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バレエ感想「ラ・バヤデール」新国立劇場バレエ団

(最終更新2024/05/20)


「ラ・バヤデール」を見に行って本当によかったです。ストーリーの展開や、美しい舞台セットや衣装なども含め、見応えたっぷりでした。

衣装、舞台セット、照明について

まず衣装がめちゃくちゃゴージャスで本当に綺麗です。どの衣装も豪華絢爛でダンサー達をさらに美しく見せる衣装はバレエ衣装のお手本のようですし、夏の新作もこの衣装をこのまま使えばいいのにと思いました。

舞台セットも素敵で、1幕は鬱蒼と生い茂った森林のようなオブジェがカーテンのように開く形で始まります。寺院はインドというよりも正直カンボジアのクメール遺跡のような雰囲気ではありましたが、重厚さを感じました。寺院から王侯の家への場面転換は見事で、そして王侯の家がインディアナ・ジョーンズのマハラジャの宮廷のようなセットでした。個人的には4幕の舞台セットが秀逸で、思わず声が出てしまいました。
舞台セットを転換する際に、例えば森林のような照明を付けて観客が現実に戻らないように工夫したり、場面によって照明の色合いが微妙に変えられていてとても面白かったです。

4/27公演で印象に残ったダンサー達について

中田実里さんと木村優子さん

中田実里さんは以前インタビューを読んだ時から、論理的に物事を考え発言される、すごく頭のいい方だなと感じていました。調べたら筑波大学の物理出身で、頭がいいだなんて言葉で表せるレベルじゃなかったです😂
中田さんはどのインタビューを読んでも論点がはっきりしていて分かりやすい説明をされる方で、こういう方が芸術監督になったら日本バレエ界も色々と変わっていく気がしました。新国の生え抜きですし、論理的に上層部やスポンサーに説明して予算バッチリ確保しそうですし、とても良いアイデアだと思うのですが😊

さて、今回なぜ中田さんと木村優子さんが印象に残ったかと言うと、影の王国での2人の表情が真逆だったからです。
中田さんは微笑みながら踊っており、木村さんは悲しそうな表情をしていたように見えました。バレエブランのコールドは動きだけでなく、表情も揃えることが普通だと思っていたので、隣同士の2人が真逆の表情だったことが印象に残りました。

ただし、これはどちらが正しいと言うよりも中田さんがインタビューで仰っているように「ストーリー上では幻想の場面」なので、ジゼルのように表情の指定はないのかもしれません。中田さんや木村さんが影の場をどう解釈して踊られているのか、非常に興味を持ちました。

佐野和輝さん

佐野和輝さんは初日は苦行僧と、結婚式の場での警備兵として出演されていました。ちなみに苦行僧はヒゲと長髪とメイクのせいで誰が誰だか分からず、そんな中でなぜ佐野さんが印象に残ったかというと警備兵としての振る舞いがとても印象的だったからです。
結論から言うと警備兵はずっと立っています。2幕が進む中、ずっと槍を持って立っていなければなりません。1幕で疲れているだけでなく、舞台は照明も強くて暑いからなのか、何名かいた警備兵の中には顔を動かしていたり、目がキョロキョロしていたり、落ち着きのないメンバーは悪目立ちしていました。そんな中で佐野さんはずっと険しい顔で前方を睨み続けており、さすがの安定感だと思いました。インドの空間にもよく馴染んでおり、浮いていなくてきちんと物語に溶け込んでいたのが印象的でした。
(佐野さんを見たい方はL側の座席に座ることをお勧めします😊)

清水裕三郎さん

トロラグヴァというソロルの友人を演じた清水裕三郎さんは、最初に兵士たちと一緒に出てくるのですが、キリッとしていて精悍で、一瞬この人がソロルかと思ってしまいました。動きに無駄がなく、まさにドキュメンタリーで以前見た米軍兵士のような眼光鋭い雰囲気もあり、誰よりも戦士然としていました。

裕三郎さんが凄いなと思った理由の1つは、物語の舞台であるインドの空間にかなり馴染んでいて全く浮いていなかったことです。
どの出演者を見てもバレエは全員とても綺麗なのですが、初日ということもあり舞台全体から若干の硬さを感じており、東アジア人がインド人のコスプレをしているようにしか見えず、全員イマイチ物語の空間(インド)に馴染めていないなという違和感を覚えていました。ただ、裕三郎さんだけは物語の空気に馴染んでおり、変なコスプレ感もなく、役柄を演じ切っていたのがとても印象的でした。
以前インドがテーマのパーティに参加したことがありますが、インドの服を着ても場に馴染めない人もいれば、スーツなのに馴染みまくっている人もいて、その差は歴然としていました。結局その空間に馴染めるかって顔立ちや服装は関係なく、立ち振る舞いや周りとの接し方など、本人の努力に左右されるんだなと感じていたことを裕三郎さんを見て思い出しました。

