レーザダイオード DL-7147-211Fを発振させてみた
レーザの危険性
本稿に登場するレーザダイオード DL-7147-211Fは、JIS C 6802「レーザ製品の安全基準」のクラス3Bに分類されます(推定)。クラス3Bのレーザは、「直接ビーム内を観察すると危険である。拡散反射の観察は通常安全である」とされていますが、直視しなければよいという意味ではありません。たとえば、意図しない反射でレーザ光が目に入り、失明を含む重大な障害を負う可能性があります。反射面がたまたま凸レンズ的な役割を果たし、一瞬で失明するかもしれません。また、同様の理由で、火傷や火災を引き起こす可能性もあります。本稿の行為を模倣してけがをしたり障害を負ったり、火災等を引き起こしても、筆者は一切責任を負いません。
はじめに
なにかつくりたいがネタがない。そこで、息抜きにレーザダイオードを光らせてみることにした。レーザダイオードならなんでもよかった。いまは発振している。
DL-7147-211F
とにかくレーザダイオードを光らせたい。そんなことを考えてAmazon.co.jpを眺めていたら、海渡電子が取り扱っているDL-7147-211Fというレーザダイオードが目に留まった。無難な赤色で、光出力が大きそうだ。よし、これを光らせてみよう。気が付くと郵便受けにDL-7147-211Fが入っていた。
さて、購入したはよいものの、データシートがない。商品ページには、品番:DL-7147-211F、光出力:≦100mW、発振波長:650-655nm、ピン結線:プラス単一電源とあるが、動作に必要な情報はひとつもない。しきい値電流も動作電流も動作電圧もわからない。Googleで検索してもなにも出てこない。
しかたがないので、型番が近いDL-7147-201のデータシートを参考にすることにした。発振波長や光出力が近いので、見当違いということはないだろう。たぶん。DL-7147-201の特性は以下のとおり。
しきい値電流:40mA(Typ.)、50mA(最大)
動作電流(光出力50mW):90mA(Typ.)、120mA(最大)
動作電圧(光出力50mA):2.5V(Typ.)、3.0V(最大)
DL-7147-211Fも同じような特性だとすれば、50mAから60mAくらいの電流を流せば発振するはずだ。一般に、レーザダイオードは定電流で使うので、60mA程度の定電流源につなげばよいということになる。
定電流回路
というわけで、定電流回路を準備しなければならない。そこで、下記の記事を参考に、NPNトランジスタ 2SC1815GRを2個使った定電流回路をつくることにした。これなら手持ちの電子部品をブレッドボードに挿すだけですむ。
電圧値や電流値は、2SC1815GRのベースエミッタ間電圧 VBEを0.65V、直流電流増幅率 hFEを240として計算した。設計上はDL-7147-201に64.7mAの電流が流れるはずだ。
この回路図をもとに、ブレッドボードに組んだ電流回路が下の写真だ。+5Vはmicro USBで供給している。
通電と発振
DL-7147-201のデータシートのピン配置を参考にして定電流回路にDL-7147-211Fを接続する。1番ピンがアノード、2番ピンがカソードだ。
レーザ光の射出方向が私のほうを向いていないことを確認し、USB電源のスイッチを入れる。
キェェェェェェアァァァァァァヒィカッタァァァァァァァ!!!(ネタが古い)
楕円形のビームパターンが見えるので、たぶん発振していると思われる。本当は、電流を徐々に上げて、発光出力や発光スペクトルの変化を見なければならないのだが、そんな装置は持ち合わせていない。
ビームパターンの楕円形の縦横比は1:2くらいだろうか。DL-7147-201のビーム拡がり角(Beam Divergence)が、垂直16°、水平9°(いずれもTyp.値)なので、だいたいそのくらいになっていると思われる。
部屋の照明を消すと、デジタルカメラの自動露出のおかげですごそうに見える。光出力は部屋の照明がついているときと同じなのだが。
ついでに、電流と電圧を測定してみる。電流は60.7mAで、設計値よりも小さい。TR2のhFEが設計値の0.65より小さいのだろう。それでも、しきい値電流の40mA(Typ.)は上回っているので、発振はしていると思われる。
電圧は2.13Vしかない。しきい値電流をわずかに上回る電流しか流れていないのかもしれない。それでこの明るさなのだから、90mAも流したら大変なことになりそうだ。それに、2SC1815GRが連続通電に耐えられそうにない。
ちなみに、デジタルマルチメータは校正をしていないので、電流値、電圧値ともに正確ではないことはご承知おきいただきたい。
おわりに
このような簡単な回路でレーザダイオードを発振させられることがわかった。せっかくなのでこれを応用してなにかつくってみたいのだが、冒頭で述べたように危険極まりない代物なので扱いに困る。さてどうしたもんだか。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。