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音の高さは気持ちを表して、浮かんだり沈んだり

本題に入る前に少し余談を…

先日、ある会場で学生時代に作曲や楽曲分析などの授業でお世話になった先生にお会いできました。

卒業後、数ヶ月ほど和声理論のレッスンに通わせて頂き、その後も自宅で解いた和声課題を何回か郵送で添削して頂いたりしたものの、私の根気不足で続けることができませんでした。

そんな情けない私にも、先生は、毎年西暦と干支を見事に一体化させた手書きのイラストに温かいひと言を添えた年賀状をくださいます。宝物です。

年に一度お会いできるかどうかですが、その際にはいつも変わらぬ微笑みで、私も一気に学生気分になって心がほぐれます。

話を本題に戻しますが、このお仕事では毎年たくさんの楽譜を見ますので、そんな理論や分析に弱い私にも色々なことが見えてきます。

以前に中森明菜さんの『セカンド・ラブ』でも音の上下で気持ちを表している、という記事を書きました。

最近特にそれを感じた曲がありました。
昭和49年山本コウタローとウィークエンドがヒットさせた『岬めぐり』です。

カントリー調の軽快な曲ですが、好きな人と一緒に行くと約束した岬へ、別れた後にひとり旅する切ない歌詞です。
1番の歌詞を見てみます。

あなたがいつか話してくれた
岬を僕はたずねて来た
二人で行くと約束したが
今ではそれもかなわないこと
岬めぐりのバスは走る
窓に広がる青い海よ
悲しみ深く胸に沈めたら
この旅終えて街に帰ろう

野ばら社『日本の歌』

さらりと軽快に歌っているので重くはなりませんが、「窓に広がる青い海よ」で音の高さがクライマックスを迎えた後、「悲しみ深く胸に沈めたら」で急激に「悲しみ」「深く」「胸に」の3段階にわけてどんどん低く沈んで行きます。

高いミの音から下の低いレまでおります

広く青い海の景色と自分の悲しみとの落差が凄いです。
短いフレーズの中でもそれを音の高さで表現しています。
ゆっくり歌ってみるとよくわかります。

ただ、主人公「ぼく」は、もう気持ちに区切りがつきはじめているのか、沈んでいった「胸に」の所の音は、例えばミレシと下がり切るのではなく、ミレミと1音上がって、次の「沈めたら」ではもう浮上して、「この旅終えて〜」に繋げています。
なるほど、気持ちに区切りをつけるために旅に出たから、曲調は明るく、かつ軽快なカントリー調なのかなと思えて来ました。

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