バレエ感想⑤新国立劇場バレエ「コッペリア」2023
Youtubeに流れていたシャプランとポルーニンの若々しさに夢中となり、ダンチェンコ(モスクワ音楽劇場バレエ)のプティ版コッペリアにハマったのは、もう10年近く前。その後、特にプティ自身がコッペリウスを踊っている映像に深い感銘を受けました。
何としてもこのバレエを生で見たいと思っていたら、2017年に新国立バレエが上演することを知り、慌ててチケットを買いに行きました。当時見に行ったのは、小野福岡組で、ルイジ・ボニーノがコッペリウスを演じていました。
ボニーノのコッペリア人形とのワルツは上階まで伝わってくる迫力がすごく、拍手が鳴り止まなかったのを覚えています。
2021年も絶対見に行くべく、発売日にチケットを購入しましたがまさかの中止となってしまい、2023年、やっと生の舞台でコッペリアを見ることが出来ました😭
2/23 小野絢子・福岡雄大・山本隆之
小野絢子さんは上階から見ていても、超キュートで、そんなスワニルダを適当にあしらうフランツ、理解できないw 福岡さんは絶好調で観客もノリノリでした。
この日はチケット完売でキャンセル待ちまで出てたみたいです。改めて、小野福岡組の人気は凄まじく、そしてプティ版コッペリアがこんなに人気になって嬉しいです😍
2/24 米沢唯・井澤駿・山本隆之・直塚美穂
2/24は配信でとても評判の良かった米沢・井澤ペアを絶対に見るべく、チケット販売初日にS席を買いました。実は米沢唯さんを見るのも初めてで、ワクワクしていました。
唯さんの安定感がすごく、フランツに構ってほしい仕草や表情が、恋をして相手の気を引きたい女の子そのものでした。対照的にコッペリウスに関しては呆れている演技も際立っており、まさに女優バレリーナ。井澤さんのフランツはとにかくハンサムで溌剌としており、周りの女の子達がメロメロになるのがよく分かるw カッコ良すぎて絶対私もメロメロになるw このペアはものすごく良かったですし、次もこのペアを買おうと決意しました。
また、大好きな直塚美穂さんがスワニルダの友人として出演されていましたが、くるくる変わる表情がとてもキュートで、ロシア仕込みのテクニックもあり、集団の中で一際人目を引いていました。コーダのアラセゴンが綺麗で、早い動きの中でもきちんとパをこなしていたのが印象的でした。
最後にコッペリウスの山本隆之さんには泣かせられました。コッペリアが動いた時の感動と喜びが痛いほど伝わってきて、最後に現実を思い知らされた時の絶望。その悲しみも痛いほど伝わってきました。ラストは胸がきゅーんと悲しくなります。この回を見に行けて本当に良かったです。
2/25 柴山紗帆・福岡雄大・中島駿野
2/25はライブ時にとっても素敵だった中島駿野さんのコッペリウスを見るべく、再び新国立劇場へ行ってきました。福岡さんは夜も舞台があるにも関わらず、ノリノリでパワーを全て使った最高のフランツでした。直塚美穂さんや友人達がとっても魅力的で、可愛かったです。
中島さんのコッペリウスは上品で洒落ていて、小粋な紳士で素晴らしかったです。フランツの福岡さんより長身で、現役時代のプティを彷彿とさせるスタイル。ライブ時は大役に初抜擢とありましたが、これだけプティをイメージさせるダンサーは確かに他にいないかもです。吉田都さん、見る目ありすぎてすごい。
コッペリウスは一歩間違えると、ただの変態になってしまいますが、中島さんは上品かつプティの紳士な雰囲気もきちんと出しており、作品にスパイスを与えていると感じました。
2/26昼 池田理沙子・奥村康祐・中島駿野
池田理沙子さんと奥村康祐さんは彼らの年齢・雰囲気が役柄にマッチしており、とても可愛かったです。スワニルダが他の女の子に目移りしてるフランツに対してプンッと怒る様子や拗ねる様子がとっても可愛らしかった。奥村さんは浮気者というよりも、周りに愛される地元の兄ちゃんという感じの柔らかい雰囲気でしたが、柔軟性とテクニックが素晴らしく、観客を沸かせていました。
