見出し画像

誤差だって楽しもう

止まった時計でも1日に1度だけ正確な時刻を指し示す、という名言を聞いたことがあるでしょうか。
中学生くらいの頃に感動し以来ずっと覚えていて、今では腕時計も、この後に書く壁時計も止めたままにしています。

冒頭の画像は普段私がつけている腕時計で、約3年間9時44分57秒で止まり続けています。
いつも会話がすぐ途切れてしまうので話題要員としても便利です。



この止まった時刻の瞬間だけは、地球で一番正確な原子時計よりも正確な時刻を示しています。
止まっている限り、交わる一瞬ではぴったりと正確な時間を示すことができるためです。ロマンありませんか?

原子時計は3000万年経つと1秒の誤差が生じてしまうそうですが、止まってしまえば3000億年先だって正確な時間はそこにあります。
するといっそう動かすわけにはいきません。時刻はスマホで確認してください。


さて、今回はまだ壁時計が動いていた頃の話を書こうと思います。
今では完全に止まってしまったけれど、それまで毎回9のところまで来ると針の動きが鈍くなり、数秒のロスが発生する特殊な状況にありました。
そういった誤差が積み重なると当然、日ごとの誤差具合が徐々に広がっていってしまいます

実際に何秒のロスがあるのか気になり何度か計ってみた結果、平均4秒遅れているようでした。
すると、1時間では240秒つまり4分の遅れが生じることになり、同じようにして1日で生じる遅れは1時間36分、およそ1時間半。
(この時計は12時間時計なので、8日経つと誤差がリセットされることに注意)


誤差をどの程度の範囲まで許すかは人それぞれですが、その誤差ごとにも

①およそ正確な日 … 許せる誤差以内、正確日も含む
②およそアテにならない日 … 許せる誤差以外、つまり、許せない誤差


という時間帯があることにここで気づきます。
そしてこの時間帯は交互に入れ替わり続ける。←ここが重要

日ごとにこの二つの時間帯が入れ替わっていく様子が味わい深いです。
主におよそ正確な日が楽しい。

なぜなら、狂ってるはずの時計がまあまあ正確な時計でいられる短いひとときって素敵だと思うからだ。

①、②は少し言葉があいまいなので補足の説明図を載せます。


とりあえず誤差が1時間以内のときおよそ正確ということにしておきましょう。

縦軸の単位が 時 になっていますが、これはあくまで誤差の単位。
目盛りが6時間までしかないのは、12時間時計の場合の誤差は6時間までしかないためです。
(8時間遅れ=4時間早いと言い換えられるので、6時間までしか誤差は考えなくてよくなりますね)

横軸はそのまま、日にちの単位です。

今、誤差1時間以内なら許してもいいという事なので、
三角形が1のラインより下側の場合を考えればそれがおよそ正確な日ということになります。
ということで青いラインの部分がおよそ正確な日で、それ以外の赤いラインの部分がおよそアテにならない日です。

誤差が1時間以内で済むおよそ正確な日は、15時間で1時間誤差が出ることを考えると
1周期の8日間の中で30時間=1.25日だけ存在する。

つまり、残りの6.75日間はアテにならない日なので、たった15%程度しかおよそ正確な日はありません
でもこのくらい短い方が楽しみ甲斐があるんですね。

なぜなら、今回は1日に1時間半も誤差が出てくれたのでまだ良かったのですが、これがもし1日に5秒しか誤差が出ない時計だったら
1周期が20年以上にもなってしまうので、日常感覚で楽しめなくなる
からです。


狂った時計がまあまあ正確になるユニークな日を8日という短い周期で日常的に楽しめるってすごいことだと思いませんか。

これを読んでくれたみなさん、手元の時計が鈍くなったり止まってしまっても、騙されたと思って電池交換を見送ってみてください。

いいなと思ったら応援しよう!