今回バヤデールということもあり、新国は新国なりに演技指導に力を入れたのだと思います。しかし「みんなきっと指導された通りに演技してるんだろうな」としか感じず、そのためか裕三郎さんのナチュラルな演技が余計印象に残りました。
ちなみに裕三郎ファンにこの話を伝えたところ「彼はイギリスにずっといたはず。インドはイギリスの植民地だったからきっと何か通ずる文化があるのではないか?」という無茶苦茶な会話に進展してしまいました。そんなことあるんかいな😂

2つ目は裕三郎さんの演技からは、トロラグヴァというキャラクターが何を考えているのか、どういうことをソロルに伝えようとしているのか、彼がどういう人なのか、動きからセリフやその背景が伝わってきたことです。先日マシュー・ボーンの舞台を見て思ったのですが、ダンサーが役柄についてどう捉え、解釈するかって意外と観客に伝わってくるものです。
トロラグヴァについては資料がなく、裕三郎さんの解釈も知らないためあくまでも私の推測ですが、ただの友達というよりは政治的配慮も出来るキャラクターなのではないでしょうか。2幕の結婚式には王侯に気を使う執事のような振る舞いをしており、ソロルに対しては心配しつつも彼なりにソロルの出世を応援しているような印象を受けました。
例えば、ニキヤとガムザッティの間で揺れるソロルに対しては「間違いを犯すなよ。出世に響くぞ」というセリフが聞こえてきそうでしたし、最後にソロルが逃げ出そうとした時は「正気になれ!」と言うような感じで、戦地から足抜けしようとした部下を必死に宥めているような様子も感じました。

初日は別キャスト目当てに見にいったので、まさか裕三郎さんに釘付けとなるとは、自分でも驚きました。そのくらい空間への馴染みっぷりが印象的でした。
以前こちらにも書きましたが、ジリアン・レヴィーやトマス・ホワイトヘッドのように、目で訴えると言うのか、裕三郎さんの独特の目の使い方は英国流の演技方法なのかもしれないです。

別件ですが、先ほど発表されてから大泣きしていますが、清水裕三郎さんは今シーズンで新国立劇場バレエ団を退団されるそうです。。1幕終わった時点で何も知らない私はこんな投稿をしていましたが、終演後にまさかの退団発表。あの精悍なトロラグヴァを見る機会はあと3回しかありません。ああああああああああ😭

どうか演技指導担当で新国に残り、演技面をレベルアップしていって欲しいものです。(ついでにファッションコーディネーターもぜひ😍)

https://www.instagram.com/p/C6QlijAvVvY/

4/28の公演について

初日と同じく、ほとんどの出演者が「東アジア人によるインドコスプレ」にしか見えず、彼らの存在と物語の世界観が全くマッチしていないと感じました。そんな中、登場の瞬間からスッと物語に入って空間に馴染んでいる清水裕三郎さんは、やはりただ者ではないと思いました。
トロラグヴァはあまり踊る役ではなく、おそらく彼も最初に槍を持って出てくるので軍人なのかと思います。正直、ソロルだけでなく軍人役は何名かいるのですが、裕三郎さんは全くヘニャっとしておらず、変にダレることもなく、ずっと精悍な表情で誰よりも軍人らしかったのが印象的でした。無駄な動きは一切なく、歩調も軍隊らしく一定で重々しく、昔ドキュメンタリーで見た米軍キャプテンのような貫禄がありました。演技している感も一切なく、全てが自然で、あたかも最初から物語に存在していたかのようでした。これは久々に凄いダンサーを見たなと思いました。

また昨日も書きましたが、佐野和輝さんも存在感が凄かったです。2幕の槍を持って立っている警備兵?役では、若い子が頑張ってる感、衣装に負けている感が拭えないメンバーもいました。佐野さんはずっと険しい顔で前方を睨みつけており、衣装もコスプレ感が無く、物語の空間に彼の存在がマッチしていたことが印象的でした。

3幕の影のシーンではとても綺麗な足のラインの持ち主がいると思ったら、大木満里奈さん!とても綺麗で印象的でしたし、彼女のように手足が長くて綺麗なスタイルを持つダンサーにはぜひニキヤ役を踊って欲しいと思いました。