コッペリウスの中島駿野さんは、前日とはまた違ったアプローチで役を作ってきた印象を受けました。前日はプティへの尊敬、オマージュを感じる小粋で上品で紳士なコッペリウス像でしたが、この回では中島さん独自の解釈を役柄に反映している印象を受けました。高学歴のインテリ研究者のような感じで、コッペリアが動いた時は長年の研究と発明の成果が出たことを、純粋に大喜びしている学者のようでした。コッペリアに対する視線も、大事な大事な我が子を見つめる愛情溢れるものでした。(中島さんはとにかく下品にならないのが個人的にいいポイントだと思う)
そんな純粋で愛に溢れる中島コッペリウスに対して、若さゆえに無邪気に全てをぶち壊すという残酷なスワニルダとフランツの対比が鮮明すぎて、この回も最後は悲しみが残りました。
2/25夜 米沢唯・速水渉吾・山本隆之
この回はどうしても米沢さんのスワニルダが見たくて、急遽チケットを手配しました。欲しい席は完売だったので、仕方がなく別の席を買ったところ、なんと公演当日におそらく戻りであろうチケット(買った物よりいい席😭)が出ていてガックリ。
米沢唯さんは相変わらずテクニックが優れ、全ての動きが音楽に合っていて、さすがプリンシパル。今まで見る機会がなかったのが悔やまれます。速水さんは若干ヤンキーっぽい見た目で、フランツのキャラによく合ってるw。ジャンプが尋常じゃなく高く、ジュテやザンレールが綺麗で、新しい時代の息吹を感じました。米沢さんとのコンビという意味では、ちょっとチグハグな部分も感じましたが、このカップルはテクニシャン同士で見応え抜群でした。ジュテが綺麗な男性ダンサーが好きな方は速水さんの舞台がオススメです。
山本隆之さんに対しては全日を通して割れんばかりの拍手。長年新国立劇場のプリンシパルとしてバレエ団を支えてきた山本さんの人気と観客の熱い思いを感じました。
そして友人役の直塚美穂さん、本当に上手。Twitterでも「マイムが自然」「動きが大きい」と直塚さんのバレエに対して大盛り上がりでしたが、改めて周りと比べてみると、演技してる感がゼロで本当に自然で可愛い。投げキッス大会も可愛かったし、最後にコッペリウスが出てくるところなど、「えぇ、どうしたのこの人??ま、いっか😁」という感じで肩をすくめながらニコニコで踊る様子など、本当に可愛かった。1人だけ柔軟性もすごく、他とは違うとんでもない教育を受けてきたんだろうなぁと感じました。
結論:公演数が少なすぎることが残念。
新国立のダンサーにチャンスを与えるという意味でも、ダンサー各自の実力を高めていくという意味でも、もっと公演数を増やし、バラエティに富んだキャストにすべきではないでしょうか? 木下嘉人さん、福田圭吾さん、中家正博さんなど、本来ならフランツやコッペリウスとして活躍できる方が全員衛兵でもったいないし、女性も直塚美穂さんなど、技術も表現もピカイチな方も在籍しています。特にコッペリウスのような役柄は今回山本さん・中島さんの表現が正反対だったように、ダンサーの人生観や役作りが顕著に現れるということもあり、注意深い役作りを必要とするものだと思いますし、ダンサーの成長に大きく繋がると思います。
数々の実力者を脇役として使うという贅沢なダンサーの起用が出来るのは新国立バレエの層の厚さの証明でもありますが、公演数の少なさが結果として沢山の才能あるダンサーを埋もれさせてしまう気がして、残念でなりません。劇場付属という日本随一の強みを持っている新国立劇場バレエ団だからこそ、もっと公演を増やして、その強みを発揮していてって欲しいと、納税者の1人として願うばかりです。
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