際バレエコンクールで金賞を受賞するという世界でも随一の実力の持ち主です。

ちなみに奥様の寺田翠さんもロシアで大川さんと一緒に活躍され数々のコンクールで受賞される実力者です。最近は子育てがお忙しいみたいでご夫婦で舞台に立たれる機会が少なくなってしまいましたが、彼女の元気な踊りも大好きなので、またお二人で踊っている姿を見たいです💕

大川航矢さん/寺田翠さんを知ったきっかけ

私が大川航矢さんを知ったのは、寺田翠さんと一緒に出演されたモスクワ国際バレエコンクールで金賞を受賞されたことがキッカケです。当時ハマってよく読んでいたブログ「la dolce vita」と「バレエ 守るも攻めるも」で大川さんと寺田さんの受賞が報告されており、そんな凄い日本人ダンサーがいるのかと驚きました。
私はロシア情勢に詳しいわけでは無いのですが、ロシアバレエ界は日本以上にコネ社会と聞いています。大川/寺田ペアがモスクワ国際バレエコンクールに出場した年は、ある大金持ちの息子が出場しており、どうなるかヤキモキしていたファンも多かったらしいですが、さすがの大川さんの実力には敵わなかったみたいです。この辺は守るも攻めるもさんが詳しく書いてますが、そんな裏話もあり大川さんと寺田さんに興味津々となりました。

その年に東京で行われたバレエ・アステラス2017という公演に大川さんと寺田さんが出演されると知り、慌ててチケットを購入して見に行きましたがとにかく圧巻でした。大川さん達は明らかに周りとレベルが違い、まるでゲストダンサーが踊っているかのようで素晴らしかったです。正直にいうとこの年は大川ペア、菅野ペアと高野さん以外が悲惨すぎたということもあり、大川ペアの際立ちっぷりは凄かったです。
ちなみに当時のチケット購入記録を探したらなんとS席6,480円!この値段であの珠玉のダイアナとアクテオンを見ていただなんて、過去の自分が羨ましいです😅

大川さんの踊りの凄さについて

大川さんというと代表作はバジル、アクテオン、パリの炎、タリスマンなど、ダイナミックで技術的に高難度な踊りが思い浮かびます。
やはり彼の代名詞でもあるダイナミックなジャンプは素晴らしく、540や難しい大技を、あたかも歩いているかのように力みなく自然に行ってしまうため、舞台を見るたびに驚きます。ジャンプだけでなく音楽性も素晴らしく、アクセントの付け方というのでしょうか、手だけでなく体を自由自在に使って音楽やリズムを表現する様は、まるで彼自身が一つの楽器であるかのようです。

大川さんは独特の浮遊感と無重力感を持つダンサーで、先日バランシンの「ジュエルズ(ルビー)」ではストラヴィンスキーのピアノの音を軽快に表現する躍動感が素晴らしかったです。リズム感あふれる踊りが素敵だっただけでなく、ジャンプの時は大川さんがそのまま客席に羽を付けて飛んできそうな、ピアノのメロディーをそのまま客席で奏でるんじゃ無いかという錯覚に陥りました。それだけ身体中で音楽や振り付けを表現し、観客を魅了してくれる稀有なダンサーです。

大ファンとして今後期待していること

難しいジャンプが沢山詰め込まれた踊りはもちろん素敵なのですが、私が個人的に印象に残ったのは牧阿佐美バレヱ団「三銃士」でのポルトスです。
ポルトス役の大川さんは髭ぼうぼうで信じられないくらいワイルドになっており、「(猟師の)アクテオンよりワイルドだな」というのが第一印象でした。ですが荒々しい見た目とは真逆で、お母さん感溢れる世話好きなポルトスで、どちらかと言えば普段は大技ジャンプの見せ場が多い大川さんの演劇的な一面を見れたのがとても印象的でした。

大川さんの大技は確かに魅力的です。ですが私はポルトスを楽しそうに演じる大川さんを見て、彼は技術を超えた演劇的な面をもっと表現できるのではないかと感じました。日本だとバレエの知名度はまだまだ低く、どんな役でもバッチリ踊りこなせる大川さんは観客を驚嘆させる「ぶっ飛び要員」というか「大技要員」として重宝されています。
しかし!!!ロシアで長年にわたる教育を受け、実績を積んできた大川さんは、大業だけでなくもっと観客を魅了するような演劇的な要素も持っていると思うのです。大ファンとして、いつか大川さんの演劇的な面も舞台で見れたらいいなと思います。

牧阿佐美バレヱ団は「ノートル・ダム・ド・パリ」の上演をしていますが、大川さんのカジモドなどいかがでしょうか?「アルルの女」のフレデリも似合いそうですよね。素晴らしい技術と迫力によって、看板公演になると思います!ぜひ見たいです!もし大川さんのカジモドやフレデリが見れるなら、いくらでも宣伝します(もちろん見に行きます)!

ロシア時代のインタビューを見ても、よく考えて役作りされた様子が伝わってきます。例えばこちらは「ラ・フィーユ・マル・ガルデ」でアラン役を演じた時のインタビューですが、インタビュアーに「アランのキャラクターに同情しないか」質問された大川さんは「アランを可哀想だとは思いません。彼は大好きなお気に入りの赤い傘を持っており、それはリーズよりも大切なものだからです。」と明るく微笑みながら答えたそうです。
アランは通常誰からも同情される役柄ですが、インタビューを読むと未来への希望や大人の身勝手さを感じさせてくれる犠牲者という見方も出来、このような役作りが出来る大川さんの演劇的な一面をますます見たくなりました。

冴えない金持ちのアラン役はモスクワ国際バレエコンクールで金賞を受賞し、ノヴォシビルスク・バレエ団のソリストである日本人、大川航矢が演じる。大川によるアランは優雅で機敏で純朴であり、決してネガティブなキャラクターではない。明るくて天真爛漫なアランも、リーズのように親に振り回された犠牲者なのだ。

Аншлаг на премьере "Тщетной предосторожности" в НОВАТ

今後の公演情報

牧阿佐美バレヱ団「白鳥の湖」(文京シビックホール)
2024年10月12日(土)14:00開演 → 3幕のパ・ド・カトル
2024年10月13日(日)14:00開演 → 配役不明ですが、何かしらで出演するはず

青森県立美術館版 バレエ「アレコ」(青森県立美術館アレコホール)
11月1日(金)17:00
11月2日(土)13:00、17:00
11月3日(日)13:00、17:00
11月4日(月・振休)13:00
主演アレコ役(全日)

余談(バレエファンの戯言です)

ここからは余談ですが、大川さんのサインはキリル文字で「Окава Я」と書いてあるように見えるのですが、そのまま読むと「大川やぁ!」とまさかの関西弁…。落ち着いたイメージを持っていましたが、意外と押しが強い方なのかもしれませんね😊

にしても、本当に日本は海外帰国組の実力派ダンサー達の待遇が最悪で、大川さんのプリンシパルの任命にしても遅すぎ!!同じくロシアから日本のバレエ団に入団した超実力者の中にはコールドからの採用となった方もいらっしゃいますので、大川さんはファースト・ソリスト採用だったのはラッキーなのかもですが、やっぱり2人とも最初からプリンシパルだろうと思わずにはいられません。長かった…😭
モスクワ国際コンクールの結果を見るとロシアであれば彼ほどの実力があれば、金積んだボンボンよりも踊りの上手さで評価されますが、日本では実力よりも出身教室や内部のコネクション等が無いと厳しいのかと勘ぐりたくなりました(あくまでも私の想像です。実際は知りませんし、バレエファンの妄言です😇)

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