ところで東真帆さんはどうなったのでしょうか?公式インスタのリールに映り込んでいたような気がしましたが、「ラ・バヤデール」には出演されないのでしょうか?東さんもニキヤ役合いそう。手足も長くて踊りも綺麗で絶対いいと思うんですが。彼女のような実力者にこそ、主役、そしてそれ以外でもぜひたくさん踊って欲しいです。これからがとても楽しみです。

5/3の公演について

返金してほしい。

5/4マチネ公演について

神回。5/3と5/4のチケット料金が同じだなんて許せない(褒めてる)
米沢唯さんとても良かった。渡邊峻郁さんは戦士ソロルというよりもデジレ王子にしか見えなかったけれど、華があって素敵だった。2人の恋する様子は良く分からなかったけれど、米沢さんは踊りで魅せてくれた。この日は全員で舞台を作り上げている印象が強く、米沢さんと渡邊さんの舞台を引っ張る力が凄いと思った。

あと軍人役の清水裕三郎さんと森本晃介さんはキリッとしていて軍人らしさが良く出ていたけれど、圧巻だったのは趙載範さん。なんとも言えない警戒体制というのか、結婚式という場にいつつも絶対にアクシデントがあれば対応するぞ、という感じのピンと張り詰めた空気があり、本物の軍人みたいだった。

2幕の警備兵には上手の手前から4人目に佐野和輝さん!相変わらず表情ひとつ変えず、一切動いたりキョロキョロせず、ずっと前方に睨みを利かせて物語に溶け込んでいるのは凄いと思う。あと上手から3人目はまさかの西一義さんがいてビックリ!佐野さんも西さんももっと踊って欲しい。次はこの2人でパダクションとかいかがでしょうか😊

5/4ソワレ公演について

トロラグヴァ見納め。重厚感があって目の使い方が印象的だった。
苦行僧達の中で、福田圭吾さんのすぐ後ろで踊ってる2人のうち下手側で踊っていた方がとても力強い動きで印象的だった。髭モジャメイクのせいで未だに誰が誰だか分からない🤔

小野絢子さんは相変わらず爆美女すぎて、絢子さんが踊る時は周りがみんなオペラグラス覗いてた。美しい。何やっても美しい。こんな美女に生まれたら人生どれだけ華やかになるだろうかと思った。

福岡雄大さんはドンキのときも感じたけれど、物を食べる演技がとても上手だと思った。ソロルの演技は人によって違うけれど、福岡ソロルはニキヤへの愛が強めなソロルだった。ちなみに渡邊ソロルはあっさりガムザッティに落ちていた。

5/5千秋楽について

速水渉悟さんが凄いと思った。日本のバレエダンサーって上階から見ると広いステージに対してチマチマっと小さく踊っているように見える人が結構多いけど、速水さんが踊るとステージが小さく見えた。というより、動きをセーブしてる感があったからきっと彼にはステージが狭すぎたんだろうなと思う。

マグダヴェヤは最近色々な役が付き始めている菊岡優舞さん。よく跳ぶ若々しいダンサーという印象。
苦行僧(ファキール)達の踊りで、とても目を引くダンサーがいた。ジャンプが軽やかで、ポジションの一瞬一瞬がとても美しかった。激しい動きなのに伸びやかで綺麗で釘付けになった。 誰だろうと思って一生懸命見てたけど、隣の西川慶さん?は分かったけど、髭モジャ過ぎてやっぱり誰が誰だか分からなかった。
5/4ソワレで印象的だった人と同じかも。山田悠貴さんとか樋口響さんとかな気がする。

本日も趙載範さんの軍人が存在感抜群だった。表情が読めなそうで、無駄な動きが一切ない感じがすごいと思う。 他にも清水裕三郎さんの動きは英国士官学校を出たかのようなトラディショナルな雰囲気があるし、森本晃介さんはキリッとしてて新兵って感じでみんな軍人ぽいけど、趙載範さんはその中でも一番敵に回したらヤバそうな空気だった。ガチの空気が漂っていた。

あとやっぱり2幕で佐野和輝さんと西一義さんを立たせているだけって本当にもったいない。2人とも上手だし、にこやかだし、もっと踊って欲しい。バヤデールは男性の出番少なすぎ。新国はもっと踊る役を作るべき!

最後に、全回通して「綺麗な人がいるなぁ」と思ったら大体、大木満里奈さんか内田美郷さん。手足が長くてめっちゃ目立ってて、本当に綺麗だった。

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